渡辺真弓のバレエに恋して 第7幕

2019年はブーム? インドを舞台に悲劇の三角関係を描いたバレエ《ラ・バヤデール》

読みもの
2019.02.24

プリンセスが主役になることが多いバレエですが、ミンクス作曲《ラ・バヤデール》の主役はインドの舞姫、王に使える踊り子です。

3月2日から10日に新国立劇場バレエ、3月27日にはボリショイ・バレエ in シネマで上映もされる《ラ・バヤデール》は、お姫さまと王子さまの夢物語ではなく、インドを舞台に生身の人間が繰り広げる悲劇の三角関係。渡辺真弓さんが見どころを紹介してくれました。

この記事をシェアする
ソロルを巡って、恋の火花を散らすニキヤ(右:小野絢子)とガムザッティ(左:米沢唯)©瀬戸秀美 提供:新国立劇場
渡辺真弓 舞踊評論家、放送大学ほかで非常勤講師
渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家、放送大学ほかで非常勤講師
10歳でバレエを習う。舞踊史家の薄井憲二氏に触発され、舞踊史に興味を持つ。お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊の実技と理論を学ぶ。オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経て...

今年は、新春からバレエ《ラ・バヤデール》がちょっとしたブームである。

1月初めの谷桃子バレエ団に続いて、既報の通り、「英国ロイヤル・オペラハウス・シネマ」で、英国ロイヤル・バレエの重厚なマカロワ版の上映があり、3月2日から10日まで新国立劇場バレエ団が《ラ・バヤデール》上演、3月27日(水)には「ボリショイ・バレエinシネマ」でボリショイ・バレエの最新映像を上映する。

ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2018–2019《ラ・バヤデール》の告知映像

主人公が非プリンセスだからこそ溢れるリアリティ

バレエと言えば、古今東西、チャイコフスキーの三大バレエが圧倒的な人気を誇っているが、お勧めしたいバレエはたくさんある。今回は、古代インドを舞台にしたミンクス作曲《ラ・バヤデール》の見どころをご紹介しよう。エキゾティックな表題は、バレエのヒロインである寺院に仕える舞姫を指し、ロシア語では『バヤデルカ』と表記される。

物語は主人公の舞姫ニキヤと、その恋人の騎士ソロルの身分違いの恋に、ソロルの婚約者ガムザッティと、神に仕える身でありながらニキヤに横恋慕する大僧正が絡んでいくもので、2つの三角関係のもつれ合いがドラマを一層劇的に盛り上げる。ガムザッティの陰謀で、ニキヤは毒蛇に噛まれて死に、悲劇へと急展開。ニキヤは精霊となり、「影の王国」でソロルと再会する。

登場人物たちは、おとぎ話の世界のプリンセスやプリンスとは異なり、生身の人間として描かれている。演じる側にとっても、見る側にとってもリアリティがあり、そこがこのバレエの魅力でもある。

第2幕ガムザッティとソロルの婚約披露宴の場面では古典バレエの様式美がたっぷりと堪能できる。©瀬戸秀美 提供:新国立劇場

象、毒蛇、扇に阿片...... 魅惑のエキゾチックバレエ

初演は1877年2月のサンクトペテルブルク。チャイコフスキーの《白鳥の湖》がモスクワで初演される一ヶ月前のことである。こちらが評判が芳しくなかったと言われたのに対し、《ラ・バヤデール》の方は、ロシアで活躍したフランスの巨匠マリウス・プティパの振付けで大成功を収めた。

インドを舞台にしたバレエは珍しく、ヒンズー教の寺院に、黄金の仏像、虎、象、毒蛇、オウム、扇子、壷、ヴェール、阿片、ヒマラヤ……と舞台にはインドの風物詩が溢れている。一方、「影の王国」では一転して、純白の衣裳を身に着けた精霊たちの「白いバレエ」の世界が出現。このように、好対照の美を味わえるのが、この作品の魅力だろう。

