パーソナルブランディング10のステップ(後編)
原田さんが提唱する「ブランディング」とは、これからの時代を生き抜くための羅針盤のようなもの。前回に引き続き、今回はさらに重要な5つのステップをご紹介します。
STEP6. Remember the 3 Cs of branding “Character”
3つのCを覚えておいて “個性”
3つめのCはキャラクター、個性です。他の人と違うところ、あなたのユニークなところ、個性をブランドにするわけですが、そのブランド自体も人格を持つのです。
「ドトールってこうだよね」っていうのがあるでしょう? ベローチェとは違う何か。雰囲気とか、ブランドとしての人格、人間性みたいなものがある。
ブランドの広告はその個性を訴求するわけ。たとえば今なら、Google PixelのTVコマーシャルで、ふわちゃんやのせりんといった多様性のある人たちが次々に出てきて楽しそうに話しているじゃない? それがGoogle Pixelのブランディングで、僕なんかGoogle Pixelを使っているから、それだけでうれしくなっちゃう。
こんなふうにユーザーをうれしくさせる、ファンに感情移入させるポイントは、sence of humor(ユーモアのセンス)だと思います。あなた自身のブランドを多くの人に受け入れてもらいたければ、ユーモアのセンスは必須でしょう。ただの笑いじゃなくて、洒落っ気のある笑いがユーモアです。
日本語だとなかなか説明できないのですが、エリザベス女王をイメージしてもらえばいいかもしれません。こんなエピソードがあります。エリザベス女王がバルモラル城の近くで観光客の女性2人とおしゃべりしたそうです。女王と気づかない観光客に「近くに住んでいるの?」と聞かれ、「住んでいるのはロンドンだけど近くに別荘があるの」と答えます。「じゃあ女王に会ったことはある?」と質問され、こんなふうに話しました。「私は会ったことはないけれど、(警備の人を指し)彼はありますよ」。エリザベス女王こそ、ユーモア溢れるキャラクターで世界中から愛されたかたです。
STEP7. Have a focus & Be genuine
集中して正真正銘であれ
genuineも日本語でなかなか説明できない言葉です。わざとらしくないこと。嘘がないこと。日本語だと、純正とか正真正銘と訳されるのかな。謙虚とは違う、控えめにするとか、へりくだるという意味ではないから。誠実、そう、自分に誠実にいること、正真正銘の自分でいること、そんな感じです。
ステップ6でユーモア豊かに個性を出してと言ったけれど、やりすぎると自分ではなくなるじゃない? 他の人と違うことを明確にするのだけど、本当の自分から離れてはいけない。どこかに冷静さを保たなければならない。そのバランスがgenuineかもしれません。
genuineでいるために、Have a focus、集中するのは自分のブランドだということです。他の人と違うことを意識するあまりに自分を見失ってしまったり、あるいは、すべての人に好かれたいとするあまりに空気を読んでしまう。それはgenuineではありません。正真正銘の自分でいるために、いつも、自分のブランドに集中することが大切です。周りを気にしている時点で集中していないってことじゃない? 時に人に嫌われることも恐れず正真正銘の自分でいる。決してブレない強さも大切です。
STEP8. Be ready to fail
失敗はするものと心得よ
失敗を恐れて行動しない人が多いけれど、失敗することより何もしないことのほうがずっと恐ろしい。これは、ウォルト・ディズニーの言葉です。彼ほどブランディングに成功した人はいないじゃない? 彼は、「若いときにたくさん失敗をした。失敗からたくさん学んだ。自分の快適ゾーンから踏み出して失敗をしないと決してブランディングに成功することはできない」と言っています。
僕も数えきれないほど失敗をしてきました。失敗したときに「よしっ。この失敗をポジティブに変えていく」と思えるかどうかです。自分の快適ゾーンから踏み出すというのは、僕がモットーにしている、Knock on the door(ドアをノックしろ)と同じ。いまの状況に甘んじないで、一歩踏みだす勇気が何より大切なのです。
だから、Don’t be afraid of failure(失敗を恐れるな)とは少し違います。「行動して失敗するかもしれないけれど、それを恐れない」というより、失敗は絶対に来るのです。一歩踏み出すことが冒険で、失敗の連続で、でも踏み出さないと決して成功はない。「絶対に失敗するけれど、その準備はできていますか」ということ。
だって、失敗するから成功がわかるのです。冷たい水を触ったことがあるから、温かい水がわかる。悲しみを味わったから、喜びがわかる。それと同じ。成功しているとわかるのは、失敗をしているから。失敗なんかしたことがないという人は成功者じゃない。ブランディングができていないということ。
ブランディングの成功ってパッと一瞬でできることじゃないから。失敗を繰り返して、気づいたら成功しているものだから。
STEP9. Live your brand
あなたのブランドを生きる
