読みもの
2018.08.02
美しい音を求めて…ノン・レガートからレガートへ

ロシア奏法によるピアノ教本『はじめの一歩』~指導法レッスン動画

ピアノを教える人、学ぶ人の雑誌「ムジカノーヴァ」で2017年に連載した『ロシア奏法によるピアノ教本 はじめの一歩』を使った指導法。そのレッスン動画を一挙に紹介。
この教本を使った指導経験が豊富で、指導法講座も行なっている須田美穂先生の、子どもたちの音楽性を見事に引き出す感性・手腕が余すところなくご覧いただけます。
子どもたちの成長を一緒に追っていきながら、さまざまなヒントを得てはいかがでしょうか。

指導する人
須田美穂
指導する人
須田美穂 ピアノ指導者

桐朋女子高校、桐朋学園大学を経てドイツ国立デトモルト音楽大学を首席卒業。西日本新人演奏会にて「テレビ西日本賞」を受賞。FM福岡「ピアノのある部屋」に出演。ヴェストファ...

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『ロシア奏法によるピアノ教本 はじめの一歩』は、著者であるO.ゲターロワ、I.ヴィーズナヤが、ガッチナ市立第2児童音楽学校特別ピアノ・クラスでの長年の経験をもとに、子どもにピアノ奏法の基礎をどうやって習得させるか、教育現場で成果のあった曲と練習法をすべて収め、その教程を系統的にまとめたもので、教則本3巻と曲集から成る。

 「鍵盤から音を引き出す」という感覚、手の脱力、指1本1本のテクニックなどを、子どもが親しみやすい曲を通して習得できるように構成された教本で、繰り返し練習すれば、短期間にピアノの感覚をつかみ、自由な演奏・自由な指の動きができるようになることを狙っている。

ロシア連邦文化省推薦 児童音楽学校用教材にもなっている。

以下、動画紹介コメントは、須田美穂先生によるもの。

紹介動画~『はじめの一歩』ってどんな本?

指導法~はじめまして

拙い子どもの演奏でも、呼吸がある音楽は「優しさ」や「愛情」を聴き手に与えてくれ、幸せな気持ちにさせてくれます。A.ルビンシテイン作曲《メロディ》(3巻)

指導法~自由に音遊び!

教則本を始める前に、子どもと自由にピアノで遊んでみましょう。

「優しい音」や「きらきらした音」「不思議な音」などを出しながら海や森の生き物を自由に表現する「音遊び」。レッスン前のウォーミングアップに即興で気楽に楽しめます。

先生が出す音の真似をすることで集中し、自分で好きな響きを作ることで想像力もアップ! 楽しみながら手や指の感覚を鋭敏にしていきます。裏拍のリズムを感じると、わき上がるエネルギーも生まれてきます。

 

指導法1巻(1)

楽譜が読めない子どもも連弾で楽しく始められる曲です。色々な音色を楽しみながら遊び心をもって楽しみましょう! 動画の中に「連打」の練習も入れています。

初めから言葉を話すように指導すると、連打も音楽的に表現できると思います。O.ゲターロワ編曲《リス》(1巻)

 

指導法1巻(2)

「音遊び」をたくさん楽しんだら、曲に入ってからも「音には色々な色がある」ということを自然に意識してくれると思います。

導入期に「音の色彩感覚」「呼吸」、そして音楽は前に進んでいることを意識して指導されると、その後自分で考え、感じる自発的な演奏へ発展していくと思います。N.リムスキー=コルサコフ採譜/M.グルシェンコ編曲《ラードゥシキ》、L.へレスコ作曲《氷の山のすべり台》(1巻)

 

指導法1巻(3)

ワルツの原型になるこの曲は、左右とも1本指で弾きます。難しいのは右手の「連打」! 呼吸のある柔らかい連打で、踊るように自由に3拍子のリズムを楽しみましょう。

モデルのM2ちゃんも初めは少し真面目な感じのワルツを弾いてますが、身体が自由にほぐれたら音楽も自由になってきました。ナターシャ・ヴィーズナヤ作曲《ワルツ》(1巻)

 

指導法1巻(4)

2度の重音の響きをたくさん感じて 新しい響きの世界を作ってみましょう。左右交互で弾くときは呼吸が生まれやすいので、子どもたちにも弾きやすく魅力的な曲となるでしょう。O.ゲターロワ作曲《カエルたち》(1巻)

 

