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2022.07.27
どんな体験ができるの? 音楽学者・広瀬大介さんがレポート

ベルリン・フィル映像配信がイマーシブオーディオ導入でパワーUP! 手軽に未来を感じよう

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の映像配信サービス「デジタル・コンサート・ホール(DCH)」。過去のアーカイブ映像、ライブ配信やドキュメンタリーなどの充実したコンテンツを、ハイレゾで楽しむことができましたが、今年からは話題のイマーシブ・オーディオ(ドルビーアトモス)にも対応! イマーシブ・オーディオってどんな体験ができるの? 音質にこだわるガジェット大好き音楽学者の広瀬大介さんが教えてくれました。

広瀬大介
広瀬大介 音楽学者・音楽評論家

青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...

©︎Monika-Rittershaus

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ちょうど1年前、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が展開し続けている「デジタル・コンサート・ホール」(以下DCH)について、ここで記事を書かせていただきました。

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重複を怖れずもういちど繰り返しますが、ベルリン・フィルは、実演の世界だけでなく、録音・配信の世界においても、その時代における最先端の技術を駆使して、自身の奏でる音楽を最良のかたちで後世に遺そうと努力し続けています。ヘルベルト・フォン・カラヤンが映像技術にこだわり、CDなど録音メディアの開発にも関わったことは有名でしょう。

昨年の記事では、そのDCHがハイレゾ音声に対応した、とお伝えしたわけですが、今回はさらにその音声技術が一歩進んだ、というお報せです。

DCHが導入した「イマ―シブオーディオ」ってなに?

その新しい技術が「イマーシブオーディオ」。イマーシブ?「没入感のある、実体感のある」と訳される言葉ですので、日本語的には「没入感を得られるオーディオ」という感じになるでしょうか。

皆さんがご自宅で音楽を聴く時は、左右一対のスピーカーを用いたステレオ音声で楽しまれている方が多いことでしょう。基本的にこの2チャンネル型の音声では、音は自分の前方から飛んでくるだけです。コンサートホールと同じ環境の部屋でそれらを聴いている方はほとんどいないでしょうから、ホールのような残響、あるいは反射音などを楽しむことはできません。どうしても「平面的」な音になってしまいます。

映画を観る時用に、5.1チャンネルサラウンドを導入していらっしゃる方もいらっしゃることでしょう。前方に3つのスピーカーと低音を補うウーハー、横あるいは後方に2つのスピーカーを置いて、音に包まれている感じを数多くのスピーカーで実現する技術です。

©︎Berlin Phil Media GmbH

DCHのイマーシブ・オーディオは、このようなサラウンド装置をそのまま活用します。最新技術を駆使して(ドルビー・アトモスと呼ばれます)、没入型の演奏体験をしてもらおう、という試みです。これによって、我々は演奏会場で聴いている音響に近いかたちで、ベルリン・フィルのサウンドを愉しめるというわけです。

DCHをイマーシブ・オーディオで楽しむ方法

パソコンで楽しむ

デジタル・コンサートホールのウェブサイトは現在、MacOS OSのバージョン10.15 (Catalina)以降がインストールされた、特定のAppleデバイスでイマーシブオ ーディオ(ドルビーアトモス)に対応しています。また、ブラウザとしてSafariが必要です。この設定により、ビデオプレーヤーで直接、歯車のアイコンからご希望の音質を選択することができます。選択した内容は、再度変更するまで該当するデバイスに保存されます。

 

スマートフォン/タブレットで楽しむ

スマートフォンやタブレットがデジタル・コンサートホールの対応機器であること、およびアプリの最新版がインストールされていることが必要です。ビデオプレーヤーで直接、歯車のアイコンを使ってご希望の音質を選択することができます。選択した内容は、再度変更するまで、該当するデバイスに保存されます。 また、この設定オプションは、「アカウント」のメニュー項目「設定→音質」で見つけることができます。ドルビーアトモス対応のヘッドホンを使用すると、最適な体験が可能となります。

 

