動画で学ぼう!日本の歌のうたいかた #1 日本語の美しい発音や発声を身につけるために
小、中、高校の音楽の授業で習う日本の歌を、児童生徒が動画で学習できるようにしたWeb教材の連載がスタート! 音楽の先生はもちろん、大人の趣味やデイケアなどでも広くご活用ください。
音楽の授業のWeb教材として また大人の趣味まで幅広く使える
この連載は、小、中、高校の音楽の授業における日本の歌(小学校・中学校の歌唱共通教材、および日本歌曲)を、児童生徒が1人1台の情報端末を用いて学習できるWeb教材を紹介するものです。
音楽の授業外でも、この教材を子どもに提示することで、自宅での学習にも使っていただけます。
また、音楽の授業を想定して教材を作成しましたが、大人の方が日本の歌を楽しむ参考にしていただいたり、デイケアサービスなどでのレクリエーションとしても使っていただける教材です。
ぜひ、幅広く活用していただけたらうれしいです。
それでは、まずWeb教材の指導上のポイントを4つご説明します。
①ピアノ伴奏がなくても音楽の授業ができる
範唱動画を個別にイヤホンを用いて視聴しながら、発音、発声、表現を読み取り、そこから自分なりの思いや意図を創出して歌唱表現に取り組みます。
②子どもの学習の自己調整を促す
「このように歌ってみたい!」という興味・関心を持たせ、見通しを持って創意工夫に取り組み、振り返りを通して次の課題を見つける学習を展開できます。
③美しい日本語の発音・発声が学習できる
日本歌曲を研究してきた声楽家・細谷美直教授による日本語の舞台発声理論に基づいた動画です。歌は曲種に適した発声方法で歌唱します。日本語の特性を生かした歌唱方法を学ぶことにより、日本語の美しさを理解し、音楽文化、言語文化の継承につながります。
④楽しい音楽経験を通して日本の歌を継承する態度を育てる
日本の歌を歌唱する楽しい音楽経験を通して、自己や社会における日本の歌の価値を考え、継承する態度を育てます。それにより音楽科を学ぶ意義を、児童生徒が実感することができます。
歌詞をどのように発音・発声するか、自ら考えられるように
歌唱の創意工夫とは、旋律に乗った歌詞をどのように発音・発声するかについて考えることです。それにより、曲想と音楽の諸要素の働きや歌詞の内容との関わりを理解し、どのように歌いたいのかという思いや表現意図を持つことができるのです。
日本語の歌詞は、名詞をていねいに発音することで、歌詞が明瞭な表現になります。他の品詞は、音楽の諸要素の働きや歌詞の内容と関連させて、児童生徒が自由に発音を創意工夫するようにしましょう。そして発声は、日本語を美しく表現する自然な発声の仕方を範唱動画から学ぶことができます。
先生方へ 学年ごとの授業展開のポイント
以下、発達段階ごとに授業展開のポイントをご紹介します。
小学校1・2学年
9歳以前の小学校1・2年生は、感覚重視です。動画から感覚的に日本語の発音・発声や音楽の諸要素の働きを捉え、「このように歌いたい」という思いを持って、楽しく歌う授業を展開します。
名詞は“もののなまえ、ことのなまえ”と呼び、ていねいに歌うようにします。動画を視聴して歌うと、子どもの声は自然なのびのびとした発声になります。大きな声ではなく、自然な声で歌うことは、児童が自分の思いを表現している姿です。
小学校3・4学年
9歳以降はメタ認知能力が発達するため、学習の自己調整は、より水準が高くなり、創意工夫ある歌唱表現に主体的に取り組む姿が見られます。
音楽の諸要素の働きを理解し、「このように歌いたい」という思いや意図を持ち、子どもたちが歌詞の発音・発声を工夫する楽しい授業を展開しましょう。
小学校5・6学年
小学校5・6年生は、論理的な思考力が発達します。曲想と音楽の諸要素の働きとの関わりを論理的に考え、「このように歌いたい」という思いや意図を持ちます。楽しい音楽活動を通して、より深まりのある歌唱表現が期待できます。
中学校
文部省唱歌から日本歌曲へと教材が変わります。曲想と音楽の諸要素の働きや歌詞の内容および背景との関わりから、「このように表現したい」という思いや意図を持ち、楽しく歌唱します。その経験を基に日本の歌の価値を見いだし、日本の歌を受け継ぐことについて考える授業を展開します。
なお《浜辺の歌》では通常歌われない3番を載せてあります。出版の際、無断で3番と4番を合成されたため、教科書では2番までだけを歌うようになりました。このことから日本の歌を大切に受け継ぐことについて考えさせる学習を展開できます。
高等学校
高等学校では、中学校までに獲得した日本語の舞台発声の技能を用いて表現を探究する授業を展開します。日本語の発声とイタリア語やドイツ語の歌曲の発声の違いに気づき、声の多様性や日本歌曲の価値について考える学習は有意義です。高等学校の音楽科において、教科書の掲載曲も含めたお薦めの曲を提案しました。
《小さい秋みつけた》の調は嬰ヘ短調を選びました。声域がやや高いのですが、より曲想にふさわしいと判断しました。また《母》は竹久夢二の歌詞と美しく歌いやすい旋律が、高校生の心情にふさわしいと考え、選びました。
歌手 梅沢奈那美(うめざわ・ななみ)
上野学園大学短期大学部声楽専門にて、音楽療法士養成課程を修了して卒業。学友会長を務め、卒業時には石橋賞を受賞。東京藝術大学音楽学部声楽科に進学。第37回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール高校生の部第4位、第42回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール大学生の部第3位を受賞。これまでに細谷美直、増田のり子の各氏に師事。現在は東京藝術大学に在籍する傍ら、地元の合唱団にて補助講師として活動している。
歌手 町田芽吹(まちだ・めい)
西邑楽高等学校芸術科音楽コース声楽専攻卒業。上野学園大学短期大学部声楽専門にて、音楽療法士養成課程を修了して卒業。在学中、学内選抜の第32回定期演奏会、卒業演奏会に出演。第31回日本クラシック音楽コンクール全国大会出場。卒業後、ワタナベエンターテインメントカレッジを経て、現在シンガーソングライターとして都内を中心にライブ活動を行なう。POPから日本歌曲までのレパートリーによる、新しいライブのあり方を追求している。これまでに、細谷美直、小池静香、齊藤千花、深津素子の各氏に師事。
ピアニスト 安原 奏(やすはら・かなで)
東京音楽大学ピアノ専攻卒業。在学中、学内演奏会、成績優秀者による卒業演奏会に出演。卒業後、上野学園大学短期大学部ピアノ専門にて、音楽療法士養成課程を修了。学内選抜の定期演奏会や卒業演奏会に出演。平井美奈賞を受賞し卒業。PTNAピアノコンペティション全国大会入選、ショパン国際ピアノコンクールin ASIA全国大会銀賞、同アジア大会入選、新潟県音楽コンクール県知事賞、新潟ジュニアピアノコンクールD部門金賞、他多数受賞。これまでに井上あとむ、鈴木弘尚、長川晶子、藤井孝子、倉地恵子の各氏に師事。演奏の他、ピアノ・ソルフェージュ講師、音楽療法士として活動している。
【動画開発・監修】
開発・監修:細谷美直(上野学園短期大学教授)、内田有一(上野学園短期大学教授)
【制作スタッフ】
動画撮影・編集:彦坂僚太、吉田圭佑
レコーディング:2023年 於上野学園大学オーケストラスタジオ
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