時代を超えても褪せない名曲を現代のドラマに

ユニークなキャラクターたちが繰り出す物語をテンポ良く彩るのは、言うまでもないクラシック音楽の作品たちだ。「あ、これ聴いたことある」と思わせるような数々の名曲が、物語の温度感に違和感なく合う形でアレンジされている。

例えば、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第3楽章。軽やかな独奏のパッセージが乗ったメンデルスゾーンならではの気品ある音楽が、フルートとハープ、そしてヴァイオリンのピツィカートの音色でかわいらしくアレンジされている。主にドラマの冒頭に流れることが多く、明るいキャラクターたちの日常を表すのにぴったりだ。

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲より第3楽章

また、ピアノ経験者にはおなじみの「ハノン」も登場。正式名称で言うところの《60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト》第1番が、今までにないアレンジで流れる。本来は指の訓練のために書かれているため、旋律やハーモニーに音楽的な要素の少ない練習曲なのだが、パーカッションの軽快なサウンドが加わることで、リズミカルかつポップな音楽になっている。

ハノン:《60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト》第1番

物語のクライマックスや感傷的なシーンが訪れたときには、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番第2楽章。原曲では、そっと寄り添うオーケストラに乗せて、この上なく甘美に歌われるヴァイオリン独奏が印象的だ。編曲版では、その魅力を損なうことなく、ヴァイオリンとピアノ伴奏の編成でアレンジされ、登場人物の心の繊細な動きに寄り添っている。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番より第2楽章

そして物語の中には、いわゆる「ライバル」も登場する。西さいたま市長・常葉修介(生瀬勝久)と敵対する市議会議員、本宮雄一(津田健次郎)。常葉市長が玉響の立て直しに奮闘していることから、楽団活動を阻害してくる存在だ。

彼が登場するとき、ラフマニノフ作品が多く流れる。《幻想的小品集》より第2曲〈前奏曲〉、通称「鐘」と呼ばれるピアノ作品と、彼の作品の中でも特に有名なピアノ協奏曲第2番第1楽章だ。ラフマニノフ作品ならではの切迫感や憂い、重厚感ある作風が、アップテンポなドラマに緊張感を漂わせ、メリハリを作っている。

ラフマニノフ《幻想的小品集》より第2曲〈前奏曲〉、ピアノ協奏曲第2番より第1楽章

ほかにも、ジャズ風の《エリーゼのために》や、ギターとピアノによるメロウなパッヘルベル《カノン》、緊迫感の褪せないムソルグスキー《バーバ・ヤガーの小屋》パガニーニの《24の奇想曲》第24番など、矢継ぎ早にクラシック音楽のアレンジが登場する。