指導法1巻(5)~ハノンを使って その1

ムジカノーヴァ2017年2月号で、指の付け根や手の中の感受性の大切さを記しましたが、指から指へ音が移って行く際に、「歩いているように」「弧を描くように」重みを移動する練習をハノンを使って紹介します。

ゆっくり2音ずつ呼吸しながら弾き、そして子どもたちが好きなスタッカートもイメージをもって音で表現していきます。ゆっくりしたレガートの練習は、いずれ夜想曲やソナタで出てくる「旋律」を歌うときに繋がっていくと思います。

撮影に協力してくれているM2ちゃんも指先だけで弾かず、指の付け根や手や手首全体で呼吸して頑張っています。最初のうちは手や指をオーバーに使っていますが、年齢とともに最終的にはほとんど動かずに弾けるようにしていきます。

 

指導法1巻(6)~ハノンを使って その2

その1の続きの動画です。今度は4つずつのレガートに挑戦です。2音ずつの練習では響きをたくさんもたせましたが、少し速いパッセージのときには、響きよりも「滑らかな流れ」に気を付けて練習します。

同じ音圧を2回続けただけでも、動画では「ゴツゴツした流れ」に録音されてしまいます。M2ちゃんも私もまだまだレガート奏法に奮闘中ですが、歌うように弾くために手の中や指の付け根をしっかりさせながら、指先は桜の花弁のように柔らかくして練習しています。

 

指導法(7)~呼吸のあるレガートと連打音

生徒さんのレッスン風景ではなく、実際の弾き方について実演しながらレクチャーしてみました。2音のレガートを表情豊かに表現するためには「呼吸」が大切であるということと、連打の弾き方の一例を紹介しています。

 

指導法(8)~美しいレガートを目指して

2音のレガートの弾き方や手の中の表情について、また指先だけで弾くのではなく、指の付け根の「バネ」を使うことについて説明しています。

 

指導法(9)~イメージわくスタッカートと伴奏について

スタッカートは単に弾んで切るだけではなく、表現の可能性がたくさんある奏法です。初めてスタッカートを弾くときのやさしい弾き方のほかに、連弾の伴奏についても少し解説しています。

聴いている人が幸せな気持ちや楽しい気持ちになれるようなスタッカートを一緒に楽しみましょう♪

 

指導法(10)~楽しく! 楽しく! スタッカートでハノン

普通に弾けば「訓練」のようになりがちなハノンも、呼吸をして、色をイメージしたら楽しく練習できると思います。

音楽的な響きや色彩を作るためには、それを表現するための「手」を作らなくてはいけません。子どもたちが「今日はどんなハノンにしようかな?」と自ら考えて練習できるようにサポートしていきます。「軽やかな音」の動画を選びました。

 

指導法(11-1)~体中で表現してみましょう その1

導入期より、「3音」や「4音」に言葉を話すようなニュアンスを付けて練習すると、曲も表情豊かになります。レッスンでは子どもが自発的な演奏ができるように、細かな部分にこだわらず、自由に伸び伸び弾けるように心がけています。動画の中の短い時間でKくんは変化しました。それはおそらく、彼が呼吸しだしたからだと思います。V.イグナーチェフ作曲《番犬の行進》《黒人の子守歌》(3巻)

 

指導法(11-2)~体中で表現してみましょう その2

導入期より、「3音」や「4音」に言葉を話すようなニュアンスを付けて練習すると、曲も表情豊かになります。レッスンでは子どもが自発的な演奏ができるように、細かな部分にこだわらず、自由に伸び伸び弾けるように心がけています。

こちらの動画でもKくん、リズムの感覚を自分でつかめました。子どもは素晴らしいですね。V.イグナーチェフ作曲《番犬の行進》《黒人の子守歌》(3巻)

 

ハノン練習~伸びる音で弾けるかな

昔は「ハノン」の練習はつまらないと思っていましたが、曲と違ってどんなふうに弾いても自由だから、逆に「楽しまなくちゃ!」とアレンジして自由に使って練習しています。

M1ちゃんはまだ手が小さく指も華奢なので、弱くても伸びる音を出せるように、指先だけで頑張らない練習をしています。「ジャズ・ハノン」という楽譜もあり、ハノンも弾き方や練習の仕方によって興味深くなるのですね~♪

 

