先生との関係や家族愛……姉妹を支える人たち

——ソリストをめざす姉妹はテクニック重視で厳しいレナート先生と、生徒の個性を大切にする穏やかなフィッシャー先生の教えで才能を磨いていきます。彼らについてご感想は?

メラニー 芸術家を育てる学校ですので、あの2種類の教師は両方必要だと思うし、今の音楽学校の現実を映し出している気がします。実は私もカミーユも同じ演劇学校に通っていたのですが、最初はフィッシャー先生のような寛容な先生、2年目はレナート先生のような厳しい先生でした。私自身は厳しい先生のほうがやる気がでるんです。ただレナート先生のように生徒同士をライバル関係にする指導法は苦手ですね。

カミーユ 私もさまざまな分野で2種類の先生は必要だと思います。ただ、レナート先生の教え方は若い生徒たちの弱い部分に付け込むようなところがあるので、そこは嫌だなと思います。

レナート先生のレッスン
© 2024 / JERICO - ONE WORLD FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 3 CINEMA

——劇中で演奏した数々のピアノ曲の中で、とくに心に残った曲は?

メラニー クラシックの名曲としてはベートーヴェンのピアノ・ソナタ《テンペスト》《月光》。2曲とも練習がかなり大変でしたので、印象に残っています(笑)。今回、音楽と作曲担当で『VESPER ヴェスパー』のアーティストのダン・レヴィさんが参加してくださったんです。すごく心強かったですし、彼がプレネ姉妹のために作曲した曲を弾いたことは素晴らしい体験です。

カミーユ 私もダン・レヴィさんの「コンチェルタンテ第3番」はこの映画のメインテーマで、心に残っています。

ダン・レヴィ:コンチェルタンテ第3番

——映画の中で、おふたりのお気に入りのシーンは?

カミーユ 好きなシーンはたくさんありますが、涙が溢れるようなエモーショナルな場面が多いなか、姉妹が部屋の窓からトロフィーや楽譜を投げ捨てる場面が心に残りました(笑)。すごくユニークな場面で、撮影の緊張をほぐしてくれました。

——親から「ピアノで一番になれ」と幼い頃から言われ続けた姉妹が、猛烈に反発する場面ですね。本作は主人公だけではなく、芸術家を支える家族の葛藤や成長についても感動的に描かれます。メラニーさんは?

メラニー 私も撮影中に楽しかった場面は、家族4人でテーブルを囲んで話すシーン。親子でモーツァルトの譜面を眺めたりして、家族の絆を感じる穏やかで美しいシーンだと思います。

病気の宣告によってピアノをあきらめざるをえない状況になった姉妹は、部屋からトロフィーや楽譜を外に投げ出す。呆然とする両親
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——家族の協力のもと、難病で夢を奪われた姉妹はお互いに助け合い、自分たちだけのピアノ曲を作ることに挑みます。作品の完成後、お二人はモデルになったプレネ姉妹と会われたそうですね。

メラニー カミーユのモデルになったダイアンさんはプレミア上映会にお母さんと来てくださり、この映画にとても感動したと伝えてくれました。彼女はパリでの上映会や、姉妹が生まれ育った地域での舞台挨拶にも来てくださったんです。

カミーユ ダイアンさんは17、18歳のときに病気を宣告されて、そのとき医師から「ピアノを再び弾けるようになる確率は1%」と宣告されたとおっしゃっていました。そんな最悪の状況にもかかわらず、彼女たちは演奏を続けて実際にプロのピアニストになった。もし今、落ち込んでいる人たちがいたら、この映画で希望を与えられると思いますし、解決方法を提示できるのではと感じています。