あなた自身が決めて日々高めているブランドと実際の自分を分けるのは、もはや難しいと思います。オンとオフを切り替えないと続けられないブランディングだったら、そのブランドはやめたほうがいい。常に、365日、24時間、そのブランドでいられるの? それが無理だったら、ステップ4、5、6に戻って、もう一度、見直してみてください。
商品のブランディングで考えてみるとわかります。AppleのスタッフがAndroidのスマホを持っていたり、G-SHOCKの腕時計をしていたら、どう思いますか。言っていることとやっていることがブレていること自体、ブランディングとしてはconsistency(一貫性)がないし、genuine(正真正銘)じゃない。
それに、SNSがさかんな今の時代、ブランドの自分と実際の自分を分けるメリットはまるでないですよね。次のステップにつながる話ですが、「○○さんに会ったらSNSと全然違った」と投稿されたら、ファンを減らすばかりか、ブランディングが崩れてしまいます。
あなたのブランドはあなたの見られたい自分なのだから、そのブランドを生きることで、なりたい自分になっていく側面もあるわけです。嘘がない自分のブランドを生きることでこそ、そのブランドはauthentic(本物)になり、organic(有機的)に成長し続けます。
STEP10. Let other people tell your story——Leave a legacy
あなたの物語は人から人へ語り継がれる
逆に「○○さんに会ったらSNSとおんなじ感じだった」と思われたら、それはとても強力なブランディングになります。結局いつの時代も人から人へのword to mouth(口コミ)が一番強い、究極のブランディングだからです。だから、他の人があなたを語る時どう語るか考えます。
あなたの名前、経歴は誰が語っても変わらないものかもしれません。でも、それ以外、あなたの印象、人となり、功績、評価、そのほうがあなたにとってずっと大きな物語なのです。あなたはどう語られるでしょう。あなたがいないところでも誰かが語る、あなたのこと。それが、Clarity(明確性)があって、Consistency(一貫性)があって、Character(個性)があって、genuine(正真正銘)であって、ステップ1から10までつながれば、それがブランディングの成功になるわけです。
師匠のロリン・マゼールがよく言っていたのは、指揮者として音楽をつくる前から、すでに楽屋から指揮台に歩いているところから、すべて見られてジャッジされているんだよということ。だから僕はリハーサルでもよくジャケットを着ています。ネクタイをしていることも多いです。
人から人へ語り継がれるブランドというのは、コンサートホールのロビーだけの話ではなく、時空を超えて語り継がれるあなたの物語になります。
あなたはどういうふうに世に覚えてもらいたいですか。
日時: 2023年5月15日(月)19:00開演
会場: 東京オペラシティ・コンサートホール
曲目: 城代悠子/《IKUSA》、萩森英明/《東京夜想曲》、松井琉成/交響詩《うつしがたり〈翠〉》、山田竜雅/《祈り》~女声と管弦楽のための~
共演: 藤岡幸夫(指揮)、山田和樹(指揮)、鈴木優人(指揮)、安江陽奈子(ソプラノ)、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、愛知室内オーケストラ
料金: 全席指定5,000円
詳しくはこちら
日時: 2023年5月27日(土)15:00開演
会場: アクリエひめじ 大ホール
曲目: 小田実結子/夜明け(Dawn)、上田素生/あまやどり-Listen to the rain-(世界初演)、マイク・モウワー/フルートと吹奏楽のための協奏曲、G.ホルスト/組曲《惑星》より、J.ウィリアムズ/『スター・ウォーズ』より、ほか
共演: 神田寛明(フルート)、播磨国吹奏楽団
料金: 一般3,000円、高校生以下1,000円
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日時: 2023年5月28日(日)14:00開演
会場: ハーモニーホールふくい大ホール
曲目: 同上
共演: 神田寛明(フルート)、石丸由佳(オルガン)、播磨国吹奏楽団
料金: 全席指定、車いす席4,000円、※小~大学生半額
詳しくはこちら
日時: 2023年6月11日(日)15:00開演
会場: 宇治市文化センター 大ホール
曲目: 小田実結子/生まれかわりの旅~出羽の山々に思いを馳せて~、シベリウス/フィンランディア、シューマン/流浪の民、ヴェルディ/歌劇《アイーダ》から「凱旋行進曲」、ビゼー/《アルルの女》第2組曲、ヘンデル/オラトリオ《メサイア》から「ハレルヤコーラス」、ジョン・ウィリアムズ/『スター・ウォーズ』組曲から「メインテーマ」、「ダースベイダーのテーマ」、「運命の戦い」
共演: 大阪交響楽団
料金: 全席指定、1枚3,000円、ペア5,000円
詳しくはこちら
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