インタビュー
2024.02.14
特集「家族と音楽」

HIMARI・吉田恭子対談~母娘としてヴァイオリニスト同士として自然体の関係

12歳のヴァイオリニストHIMARIさんと母で同じくヴァイオリニストの吉田恭子さん、インタビューで二人の親子関係に迫りました! HIMARIさんがヴァイオリンを始めたときのことや演奏活動への寄り添い方、家での練習についてなど、いろいろなエピソードが飛び出します。

取材・文
室田尚子
取材・文
室田尚子 音楽ライター

東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...

©Hitoshi Iwakiri
ヘアメイク:Rumiko Koike

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もし、一つ屋根の下で暮らす親子が共に同じ楽器の演奏者だったら、その親子関係は、一体どのようなものになるのでしょう。ライバル? 先生と生徒? それとも仲の良い共演者? ここに、そんなひと組の親子がいます。母・吉田恭子、ヴァイオリニスト。娘・HIMARI、ヴァイオリニスト。おふたりは一体どんな親子関係で、そしてどんなふうに音楽と向き合っているのでしょうか。恭子さんからみた幼い頃からこれまでのHIMARIさんのすがたや、おふたりの音楽との向き合い方について語っていただきました。

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誰と会っても変わらない、「等身大」で生きる娘

国内外の数々のコンクールですべて1位を獲得し“天才少女”と名高いHIMARIさんが、アメリカ・フィラデルフィアの名門カーティス音楽院に世界最年少の10歳で合格したのは2022年3月のこと。それ以前は「留学するにしても中学ぐらいからでいいのかな」と思っていたという恭子さんですが、世界のエリートを輩出するカーティス音楽院で学べるよう、共に渡米することに。

吉田恭子 入学してみたら日本人がひとりで、しかもまだ11歳でしたから、泣いて帰ってくることになるかもしれないと思って、小学校は一時休学の届けを出していきました。ところがHIMARIは全然平気で、ヴァイオリンを習っているアイダ・カヴァフィアン先生ともとても仲良しです。彼女を見ていると年齢や国籍は関係ない、そういう心配は必要なかったなと思っています。

HIMARI カーティスではヴァイオリンのレッスンのほかにオーケストラや室内楽のクラスもあって、いちばん忙しいときは1日11時間ぐらいヴァイオリンを弾いているんですが、それでも日本に帰りたいと思ったことはありません。日本の友だちは「日本のほうがご飯とか全然美味しいのに」って言いますけど、それも大丈夫(笑)。

HIMARI(ひまり)
2023年 モントリオール国際 MINI VIOLIN 2023にて「Public Award」受賞。
2011年生まれ、12歳。2022年 難関名門校・カーティス音楽院に最年少で合格。江副記念リクルート財団第52回奨学生。
リピンスキ・ヴィエニヤフスキ国際、グリュミオー国際、ポスタッキーニ国際コンクールなど出場した42のコンクールすべてで1位、またはそれを上回るGPを獲得。
これまでウラディーミル・スピヴァコフ、ケリー=リン・ウイルソン、小林研一郎、大友直人、広上淳一、秋山和慶などの指揮者、また国内外のオーケストラと多数共演。
原田幸一郎、小栗まち絵、アイダ・カヴァフィアンの各氏に師事。
使用楽器は1717年製ストラディヴァリウス「Hamma」を前澤友作氏より、弓は「宗次コレクション」より貸与されている。

吉田恭子(よしだ・きょうこ)
東京生まれ。桐朋学園大学音楽学部を卒業後、文化庁芸術家海外派遣研修生として、英国ギルドホール音楽院、米国マンハッタン音楽院へ留学。巨匠アーロン・ロザンドに師事。世界各国の音楽祭に参加。ニューヨークを拠点に多岐にわたる演奏活動を行ない、数々の賞を受賞。「研ぎ澄まされた感性や情感を楽器を通して偽りなく表現できるヴァイオリニスト」と絶賛される。
2001年、コロムビアミュージックエンタテインメントより2枚同時発売によるCDデビュー。全9作のアルバムをリリースし、音楽専門誌にて高く評価された。
これまでにアーロン・ロザンド、江藤俊哉、滝沢達也各氏に師事。全国各地でリサイタルを行なう他、さまざまなオーケストラとも共演。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者が中心となる「マスター・プレイヤーズ,ウィーン」等とも共演し、指揮者、共演者からも厚い信頼を寄せられている。
桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。

HIMARIさんを一言で表すなら「等身大」。小さい頃から「危ないことと人に迷惑をかけること以外は、基本的になんでもHIMARIの好きなようにやってもらってきた」という恭子さんですが、実はHIMARIさんがヴァイオリンを習うのはおすすめしなかったのだそう。

恭子 自分がヴァイオリニストですから、どれだけ大変な仕事かわかるじゃないですか。でも、3歳からおばあちゃんが私の使用していた小さいヴァイオリンを持ってきて近くの教室に連れていくようになり、私は最初は反対していたのですが、3か月ぐらいでバッハを弾き出してコンクールに出る、と。ならば、手の形だけはあとで直すのが大変なので、そこだけは見てあげようとなりました。

4歳でコンクールを受け始め、6歳で初めてオーケストラと共演。舞台の上ではさまざまなハプニングにあうことがありますが、まったく動じないHIMARIさんを見て、ようやく恭子さんも「演奏家に向いているかもしれない」と思うようになりました。現在、12歳。この春に小学校を卒業するHIMARIさんについて、恭子さんはこんなふうに表現してくれました。

恭子 私はコツコツと準備していないとダメなタイプですが、HIMARIは違います。もちろん計り知れない努力をしているのですが、そのときにやりたいと思ったことをやっていて、脳のビジョンが瞬時に違うところにいけるので、順応性が高く、特にコンサートの舞台でここがうまく弾けるかというような演奏についての緊張ないみたいです。このホールはどのあたりがいちばん響くのか、といったことは考えるようですが。よく寝て、起きた瞬間からマイペース。エネルギーにあふれているし、切り替えがものすごく早いです。

HIMARIさん最新の演奏動画
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番

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