音楽を仕事にするフリーランスの方は必読! 確定申告事情とインボイス制度のポイント
今年度も確定申告の時期が近づいてきました。今年は申告用紙が変更になったり、最近話題の「インボイス制度」もあり、年ごとに更新される情報を取りこぼして損したくない! そんな思いから、音楽之友社書籍課スタッフのKが、音大生や音楽家のための確定申告・税金ガイド『オンカク』の著者であり、自身も現役音大聴講生という異色の肩書を持つ税理士の栗原邦夫さんに直撃! 近年の確定申告事情や主要なトピックについて聞いてみました。
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さあ、いよいよ今年度も確定申告の時期(2023年2月16日~3月15日)が近づいてきました。溜まった領収書の整理や帳簿付け……と考えただけで面倒に感じる方も多いのでは?
今回お話をうかがったのは、音大生や音楽家のための確定申告・税金ガイド『オンカク』の著者であり、自身も現役音大聴講生という異色の肩書を持つ税理士・栗原邦夫さん(以下、くりさん)。
くりさんといえば、コロナ禍での支援金や助成金について解説したYouTubeも話題となり、助けられた音楽家の方も多いはず。ほかにもセミナーやLINE(なんとこれまでのべ20万チャット!)を通じて確定申告などのアドバイスをされています。
実は書籍課スタッフKも昨年、『オンカク』を見ながら確定申告をし(「初めて確定申告をやってみた。」)、思ったより還付金が多くて大喜び!!
そして今年は「去年もやったし余裕~」と構えていたのですが、『オンカク【2023改訂版】』をみてびっくり。申告用紙が変更になっていたのです。
年々更新される情報を取りこぼして損したくない! そんな思いから、くりさんに近年の確定申告事情や最近話題の「インボイス制度」をはじめとする主要なトピックについて聞いてみました。
確定申告のルールは人知れず変わる
――今年の『オンカク【2023改訂版】』を見たら、昨年までと申告用紙が変わっていましたね。ちゃんと毎年の変更点をチェックしてないと、間違って申告したり損してしまうんじゃないかと、少し焦ってしまいました。
くりさん 申告用紙は今年からAとBの区分がなくなって一本化されることになったんだ。セミナーなんかをやってると、「あそこ変更になったんですかー? 全然知らなかったです」なんておっしゃる方は結構いるよ。確定申告のルールって、人知れず変わっちゃうんだよね。
――例えば、近年でいうと基礎控除(※)が38万円から48万円に引き上げられたり、青色申告の控除額が追加されたりしましたよね。
※確定申告をするときに、所得のなかから誰でも引くことができる。令和2年分の申告から変更になった。
くりさん そうだね。『オンカク』では青色申告をオススメしているんだけど(青色申告のメリットについては40ページからを参考にしてみてね)、もともとは10万円と65万円だけだった控除額が、令和2年分の申告からは55万円も追加されたんだ。ただ、それぞれ金額によって条件が異なるから気をつけよう。
税理士法人クリアー代表、元オスカープロモーション所属、東京音楽大学にてガムランと指揮科の聴講生。税理士として開業、異例の成長を遂げる。その手法を、全国規模の講演・セミナーにて伝授するかたわら、東京音大にてジャワガムランを受講。そこで相談を受けた音大生たちとともに、音大生・音楽家向け確定申告講座「オンカク®」を立ち上げる。オスカープロモーションにも認められた、面白くてわかりやすいプレゼンテーションは、音大生や音楽家たちに好評を博す。2020年のコロナウイルス禍には、音楽家向けに、各種給付金や補助金の情報発信と相談窓口を開設。LINE@相談のやり取りは20万チャットを超え、支給された給付金などは1000件を超える。
あと、もうひとつよく質問されるのが扶養控除。自分は控除されると思っていても実際は控除できなくて、税務署から通知が来てびっくりする、なんてことが起こりやすいんだ。
――『オンカク』でも、主人公であるりさの友達のマキちゃんが困っている場面がありますよね。
くりさん そうそう。そしてこれも実際の相談でよくあるんだけど、「基礎控除の欄に38万円って書いて提出して、税務署から連絡来ちゃいました……どうしたらいいですか?」ってやつ。
『オンカク』の中でマキちゃんは親子げんかになりかけてたけど(笑)、これは単に書き間違いだから、法律違反でもないし、必要以上にビビることはないよ。大事なのは、知っておけば損せずにすむことがとても多いってことと、嫌な思いをすることもなくなるってことだね。
「インボイス制度」、音楽家はどうすべき?
――まだ「インボイス」と聞いて「何それ???」となってしまう人も多いかもしれません。そんな人のためにざっくりこの制度について教えてもらえますか?
