2014年から毎年10月に開催のライヴマジックの第10回目 聴きどころ満載な出演陣の音楽の楽しさを聴いて欲しい
ラジオのように! 心に沁みる音楽、今聴くべき音楽を書き綴る。
Stereo×WebマガジンONTOMO連携企画として、ピーター・バラカンさんの「自分の好きな音楽をみんなにも聴かせたい!」という情熱溢れる連載をアーカイブ掲載します。
●アーティスト名、地名などは筆者の発音通りに表記しています。
●本記事は『Stereo』2023年9月号に掲載されたものです。
ロン ドン大学卒業後来日、日本の音楽系出版社やYMOのマネッジメントを経て音楽系のキャスターとなる。以後テレビやFMで活躍中。また多くの書籍の執筆や、音楽イヘ...
ここまで来られただけ奇跡といえるイベント
今回は一種の自己宣伝になるので恐縮ですが、今年のLive Magicについて書かせてください。ぼくがキュレイターを務めているこのフェスティヴァルは2014年から毎年10月に開催しています。
コロナ禍のため2020年と2021年は配信の形をとらざるを得ず、去年は縮小規模でしたが、今年は4年ぶりに本来の2日間の開催です。
日程は10月21、22日、場所はいつもと同じ恵比寿カーデンプレイスのザ・ガーデンホール&ルーム。詳細はこちらでご覧いただければと思います。
今年は10回目の開催です。正直言ってここまで来られただけでも奇跡のようなものだと思っています。会場の規模を考えると誰でも知っている有名なアーティストを招聘することは無理です。それはどっちみち他のところで呼ばれるのでいいですが、安定した形でフェスティヴァルを存続させるにはどうしてもチケット代だけではハードルが高く、何らかの協力が不可欠です。もしこのコラムを読んでいる方で何か名案があればいつでも大歓迎です。
ニュー・オーリンズを代表する実力派ジョン・クリアリーも出演
今年は初回の2014年と2018年とすでに2回出演してもらっているジョン・クリアリーを5年ぶりに呼ぶことにしました。日本でまだ知る人ぞ知るミュージシャンですが、イギリス生まれの彼が40年以上拠点としているニュー・オーリンズを代表すると言っていいほどの実力と人気を誇るピアニスト、シンガー、ソングライター、バンド・リーダーです。
©︎Rune Lundø
彼がFHQという自分のレーベルから発表してきた6枚のアルバムから選曲した『New Kinda Groove ~ The Jon Cleary Collection』という一種のベスト集が初の純国内盤として8月23日にソニーから発売されます。これまで入手困難だったEPの4曲、そいてアメリカではアナログのシングル盤だけで出した2曲も収録した全16曲の中身は実に素晴らしいものです。ついでにぼくの解説を読んでいただければジョンに関するいろいろなことが分かります。
ニュー・オーリンズのピアニストといえば有名なところではプロフェサー・ロングヘア、アラン・トゥーサント、ドクター・ジョン、ジェイムズ・ブカー、ヒュウィ・スミスなどの名前がすぐに浮かびますが、ジョンが18歳でニュー・オーリンズに渡った1981年にすでに他界していたロングヘア以外は、長年近距離で接してその技を吸収し、全員があの世へ出発した今では、彼らのれっきとした後継者となっています。
実はジョンは元々ピアノではなく、ギターを弾いていました。ニュー・オーリンズに住むようになってからピアニストに「転職」したわけですが、今でもギターを弾くことがあって、これがまた非常にカッコいいです。『New Kinda Groove ~ The Jon Cleary Collection』にも収録されている「21st Century Gypsy Singing Lover Man」という曲はジョンが90年代にタージ・マハールのバンドで演奏している時に作った曲ですが、2018年の自分のアルバム『Dyna-Mite』で演奏し、その年のLive Magicで歌った時のギターにはしびれました。その演奏を収めたDVD『Jon Cleary Trio with Nigel Hall-Live in Tokyo, October 21st 2018』を見ればきっと皆さんも同じようにしびれるのではないかと思います。
今回の来日メンバーはここ数年ずっとジョンと活動を共にしているベイスのコーネル・ウィリアムズとドラムズのA.J.ホール、そしてゲストとしてパーカショニストのペドロ・セグンドです。ニュー・オーリンズ特有のファンキーなノリに加えて、もしかしたらラテン風味も加わるのではないかと期待しています。とにかくゴキゲンな演奏と歌を繰り広げる人ですから、この機会をくれぐれも逃さず見ていただきたいものです。
Live Magicでは時々Live Magic Extraという地方公演を行なうこともあり、今年は10月25日(水)に富山のオーバード・ホール中ホールで開催します。出演者はジョン・クリアリーとドス・オリエンタレスの2組です。こちらのジョンはバンドではなく、ソロ・ピアノの弾き語りです。前述のDVDでもピアノ・ソロの曲もフィーチャーされ、YouTubeでも、Jon Cleary Live Magicで検索すれば2曲見られます。
バンドの時とも違った魅力がジョンのソロ演奏にもあり、今回の来日では富山だけでしか味わえないので、見られる方はぜひ見てください。
元ちとせを筆頭に個性的な出演陣。そして魅力的なフーズや飲み物も
今年のLive Magicもいつものように個性的なライン・アップです。バスク地方のユニークな打楽器チャラパルタを演奏するOreka TX、ウルグアイの大物キーボード奏者ウーゴ・ファトルーソと日本の打楽器奏者ヤヒロトモヒロによるドス・オリエンタレス、ここ数年ヨーロッパのフェスティヴァルで大人気の民謡クルセイダーズ、1回目から欠かさず毎回絶妙なアクースティック・ギターの演奏と変則チューニングを整える間に展開する早口の和歌山弁のおしゃべりでファンを喜ばせる濱口祐自などなど。
©︎GALDER IZAGIRRE
今回は元ちとせに奄美大島の民謡に挑んでいただき、また宮古島の4人の女性によるMiuniが登場します。以前Myahk Song Bookというデュオで出演した時、涙が出るほど感激する人が多かった與那城美和(唄、三線)を中心に同じく唄三線の川満七重、ピアノの池村綾野、サックスの池村真理野というやや異色な編成ながら、とても充実した宮古民謡の新たな解釈が聴けるグループです。
右: Miuni
Live Magicをまだ経験していない方、ナチュラル・ワインやクラフト・ビール、ニュー・オリンズのガンボ、イスラエルのファラフェルなどの気の利いた料理、手作りのケーキやクッキーなど、独自の雰囲気をゆったりと楽しめるフェスです。
恵比寿でお待ちしています。
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