「イギリス音楽」の普及に尽力した昭和の音楽評論家 三浦淳史を知っていますか?
2022.03.17
生まれ変わる街の景色を眺めながら、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲を聴く
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
最近、とあるきっかけがあってハマってしまったのが、ルーマニアの作曲家・ヴァイオリニスト・指揮者のジョルジェ・エネスク(1881〜1955)の作曲した、ピアノ・ソナタ第3番(1934〜35作曲)です。
3つの楽章はいずれも瑞々しく透明感のある美しい音楽なのですが、なかでも第2楽章は、特有の時間感覚をもった静謐な音楽。
一聴して音の数はあまり多くないように聴こえるのですが、楽譜を見てみたら大変なことになっていました(弾けそうかな? と思ったけど、こりゃキビシイ! 苦笑)。
ジョルジェ・エネスク:ピアノ・ソナタ第3番 第2楽章
特有の時間感覚と書きましたが、なんというか、時計の秒針では測りきることのできない、濃淡のある、内省的な時間感覚といいましょうか。
割り切れなかったり、蘇ったり、巡ったり……耳を澄ませていると、心を遊ばせるようなひとときを過ごすことができるのです。
それって例えば、子ども時代にじっと雨の日の窓辺で、水滴の動きを追っていたようなあの感覚。
水滴は動かなかったり、つーっと勢いを増したり、合体して大きくじわ〜っとなったり。
あのときの、不思議に集中していた静かな感覚を思い出させてくれるような音楽は、どこか私たちに、そっと活力を甦らせてくれるような気がするのです。