バッハ演奏の大家2人にきく!《ヨハネ受難曲》と《マタイ受難曲》の魅力
バッハを深掘りするならまず聴いておきたい、鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンと、シギスヴァルト・クイケン率いるラ・プティット・バンド。「音楽の友」2020年10月号に掲載しているこの代表2人のインタビューを特別にちら見せ。
バッハの受難曲を楽しむためのヒントと、動画や音源を紹介します。
1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
教理的な《ヨハネ》と瞑想的な《マタイ》
バッハによる2つの受難曲、《ヨハネ》と《マタイ》。同じ受難曲ですが、どのような特徴があるのでしょうか?
「音楽の友」2020年10月号で掲載しているバッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明さんのインタビューの一部を紹介します。
音楽の観点から言えば、《ヨハネ》は《マタイ》よりも合唱の部分が多く、逆にソロの部分は少ないです。アリアの主体は「私」で、その内容は信仰にまつわる個人的な発言ですから、これは瞑想的な内容です。その瞑想的な内容が少ないということは、教会において客観的な内容、要するにドグマティック(教理的)な面が強いと言えます。つまり「教理を告知する」ことが、主眼になっているということです。これは、おそらく《ヨハネ》がもとづいているヨハネ福音書の神学から来ているのだと思います
「音楽の友」2020年10月号54ページより
《マタイ》では、一人称による瞑想的な内容であるコラールやアリアが、非常に重要になってきます。イエス・キリストが十字架へと至る道を、罪人である私たち人間が瞑想的に追体験することで、少しでも私たちの罪が救われるようになりたいと、そういう信仰的な教育のための作品なのです
「音楽の友」2020年10月号55ページより
《ヨハネ》と《マタイ》の音楽に見られる違いは、“受難”を表すクライマックスの十字架のシーンの描き方にも表れているそう。どのように異なり、この違いが何に由来するのか、本誌では詳しく語られています。
バッハ・コレギウム・ジャパンによる《ヨハネ受難曲》
バッハ・コレギウム・ジャパンによる《マタイ受難曲》
巨匠クイケンが語る《マタイ受難曲》の楽しみ方
バロック・ヴァイオリン奏法のパイオニアであり、古楽オーケストラ「ラ・プティット・バンド」の指揮者でもあるシギスヴァルト・クイケン。「音楽の友」のインタビューで、《マタイ受難曲》について深掘りしているなか、「日本に住む日本人。どうやって《マタイ》を楽しみましょうか?」という質問に対して、巨匠はこう答えます。
どうぞお好きなように。私ごときに“音楽はどうやって楽しむべきだ”なんて言える立場ではありません。私はマスターでもなんでもないし……。そして、《マタイ》は純粋に音楽だけ聴いても、美しいのは確かです。
「音楽の友」2020年10月号65ページ「シギスヴァルト・クイケン——《マタイ受難曲》への情熱と、演奏にかける想い」より
《マタイ受難曲》より第27曲「こうしてイエスは捕らえられた」
シギスヴァルト・クイケン指揮/ ラ・プティット・バンド
《マタイ受難曲》シギスヴァルト・クイケン指揮/ ラ・プティット・バンド
また、クイケンは《ヨハネ受難曲》について、「この受難曲も私のお気に入りで、いくつかのアリアを聴くと、別世界に連れていってくれる感覚を覚えます」と語っています。
《ヨハネ受難曲》シギスヴァルト・クイケン指揮/ ラ・プティット・バンド
純粋に音楽だけ聴いても美しいバッハの音楽。楽しみ方は十人十色ということで、難しそうだというイメージを抱いていた方も、ぜひこの機会に鑑賞してみては。
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