読みもの
2020.09.03
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」File.24

家庭風景をバッハが後妻に贈った「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」で想像する

飯田有抄
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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あ、だれかが一生懸命のぼった足跡がありますね。

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やりたくなるんですよね、こういう挑戦(笑) 後ろのステップを使わずにのぼっちゃう。でも、このあと滑る人のお尻がよごれそうだな。
小さな公園の遊具の周りは、いつもお母さんと子どもたちでほのぼのしています。

音楽の歴史のなかで、そんな親子のほのぼの具合が伝わってくるのは、「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」ではないでしょうか。

この曲集は楽しいですよ。J.S.バッハが2人目の奥さん、アンナ・マグダレーナのために贈った2巻の音楽帳です。とはいえ、バッハ自身が作曲した曲ばかりが並んでいるというわけではありません。

バッハの曲では、「フランス組曲」や「パルティータ」などの初稿、ゴルトベルク変奏曲のテーマである「アリア」など、鍵盤楽器で弾けるものが入っています。

ゴルトベルク変奏曲 BWV988より「アリア」

そのほかは、アンナ・マグダレーナ自身が書き留めた小品が多く、アリアやコラールなどの声楽曲や通奏低音のルールがあったり、バッハの前妻との息子であるカール・フィリップ・エマヌエルの小品も入っていたり、クープランのクラヴサン曲が混じっているかと思えば、テレマンの親戚かも? と言われている作曲者の小品も納められています。

本当はペッツォルトという人が作ったのに「バッハのメヌエット」(BWV Anh.114、115)と呼ばれる曲もこの音楽帳にはいっています。

ペッツォルト「メヌエット」BWV Anh.114、115

アンナ・マグダレーナ自身が楽しむためのものもあれば、子どもたちへの教育用に書き溜められていったものでもあるこの曲集。自筆譜には、子どもの筆跡と思われる幼い書き込みもあるそうです。

バッハ家の家庭内で鳴り響いていた小さな音楽の数々は、まるでお菓子のアソートBOXのように楽しい気分にさせてくれます。

暑かった今年の夏の疲れを解きほぐすように、こんな音楽帳の調べに耳をすますのはいかがでしょうか。

※以下のアルバムは音楽帳2巻のうち、パルティータ イ短調 BWV827およびホ短調 BWV830、フランス組曲 ニ短調 BWV812およびハ短調 BWV813を抜いた作品が順番に収められている

飯田有抄
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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