ハノン練習~レガートへの旅

4つの音をレガートで弾くのはとても難しいです。M2ちゃんも4つのレガートの練習を始めました。初めはプツプツ切れていたM2ちゃんも、わかってきたらだんだん滑らかになってきましたよ。ロマン派の歌い方ができたら、いつかモーツァルトの音階も弾けるようになるといいね♪ きっと私より子どもたちのほうが歌うレガートが弾けますよ。

 

ムジカノーヴァ「はじめの一歩」指導法(12-1)〜音階の準備~

音階を音楽的に弾くことは大変難しいと思います。すべて隣同士の音の連なりのため直線的な流れになりやすく、音もプツプツと切れて響くという悩みも多いかと思います。

ゆっくりの練習では、跳躍した音と音の「間」を歌うときのように 隣同士の音と音にも「間」を感じてみましょう。4つずつのかたまりでニュアンスを付けて練習します。そして「どこに向かっているのか」を理解して弾きます。

またスピードを上げて弾くときは 「流れ」に気を付けて、向かう先まで一気に弾く練習もすると良いでしょう。音楽的に感じながら、停滞しないで常に前にいくイメージで練習してみて下さい。直線でなく「弧を描くような音階」が弾けたら、美しい音の首飾りができますよ。

 

ムジカノーヴァ「はじめの一歩」指導法(12-2)〜音階の準備~

M1ちゃんに ピアノを始めた頃に遊んだ「指の体操」をやってもらいました。当時は立って歩きながら「電車ごっこ」と称して弾いたりもしていました。

この練習の目的は、

  • 手の中に空洞ができること=手の中のお家=良い響き!
  • 親指を立てて弾くので押しつけた音にならない
  • 親指が柔軟になる
  • 指にもたれて歩くように弾けるため脱力しやすい=レガートになる

など、たくさんの効果が得られ「歌う音階」に一歩近づけます。

動画では長めに練習していますが、導入期のもっと小さなお子さんは1~2分くらいで飽きる前にやめるのが、楽しく続けるコツだと思います。

 

ムジカノーヴァ「はじめの一歩」指導法(12-3)〜左手の伴奏~

ピアノを始めてしばらくしたら、古典的なソナチネやソナタ形式も勉強します。その際、必ずと言ってよいほど「ド・ソ・ミ・ソ」「シ・ソ・レ・ソ」などの型の伴奏が出てきます。

小さい頃から基礎的な音型にニュアンスを付けて弾けるようにしておくと、骨格がしっかりしてくる12歳くらいで大人のような立体感のある演奏ができるようになっていきます。伴奏や音階を初めから言葉のようにレッスンしてきた生徒さんたちが少し大きくなったときには 私が弾くより素敵に弾きます。導入期が本当に大切だと痛感するのが「伴奏型と音階」です!

D.シュタイベルト 44番「ソナチネ」1楽章……音楽之友社出版「はじめの一歩」曲集より

 

ムジカノーヴァ「はじめの一歩」指導法(12―最終章)~連打音と調性感

この動画で、ムジカノーヴァ「美しい音を求めて」の連載のためのアップロードは最後になります。M2ちゃんは優しいお母様から手ほどきを受けて、ロシア奏法の動画を撮るときに私の元にやって来た生徒さんです。連載用の動画を撮り始めたときは まだ響きも少なく呼吸も浅めでしたが、この8か月の連載中にとても成長してくれました。素直な音楽性は、お母様がM2ちゃんにピアノの楽しさを教えて下さっていたからだと思います。半年前にはできなかった移調もできるようになり、音が響き始めたら表情も少しずつ付いてきました。

曲は音楽之友社のピアノの学校1の小品です。8小節の短い曲ですが響きに色が付いて来ると大人の曲のようにも聴こえて来ます。「はじめの一歩」で勉強して来たことが 他の教則本でも繋がっていくのがM2ちゃんのレッスンの中でも感じられることが多くなりました。

ピアノを教えていて一番幸せに思うときは、生徒さんが自分自身で音楽を表現したり感じているのが伝わったときです。「教えたからできた」のではなく、自分で考えて感じてくれたときです。

ロシア奏法を通して、美しい音で美しい心で歌うように奏でられるための音楽的な技術を、これからも子どもたちと一緒に勉強していきたいと思います。長い間、ご視聴ありがとうございました。

指導する人
須田美穂
指導する人
須田美穂 ピアノ指導者

桐朋女子高校、桐朋学園大学を経てドイツ国立デトモルト音楽大学を首席卒業。西日本新人演奏会にて「テレビ西日本賞」を受賞。FM福岡「ピアノのある部屋」に出演。ヴェストファ...

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