2020.04.16
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」 File.4
ラヴェル《ラ・ヴァルス》の放つ、眩い光に魅せられて
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
写真はズバリ、私にとってのラヴェル作曲《ラ・ヴァルス》のイメージに沿ったものです。目が眩むほど煌びやかに輝くシャンデリア、幻のように儚くもグロテスクナな美しさ…… そんなヴィジュアルが浮かんでくるのです。
そのイメージを鮮やかに沸き立たせてくれるのが、フランソワ=グザヴィエ・ロトが指揮するレ・シエクルによる演奏。彼らはピリオド楽器を使用して、音楽に輝かしい息吹を与え、現代のわたしたちの耳に革新的な印象を与えてくれます。
今年の2月、ロトが東京都交響楽団の定期公演で、ラヴェルのバレエ音楽《ダフニスとクロエ》全曲を指揮したのを聴いて、あまりに生命力に溢れ、艶かしいまでの響きに、私は面食らったばかりでした。
冒頭のもぞもぞと蠢く(うごめく)音響から背筋がゾクッとする。
そして、幻想的なワルツの世界へと否応なしにいざなわれると、もはや身体がじっとしていられない。
ありし日のウィーンの舞踏会で、気持ち悪くなるくらいにグルグルと旋回しながら、シャンデリアに輝く天井を見上げたら……きっと目に飛び込むのが、こんな光なのではないか、というのが今回の写真。
シニカルで危険なまでに美しい世界に酔わされた、ちょっぴり危ないヴィジョン。
実はこの写真、万華鏡の覗き窓に、スマホカメラの小さなレンズをあてながら撮ったものなんです。日常の中で非日常的な幻影を見せてくれる万華鏡。次々と絵柄と光が変わり、同じ写真は二枚と撮れません。
おうちに万華鏡があったら、ぜひ撮影にチャレンジしてみてください。なかなか楽しいですよ。
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」
2022.03.17
生まれ変わる街の景色を眺めながら、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲を聴く
2022.03.10
カモメたちの日常を見て脳内再生された、軽やかなバッハ
2022.03.03
桃の節句に、シベリウスの乙女度高い「花の組曲」を
2022.02.24
恍惚とした都会の天使に、ピアソラの音楽が寄り添う
2022.02.17
ドビュッシーの音楽が描く、心に沁み入る雪の情景
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
2024.07.26
動画で学ぼう!日本の歌のうたいかた#4 小3で習う《ふじ山》《茶つみ》《春の小川...
2024.07.26
ブラームスを知るための25のキーワード〜その14:ピアノの腕前
2024.07.24
現代音楽界のレジェンド、I.アルディッティにきく 作曲家との50年を振り返るプロ...
2024.07.24
田中彩子~デビューから「台風の目の中」で進んできた10年、さらなる挑戦へ
2024.07.24
芸術家が愛したパリのカフェ〜ドビュッシーとプルーストが出会ったヴェベールなど5選
2024.07.22
橋本阿友子さん×町田樹さん特別対談 #3 フィギュアスケートの音楽編曲と著作権
2024.07.20
福間洸太朗を変えた 現代音楽との出会い「音楽世界の水先案内人でありたい」
2024.07.18
【Q&A】次世代カウンターテナー・上村誠一さん~合唱が原点。自分らしさを大切に