また、iPhoneやiPadでは、Apple Airplayを使って、他のドルビーアトモス対応機器にコンサートの映像を転送することも可能です。

 

テレビで楽しむ

前提として、お使いのテレビまたはストリーミングメディアプレーヤーがデジタル・コンサートホールの対応機器であること、およびアプリの最新バージョンをインストールしていることが必要です。ビデオプレーヤーで直接、歯車のアイコンを使ってご希望の音質を選択することができます。選択した内容は、再度変更するまで、該当するデバイスに保存されます。 さらに、ドルビーアトモスに対応したサウンドバーや、A/Vレシーバーを接続し、ARCまたはeARCを追加したHDMI接続が必要です。

 

使用できる機器一覧はこちらから

演奏画面の右下、歯車マークを押すと音質設定を変更できます。3D音声のボタンをチェックすれば設定は完了!(画像はiPad)

ホームシアターがホーム”コンサート・ホール”に

というわけで、私も手持ちの機器で早速聴いてみました。自宅の5.1チャンネルサラウンドシステムにApple TVを組み合わせるのが、現状ではやはりもっとも手っ取り早そうです。楽器の細かな表現力を知るには、ヴァイオリンのソロがいちばん(と勝手に思ってる)。

アウグスティン・ハーデリッヒが独奏を務めるプロコフィエフ《ヴァイオリン協奏曲第2番》 を選んでみました(2021年10月9日、指揮:グスターボ・ヒメノ)。ここ数年分のドルビー・アトモス対応音源は、編成の違いなどもあり、ベルリン・フィル側もどのように録音すべきか試行錯誤を繰り返しているように思われますが、この録音はその中でもかなり明瞭な音像が捉えられています。

スマホ×イヤフォンでも没入感ある体験を

あと、手持ちのiPhone 13 Pro Maxでも設定が可能なので、そちらでも試してみました。最近購入して使い倒している最強ポータブルアンプ、ifi xDSD Gryphonを間にかませ、Shure SE846を鳴らしてみます。

iPhone 13 Pro Maxでの試聴セッティング
ifi xDSD Gryphon 小売価格82,500円(税込)
Shure SE846 実勢価格108,600円前後

ヴァイオリンの音が前面から押してくるように迫るのではなく、舞台上の中央下手側に位置しており、その響きが反響しながら自分の背後からも迫ってくる感覚がハッキリとわかります。奏者の息遣い、弓のこすれる音やピッツィカートの微細な音は直接届き、客席で聴く音響が高い精度で再現されています。音に包まれている空間を感じられる点では、サラウンドシステムよりもさらに一歩先へと進んだ印象を受けます。

最新技術によって、さらに一歩近づいた、「自宅でのコンサートホール体験」。イマーシブな、没入感を味合わせてくれる技術が、いよいよ我々の手の届くところにやって来たのかもしれません。お手軽に感じられる未来、ぜひ皆さんもお試しを。

DCH クリエイティヴ・プロデューサーが語る「イマーシブオーディオでどのような体験ができるのか」

イマーシブオーディオでは、目の前に狭い音の壁があるのではなく、空間の中で聴いているような感覚を初めて味わうことができます。ホールの反射音が聴こえるようになり、音が扇状に広がることで音像が透明になります。ホールで聴くのと同じように、個々の楽器やセクションの音を、より簡単に耳で感じ取ることができるのです。響きはより現実に即しており、あらゆる方向から音がやってくるので、脳内の処理はさほどの負担になりません。理想的なヘッドホンでの再生では、音が頭の外にまで出てきて、自分を包んでくれるかのようです。聴き手が(フィルハーモニーの)Bブロックに座っているか、AブロックやCブロックに座っているかはさほど重要ではなく、オーケストラが理想的なバランスで、空間の中で自由に鳴らせる位置に座っている体験が可能になります。

クリストフ・フランケ(デジタル・コンサートホール クリエイティヴ・プロデューサー)

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©︎Stephan Rabold

広瀬大介
広瀬大介 音楽学者・音楽評論家

青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...

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