絵描きの音楽ノート no.07〈6月〉

音の糸でつないでいく世界~デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち

読みもの
2019.06.29

音楽からイメージして楽譜の表紙絵を描く、絵本作家の本間ちひろさんによる詩とエッセイ。

今回はお馴染みの絵本『スーホの白い馬』に出てくる、馬頭琴という楽器に抱いていた本間さんのイメージを覆した「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」との出会い、音の糸がつないでくれた楽しい世界を綴ります。

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取材協力:ハーモニーフィールズ
写真:編集部

絵と詩とエッセイ
本間ちひろ 絵本作家・イラストレーター
本間ちひろ
絵と詩とエッセイ
本間ちひろ 絵本作家・イラストレーター
1978年、神奈川に生まれる。東京学芸大学大学院修了。2004年、『詩画集いいねこだった』(書肆楽々)で第37回日本児童文学者協会新人賞。作品には絵本『ねこくん こん...

弦楽器の夜
           ほんまちひろ

草原に降りる星 跳ねる雫
さっきまで笑っていた子ども
音の糸が世界をつないでいく夢を
いったいどれほどの人がみたでしょう

スーホの馬頭琴が楽しそうに踊りだす

子どもの頃に読んで、それから何度も引っ越して、大人になっても、まだ手もとに残っている絵本が数冊ある。そのうちの大切な1冊が『スーホの白い馬』(大塚祐三 再話/赤羽末吉 画/福音館書店)。小学校の国語教科書にも載っていたお話だ。

いばった殿さまによって、白い馬が死んでしまう。そして飼い主であるスーホの夢に馬が出てきていう。

そんなに、かなしまないでください。それより、わたしのほねや、かわや、すじや、けを使って、がっきを作ってください。そうすれば、わたしはいつまでもあなたのそばにいられます。あなたを、なぐさめてあげられます

(絵本より引用)

『スーホの白い馬 (日本傑作絵本シリーズ)』(大塚祐三 再話/赤羽末吉 画/福音館書店)

モンゴルの馬頭琴の起こりを描いたこの昔話のイメージのまま、もの悲しく切ないイメージを馬頭琴に抱いていた私は「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」の演奏動画を見て、びっくりした。

た、た、た、楽しそうだ。

二胡も、私はかってに、中国の伝統音楽にしっとりとしたイメージを抱いていたのだが……

お、お、お、踊っている。

でも、そりゃあそうだよね、伝統楽器も、演奏者も、今の時代を、生きているのだから。

知らず、考えもしなかった勝手な思い込みに、音楽は、ひらりと窓を開け、新しい風を吹き込んでくれる。

違うからこそ「混ぜ合わせる」ということができる4つの弦楽器

モンゴルの馬頭琴、中国の二胡、そしてスウェーデンにルーツを持つニッケルハルパ、そしてギター。ルーツの異なる4つの弦楽器によるバンド「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」。

どうしてこれほど楽しいバンドが生まれたのか。3月の来日ツアーの折に、フランスのギタリストで作曲家でもあるリーダーのマシアス・デュプレッシーとメンバーにインタビューをお願いした。

左からマシアス・デュプレッシー(ギター)、グオ・ガン(二胡)、エンフジャルガル・ダンダルヴァーンチグ(馬頭琴)、アリオチャ・レグナルド(ニッケルハルパ)。

——はじめて演奏動画を見たとき、あまりにも楽しそうでびっくりしました。このバンドを始めるきっかけがあれば、教えてください。

マシアス・デュプレッシ―: 2008年ごろ、インドの演奏家とレコーディングしたとき、二胡と、馬頭琴を入れたグループを思いついた。馬頭琴のエピ(エンフジャルガル・ダンダルヴァ―ンチグ)とは以前から知りあいで、パリに帰って二胡の奏者を探していたときに、グオ・ガンと知りあって、「DUPLESSY&THE VIOLINS OF THE WORLD(デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち)」のファ―ストアルバム「MARCO POLO」 ができた。

でも、インドから演奏家を呼んで、頻繁に一緒に活動をするのは、渡航費もかかって大変。どうしようかと考えていたとき、アリオチャ・レグナルドのニッケルハルパにであった。ニッケルハルパは、ケルトやスウェーデン、いろんな音楽を演奏できると知り、メンバーに誘ったんだ。

——異なるルーツの楽器が一緒に演奏するために、何か工夫していることはありますか?

デュプレッシ―: 一見、難しそうに思うかもしれないけど、違うからこそ「混ぜ合わせる」ということができる。曲を作るときは、楽器それぞれの音が頭の中で流れて、このメロディには二胡があうとか、馬頭琴があうなあ、とマッチさせる。二胡は高音、馬頭琴は低音、それぞれの役割があって。合唱では、歌う人それぞれ、声が違うでしょう? それでも合うのと同じだよ。

——バンドの皆さん、とても仲良く見えるけど、ケンカもしますか?

デュプレッシ―: どこの家族も、いろんなときがあるよね? それと同じ。でも、どんなときもステージでは仲良く、しっかり演奏するよ!(笑)

——演奏ツアーで世界各地へ旅をして、音楽へのインスピレーションに繋がっていますか?

デュプレッシ―: 世界を旅していて、アーティストだから、日々いろんなことからインスパイアされる。街を歩いたり、木を見たりね。とくにこのバンドの音楽では、田舎の自然の情景とつながっているよ。

コンサートの後でのインタビューで、語り声や、冗談の掛け合いや笑い声が、音楽のようで、舞台の演奏が続いているかのようだった。

馬頭琴のエピさんは写真撮影のときもずっとホーミーで歌っていて、大平原のやさしさのような響きにうっとり・・・。

「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」が、音でつないでいく世界。

楽しくて、優しくて、美しい。

帰り道

          ほんまちひろ

世界中に弦楽器があるのはどうして?
コンサートの帰り道
きままな昔話思いつき遊びしながら
今夜は星が何個か出ていたね

「デュプレッシーと世界の弦楽器奏者たち」おすすめ動画

Petard Chinois /作曲:デュプレッシー

みるたびに、ハッピーな気持ちに! なかよくみんなで踊ろうぜ!

ラヴェル《亡き王女のためのパヴァーヌ》/ 編曲:デュプレッシー

ラヴェルが世界を旅したら…….。

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