記事
2023.01.23
2023年3月5日『ブレードランナーLIVEファイナル・カット版』が待望の上演!

ブレードランナーLIVEでヴァンゲリスの「感情のボタンを押してくれる」音楽を堪能

ステージの上方に大スクリーンを設置して映画を全編上映、それに合わせてステージ上で音楽を生演奏する「シネマ・コンサート」に、1982年公開以来、伝説的な名作として人気を誇るリドリー・スコット監督『ブレードランナー』が登場! ヴァンゲリスが生み出したシンセサイザー・サウンドも、その伝説に一役買っています。よしひろまさみちさんが、そんな『ブレラン』と音楽の魅力を解説してくれました。

よしひろまさみち
よしひろまさみち 映画ライター・編集者

音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

映画ファンのみならず、現代音楽やポストクラシックのファンにも待望の『ブレードランナーLIVEファイナル・カット版』。巨匠リドリー・スコット監督の出世作であり、SF映画の傑作と呼ばれる『ブレードランナー』。その公開25周年(2007年)を記念して監督自身によって編集されたファイナル・カット版にあわせ、ヴァンゲリスのスコア生演奏を聴けるという貴重なチャンス。

世界初演となったロンドンで体験した前島秀国氏のレポートを読んでいただければわかることだが、オープニングからエンドロールまで、他のどんな上映バージョンにもまさる興奮を味わうことになる。

失敗かと思われた作品の伝説化に一役買ったヴァンゲリスの音楽

続きを読む

そもそも『ブレードランナー』は、1982年の公開直後は、興行的に「失敗」とみなされた作品。なにせ『E.T.』と同時期の公開に加え、SFといえば『スター・ウォーズ』シリーズに代表されるドンパチアクションが期待されていただけに、抽象的かつ退廃的な本作は大衆受けが悪かったのだ。

『ブレードランナー』より
Blade Runner: The Final Cut © 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

だがしかし、これが一番館と呼ばれた封切り館から二番館、三番館(名画座)に上映規模を落としていくたびに、映画ファンのリピート鑑賞が目立つように。また、公開から数年後に訪れたレンタルビデオ黎明期に驚異的セールスを記録。何度も観ることで、より一層深みにはまる、今で言う「沼」落ちした映画ファンを続出させ、本作がSF映画の金字塔となったのだ。

その一方で、この作品を伝説化させたのはヴァンゲリスのスコアにもある。公開当時から評価の高かったスコアだが、サントラの商標クレジットがエンドロールにあったにも関わらず、ヴァンゲリス自身の意向によりサントラが発売されなかったのだ。

それがどれほどファンの喉を乾かせていたかというのは、当時の現象を思い出すと理解できる。本作のための書き下ろしではなかった「メモリーズ・オブ・グリーン」収録のアルバム『流氷原』や、

82年リリースのカバーアルバムがバカ売れしてしまったばかりか、それらがあらゆるところでBGMとして使われたほどだったのだ。

おまけにそれまで彼のオリジナルアルバムはあったものの、サントラは彼の名を世界に知らしめた作品でもある『炎のランナー』だけ。

『ブレードランナー』とヴァンゲリスを愛する映画ファンが、どれだけこの作品のサントラを欲していたか、これでわかっていただけるだろう。

公式サウンド・トラックは(再構成されたものではあるが)公開の12年後、1994年に発売された。

音楽こそ映画に入る最後のセリフ

そんなヴァンゲリスは、キャリアに関してあまり語っていない。その貴重な資料となるのは、『SONG TO SOUL One piece of the eternity – 永遠の一曲』の#69「炎のランナー/ヴァンゲリス」(BS-TBS放映)と、2013年のドキュメンタリー映画『ヴァンゲリス、そしてイタキへの旅』。この中で共通して語られているのは、彼自身が自分語りすることを極端に嫌っていたこと。それゆえに彼自身の肉声よりも、周辺人物の証言が主な構成となっている。

おもしろいのは『〜イタキへの旅』で、『ブレードランナー』と『1492 コロンブス』でヴァンゲリスとタッグを組んだリドリー・スコット監督が彼との制作現場について語っているくだりだ。監督とヴァンゲリスが『1492 コロンブス』の音楽をどうするか、ヴァンゲリスのスタジオで打ち合わせをしている最中、ヴァンゲリスはテレビに映し出された本編映像を観ながらサラッと音をつけてしまう。「これからどうしていくかだね」というヴァンゲリスに、「もうこれでできてるよ!」という監督。ヴァンゲリスが楽譜をおこさず、直感的に即興するアーティストなのは有名な話だが、ここまでの天才とは……と思わざるをえない貴重な瞬間だ。

映画『1492 コロンブス』のトレイラー

また、スコット監督は『ブレードランナー』での音楽制作について振り返り、「彼とはスタジオで夜更けまで寝転びながら酒を飲んだりしていたが、突然“いいアイデアが浮かんだ”といって曲をつける。すると、観たこともない世界が広がるんだ。(中略)音楽こそ映画に入る最後のセリフだと気づいた。作曲家は同意しないかもしれないけど、音楽は観客の感情のボタンをおしてくれる」と語っている。

伝説の名画と伝説のスコア。ライブ演奏によって押される感情のボタンは、この1公演でしか体験できない。

ブレードランナーLIVEファイナル・カット版
イベント情報
ブレードランナーLIVEファイナル・カット版

公演日程: 2023年3月5日(日)14:00開演

 

会場: Bunkamuraオーチャードホール

 

曲目・演目: 映画 『ブレードランナー』

1982年のアメリカ映画。ファイナル・カット版は2007年にリリース。

主演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス
監督:リドリー・スコット  脚本:ハンプトン・ファンチャー、デヴィッド・ピープルズ
原作:フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
音楽:ヴァンゲリス

■英語上映:日本語字幕付き

 

出演: The Blade Runner LIVE Ensemble

 

Blade Runner: The Final Cut © 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

よしひろまさみち
よしひろまさみち 映画ライター・編集者

音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