最大の見せ場は、精霊たちが何度もアラベスク(片方の脚で立ち、もう一方の脚を上げる、バレエのなかで最も美しいポーズのひとつ。遠くに伸びて行く様が「唐草模様」を思わせることから命名されたと言われる)を繰り返しながら、ヒマラヤの山からジグザグに舞い降りてくる幻想的な場面。とりわけ先頭のダンサーは39回も同じポーズを繰り返すので、踊る側にとっては重労働と言えるが、一糸乱れぬ群舞は、そんな労苦を忘れさせるほど美しい。

ちなみにこの場面のアイディアは、ギュスターヴ・ドレの描いたダンテの「神曲」天国篇の挿絵に由来すると言われ、プティパ、イワーノフ版の『白鳥の湖』(1895年初演)の白鳥たちが登場する振付けにも踏襲されている。

19世紀フランスの画家、版画家ギュスターヴ・ドレ(1832-1883)作『天国のダンテとベアトリス』
第3幕「影の王国」は、このバレエの白眉とも言える名場面。ソロルの夢の中に舞姫たちの幻影が現れ、上体を傾けたアラベスクが幻想的な雰囲気を醸し出す。©︎瀬戸秀美 提供:新国立劇場

ほかにもニキヤとガムザッティの女性同士の対決をはじめ、ニキヤが花籠に仕組まれた毒蛇に噛まれて落命するシーン、ニキヤの精霊への変身ぶり、結末の神殿崩しなど見どころにこと欠かない。

映画と舞台で楽しめる《ラ・バヤデール》

「ボリショイ・バレエinシネマ」、新国立劇場バレエ団と、それぞれ演出が異なり、ダンサーの解釈にも違いがあるので、比較してみるのもいいだろう。

新国立劇場バレエ団の公演では、ニキヤ、ソロル、ガムザッティに3通りの組み合わせが予定され、三者三様の魅力に酔わせてくれそうなので、どの日を観に行こうか迷ってしまう。

注目は、プリンシパルの米沢唯が、ニキヤとガムザッティの二役を演じることで、どのように演じ分けてくれるのかが大きな見どころとなるだろう。

第3幕「影の王国」におけるニキヤ(米沢唯)とソロル(福岡雄大)。©︎瀬戸秀美 提供:新国立劇場
新国立劇場バレエ
《ラ・バヤデール》
日時: 2019年3月2日(土)~10日(日)
会場: 新国立劇場オペラパレス
指揮: アレクセイ・バクラン
演奏: 東京交響楽団
 
出演:
3月2日(土)14:00~
小野絢子(ニキヤ)、福岡雄大(ソロル)、米沢 唯(ガムザッティ)
3月3日(日)14:00~
米沢 唯(ニキヤ)、井澤 駿(ソロル)、木村優里(ガムザッティ)
3月9日(土)13:00~
柴山紗帆(ニキヤ)、渡邊峻郁(ソロル)、渡辺与布(ガムザッティ)
3月9日(土)18:00~
小野絢子(ニキヤ)、福岡雄大(ソロル)、米沢 唯(ガムザッティ)
3月10日(日)14:00~
米沢 唯(ニキヤ)、井澤 駿(ソロル)、木村優里(ガムザッティ)
ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2018–2019
《ラ・バヤデール 》

日時: 2018年3月27日(水) 19:15開演

料金: 全席指定 大人3,600円(税込)学生2,500円(税込)

場所: 全国18箇所の映画館

北海道:ユナイテッド・シネマ札幌
宮城県:OHOシネマズ 仙台
東京都:TOHOシネマズ 日本橋、TOHOシネマズ 新宿、T・ジョイ PRINCE 品川、109シネマズ二子玉川、TOHOシネマズ 府中
神奈川県:横浜ブルク13、TOHOシネマズ 川崎
千葉県:シネマイクスピアリ
埼玉県:ユナイテッド・シネマ浦和
新潟県:ユナイテッド・シネマ新潟
愛知県:ミッドランド スクエア シネマ
大阪府:大阪ステーションシティシネマ
京都府:MOVIX京都
兵庫県:神戸国際松竹
岡山県:TOHOシネマズ 岡南
福岡県:T・ジョイ博多
熊本県:ユナイテッド・シネマ熊本

ツイートする
シェアする

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