動画で学ぼう!日本の歌のうたいかた#8 中学校で習う《浜辺の歌》《赤とんぼ》他
小、中、高校の音楽の授業で習う日本の歌を、児童生徒が動画で学習できるようにしたWeb教材の連載。日本語の美しい発声と発音を身につけましょう。音楽の先生はもちろん、大人の趣味やデイケアなどでも広くご活用ください。第8回は《浜辺の歌》《赤とんぼ》《夏の思い出》《荒城の月》《花》《花の街》《早春賦》の学びかたと教えかたです。
《浜辺の歌》林 古渓作詞/成田為三作曲
♪8分の6拍子に乗って、歌詞の表す情景を想像して歌いましょう。
♪旋律の特徴を生かして、歌詞の発音を工夫しましょう。
♪3番は詩の出版の際、無断で3番と4番の歌詞を合成してつくられたものです。作詞者は教科書に掲載される際、2番までの詩としました。このことから、日本の歌を受け継ぐ際に大切なことは何か、考えてみましょう。
【先生方へ】
8分の6拍子は、体を使って2拍子を感じとりながら歌うと効果的です。文語の歌詞の大意を生徒に伝え、情景を想像して歌唱するようにします。旋律の特徴をクレッシェンド、デクレッシェンドと関連させて理解し、特徴を生かして歌詞の発音を工夫させましょう。
3番を歌い、歌詞の無断改編、誤植など、日本の歌が抱えてきた問題から、文化の継承において大切なことを考える授業が展開できます。
《赤とんぼ》三木露風作詞/山田耕筰作曲
♪1番~4番で、現在を歌っているのは何番でしょう?
♪「夕やけ小やけの赤とんぼ」と「負われて見たのはいつの日か」の、それぞれの旋律の特徴を生かしながら歌詞の発音を工夫しましょう。
♪この歌が表す心情を端的に言葉に表してみましょう。
【先生方へ】
1番から3番までは回想です。姐やとの思い出と別れ、4番では、こうした変わりゆく人の営みとは対照的に、今も変わらない自然が描かれています。このように詩の読み方を理解させ、感動は自由にします。詩の内容理解では、情景を想像することと、詩に表れた心情を端的に言葉に表すことができれば、詩の内容を理解したといえます。
この曲は1部形式で一筆書きのような旋律です。この旋律を呼びかけとこたえを生かして表現を工夫する授業を展開できます。
《夏の思い出》江間章子作詞/中田喜直作曲
♪歌詞の表す情景を思い浮かべて歌いましょう。
♪「水芭蕉の花が 咲いている 夢みて咲いている 水の辺り」の休符と強弱、及びリズムの特徴を生かして、歌詞の発音を工夫しましょう。
♪《夏の思い出》は、戦後に音楽で人々の心を明るくしようとしたNHK「ラジオ歌謡」から生まれた曲です。このような曲は、他にどのようなものがあるでしょう?
【先生方へ】
「水芭蕉の花が 咲いている」は、休符と強弱の変化を生かし、続く「夢みて咲いている水の辺り」では、言葉のもつリズムを生かした言葉の発音を工夫できます。
教科書には尾瀬や水芭蕉、石楠花などの写真が載っています。これらは歌詞にある言葉の意味を説明する情報です。情景とは、歌詞から思い浮かべる想像の所産であり、写真は情報として扱いましょう。
《夏の思い出》は、敗戦後に人々の心を明るくするためのラジオ番組のためにつくられました。生活や社会における音楽の意味や役割について考える授業が展開できます。
《荒城の月》土井晩翠作詞/滝 廉太郎作曲
【原曲】
【山田耕筰編曲】
♪文語の歌詞の大意を理解し、情景を想像して歌いましょう。
♪1番~4番で、現在を歌っているのは何番でしょう?
♪山田耕筰は、無伴奏の原曲をピアノ伴奏による日本歌曲に編曲しました。原曲と比較してどのような違いがありますか?
【先生方へ】
1・2番では、華やかしき頃の回想、3・4番は荒れ果てた城の描写を通して、城の変容を対照的に表しています。この落差から、作者の荒れた城への思いがよりいっそう強く感じられでしょう。
原曲(無伴奏)、山田耕筰編曲を両方歌い比較することで、曲想と音楽の構造との関りを考える授業が展開できます。山田耕筰編曲は、三浦 環の海外での演奏会における日本歌曲のレパートリーとしてつくられたものです。
《花》武島羽衣作詞/滝 廉太郎作曲
♪3番にある「錦織りなす長堤に」は、2番にある桜と柳の色です。「見渡せば 柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける」という和歌を踏まえています。
♪16分休符を生かした旋律の特徴を理解し、歌詞の発音を工夫しましょう。
♪この曲は、日本初の合唱曲です(女声2部)。
【先生方へ】
この曲は歌詞から情景を想像することが容易です。素性法師の和歌である「見渡せば 柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける」の古典引用を理解することで、古文の学習につながります。
16分休符により、フレーズに軽快な感じがでます。その特徴を生かした発音の工夫をする授業が展開できます。
組歌『四季』には、《花》の他にも混声4部合唱の曲も含まれおり、正確には組歌『四季』が日本初の合唱曲となります。《花》は女声2部の重唱もしくは合唱であり、組歌『四季』で今も歌われているのは《花》だけですので、授業ではこの曲を日本初の合唱曲と呼ぶことができます。
《花の街》江間章子作詞/團 伊玖磨作曲
♪1~3番で、現実を描いているのは何番でしょう?
♪「駆けていったよ」は2回出てきます。どのような違いがありますか? 曲想の違いにふさわしい表現を工夫しましょう。
♪《花の街》は、どのような背景から生まれた曲ですか? 皆さんが好きな曲の背景を調べてみましょう。
【先生方へ】
作詞者によれば、1・2番は幻想の街とされています。つまり“ないものを見ている”のです。それにより、現実が描写された3番に表れている心情がより深く感じられます。「輪になって 輪になって 駆けていったよ」と「春よ 春よと 駆けていったよ」の二つの「駆けていったよ」に着目させ、対照的な表現を工夫する授業が展開できます。
音楽は、その時代の社会や文化を背景として成立しています。《花の街》の楽曲の背景を知ることで、生活や社会における音楽の意味や役割を考えることができます。
《早春賦》吉丸一昌作詞/中田 章作曲
♪詩はどのような心情を表しているでしょう?
♪「時にあらずと 声も立てず」の1回目と2回目の曲想は違います。強弱の変化に着目して発音を工夫しましょう。
♪この歌を通して、雪の積もる地域の人々の春を待つ思いを知ることができます。
【先生方へ】
信州安曇野の早春における、人々の春を待ち焦がれる心情を、生徒なりの言葉で表すことができれば、詩の内容を理解したと言えます。
この曲は2部形式で、aa’ba”のb「時にあらずと声も立てず」は音域が低いのですが、フォルテです。続くa”「時にあらずと 声も立てず」は上行形ですがp、ppです。ここに着目させて曲想にふさわしい表現を工夫する授業を展開します。
この歌を通して、雪の積もる地域の人々の春への思いを知ることができます。また同じ環境の地域の生徒たちは共感することでしょう。
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