読みもの
2019.05.08
5月特集「ブルー」

五月病のメカニズムと音楽——ストレスと上手に付き合うには?

夢のような10連休も終わり、お仕事モード、勉強モードに切り換えるタイミング。でも気分が乗らない。心は果てしなくブルー。
俗に言う「五月病」と上手く付き合うには? そもそもなんで五月病になってしまうの?
五月病のメカニズムと、音楽の関係について、精神科医の視点からお話いただきました。

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のぐぴょん
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のぐぴょん 精神科医

精神科医、医学博士。診療所の副院長や大学の兼任講師などをしている。 多くの人に精神科領域への興味をもってもらいたいとの思いがあり、診療業務の傍ら、市民講座やブログの執...

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長かったゴールデンウィークも終わり。この記事が公開される頃、学校や仕事にいくのが面倒くさいと感じている人も多いことと思います。
ということで、今回は「五月病と音楽」というテーマで、精神科医の視点からお話を書いてみます。

五月病とは?

そもそも五月病とは何なのでしょう? 新年度の環境変化などでストレスがたまっていき、その状況が続くことで心身の不調が出てきてしまい、それが五月ごろに表面化してくることから「五月病」という俗称がついたようです。

やる気がでない、気持ちが沈む、だるい、眠れない、おなかがいたい、めまいがするetc. 症状は個人差があり多様で、気分の面に強く出る人もいれば、体に強く出る人もいます。
軽度であれば、なだめなだめやっているうちに自然と良くなっていく場合も多いですが、症状が強くなってくると社会生活に支障が出てしまいます。その場合は、精神科・心療内科などでの治療が必要となってきます。

精神疾患としての診断は、いくつか当てはまりうるのですが、その中でも「適応障害」の診断となることが多いと思います。
適応障害のポイントは、ストレスの原因が取り除かれると、比較的すみやかに症状がよくなることです。ですので、ゴールデンウィークの中盤までは元気だったのに、終わり頃、またはゴールデンウィークが終わってから症状が出てくるパターンとなります。

逆に、4月から気分が沈み始めていて、ゴールデンウィークになっても一向に良くならず、休みもほぼ楽しめなかった……と言う場合は「うつ病」を疑います。

適応障害、うつ病ともに、治療は休息とストレスの軽減が最重要です。
適応障害の場合は、ストレスとなる環境の調整や適応力を高めるために、アドバイスなどを行うことが多く、薬物療法はあくまで補助。対してうつ病は、軽度の場合を除き、抗うつ薬による薬物療法が大切になっていきます。

ここから先は「適応障害」を前提にお話をしていきます。

ストレスは「イン・アウト」のバランスが大切

人間の体はストレスがたまった状態が続くと、脳、自律神経などのバランスが崩れだします(この仕組みについては本題でないのでスルッと流します)。

かかってくるストレスを、処理または発散して、「イン・アウト」のバランスがとれていればいいのですが、うまくバランスがとれないとストレスはどんどん蓄積していきます。
五月病で考えると、新しい環境、対人関係が「イン」に当たるので、環境へ適応していく、環境の調整をしていくことでストレスを減らします。
音楽鑑賞は、上手くストレスを逃がせられない人でも気軽にできる、ストレス軽減のツールになり得るのではないでしょうか。

音楽によるストレス軽減――どんな音楽が効率的なのか?

音楽を聴くことでストレスが和らいだ経験は、多くの人があると思います。

では、どんな音楽がストレス軽減に効率的なのでしょうか?
やはり、世で言うヒーリングミュージックが一番?

筆者は大学院生のときに音楽と心の関係を研究していました。その時に調べてみた結果……そこには驚愕の事実が!?

音楽によるストレス軽減の評価については、主観的評価(アンケート等)の他、コルチゾールというホルモン濃度の推移などを測定する方法があります。
複数の論文からわかったことを大雑把にまとめると「自分のそのとき聴きたい音楽がよい」と。なるほど……。

考えてみたら、私も若手の頃、仕事でむしゃくしゃすると、帰り道は椎名林檎をガンガンにかけていたし、そういうときにヒーリング音楽を聴こうとは思わなかったかも。

例として、タイプの全く違う3曲を用意してみました。
読者のみなさんが今聴きたいのは、どんな1曲でしょうか?

ということで、ストレスを和らげるためには、必ずしもゆったりした音楽を聴く必要はありません。自分がいいなと思う音楽を聴きましょう。
また音楽を楽しむスタイルもそれぞれでOKなのでは? 部屋でしっとりと鑑賞するもよし。一人カラオケや、ロックのライブで騒いじゃうのもあり。

私は短時間のストレス発散として、仕事後のライブ鑑賞を楽しんでいます。最近はもっぱらアイドルです。

自己肯定感の傷つき

最後に、五月病になる大きな理由のひとつとして「自己肯定感の傷つき」の問題があると考えています。「自分はダメな奴だ」と思う人もいれば「こんなはずじゃなかった」と思う人もいるでしょう。広い意味での自信喪失ととらえてください。

これね、続くとしんどいんですよ。職場や学校でうまくいかないと、どんどん自分が嫌になっていく。でもね、まぁダメなとこもあるのかもしれないけど、客観的に見てみると、すべてのことが絶望的にダメなことって、ゼロとは言わないけれど、ほんとに稀なんです。職場や学校がダメなら、それ以外に自分の価値を見出してもいいかもしれません。

だから、常日頃から自分のありのままの姿に対して、いいところも見つける癖をつけておくことをお勧めします。自分には、いいところも悪いところもある。何かうまくいかないことができても、全部がダメなわけではないのです。

最後の一曲は、私の通うアイドル現場より。
動員人数一桁の地底から自分を信じて這い上がってきたアイドルが、とあるテレビ番組で生き方に悩む芸人さんに作った曲。

私からこの記事で最後のメッセージは「自分のことをダメだダメだと思いすぎないであげてね!」ということでした。

あとは、思い悩んだり、不調が続いたりするときは気軽に精神科にも行ってみてください。きっと怖いところではないです。ではでは。

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のぐぴょん
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のぐぴょん 精神科医

精神科医、医学博士。診療所の副院長や大学の兼任講師などをしている。 多くの人に精神科領域への興味をもってもらいたいとの思いがあり、診療業務の傍ら、市民講座やブログの執...

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