くりさん インボイス制度っていうのはまず、消費税に関する制度ってことね。確定申告は所得税に関するものだから、この違いを押さえておこう(消費税の話や基本的な仕組みは『オンカク【2023改訂版】』の19ページからを参考にしてみるといいよ)。
あまり実感がないと思うんだけど、実は商品を販売する売り手は税務署に消費税を納めていてね。その時の消費税計算に「仕入税額控除」というのが適応されるんだけど、インボイス制度が始まったら条件を満たしていないと控除できなくなってしまうんだ。
――2023年10月から施行されるんですよね。フリーランスには具体的にどのようなことが求められているのでしょうか?
くりさん さっきの「条件」というのは、仕入先から一定の基準を満たした請求書(インボイス)が必要になるんだけど、それは消費税課税事業者(登録が必要)でないと発行できなくてさ。
だからフリーランスの人に求められていることとしては、インボイスを発行するために消費税課税事業者になるかどうかの選択をするということだね。
――じゃあ、フリーの音楽家の方はみんないますぐ登録申請したほうがいい?
くりさん:それがこの制度の複雑なところのひとつでね、そうとも限らないんだ。
消費税課税事業者になるための申請をすることへの影響の大きさはひとりひとりの状況によって異なるんだよね。実際、俺のところにも自分で音楽教室を営んでいらっしゃる方から「私ってインボイス制度の影響ありますか?」という相談があったよ。どんな人と支払いや請求のやりとりがあるか詳しく聞いてみたら、インボイスを発行する必要がないことがわかったんだ。
定価:1,540円 (本体1,400円+税)
――私もインボイス制度についていろいろ調べてみたんですけど、専門用語が多くて……「課税事業者」に対して「免税事業者」とか、あと「原則課税」や「簡易課税」、それらを理解しようとするだけで疲れちゃいました(苦笑)。
くりさん 確かに難しい用語が多くて最初は大変かもね。でもインボイス制度の場合、何が損で何が得かはみんな同じではないから、これから考える人はまずは説明を読んでみて少しでも理解するところからはじめてみる、でいいんじゃないかな。
そのうえで、自分への影響を考えて具体的な行動に移していこう。『オンカク【2023改訂版】』ではそういった用語を含め、インボイス制度についてわかりやすく解説しているからぜひチェックしてみてほしいな。
音楽家は税金ともうまく付き合える!?
――いろいろ変わるといえば、ネット上で申告できるe-Taxなんかも年々進化していますよね。私ももう少し慣れたらチャレンジしてみようと思っています。
くりさん 確定申告のデジタル化、進んでるよね~。俺のオススメは、すべての用紙がまとめてみられるから、手書きのほうなんだけどね。特に初めての人やあまり慣れていない人はこっちのほうがいいと思う。
ただ、慣れてきた人は、青色申告の65万円控除の条件にもなったりしているし、より高い控除額を希望するのであれば、挑戦してみるのも手かもしれないね。e-Taxはカードリーダライタやマイナンバーカードが必要だったり、やり方も複数あったりするから手順をよく確認してみよう。
――最後に、確定申告が苦手だったり、インボイス制度への不安を感じているという方に向けてメッセージをお願いします!
くりさん 音楽家の方と接してきて思うのは、現状を分析して今後の行動に移していくのが得意な人がほんとに多いってこと。楽器の練習でも、どうやったらもっとよくなるかを考えながら進めていくよね。
特にインボイス制度のことについても同じで、例え知らないことがあっても、知識を蓄えて自分にとっての損得を分析し、今後の動き方を考えていくことが大切なので、音楽家の方はきっとこういうのは向いていると思うんだ。
あと、確定申告や税金に関する情報って2種類あって、ひとつはインボイス制度の情報みたいに、知識を得たうえで自分はどうするかを考えないといけないもの。もうひとつは今年の申告用紙変更みたいに知っておけばOKというもの。これは、知ってさえいればあとは実行するだけでいいし、意外とこっちのタイプのほうが多いから、臆せずどんどん情報をアップデートしていこう。
――自分を客観視して分析する力って、音楽家のみなさんは自然と使っている能力かも知れないですね。それではみなさん、今年の確定申告も頑張りましょう!
くりさん 何かあったらまたいつでも相談してね~。
――ありがとうございます!
- 定価1,540円(本体1,400円+税)、128頁
「インボイス、え、声のこと? そもそも税金、よくわからな~い!!」という演奏家、指導者、作曲家、編曲家、ライター…音楽業界に携わるすべてのフリーランスとその卵に捧ぐ! 唯一無二の確定申告・税金ガイド『オンカク』。今回の改訂版は、話題の「インボイス制度」について音楽家向けにわかりやすく解説した6ページのコラム付き。本編では元オスカープロモーション所属で音大聴講生という異色の税理士が、音大を卒業したての主人公の相談にのるかたちで、税金と確定申告について解説する。主人公の成長物語とともに、“音楽家によくある経費”の具体例をあげ、帳簿のつけ方から確定申告書の書き方まで、基礎の基礎から指南していく。この他、音楽教室を営む人のための「特別レッスン」や、ビジネス感覚を身につけてもらうための「おせっかいビジネス講座」などのコーナーも充実。シリーズ第1弾から、音楽家・指導者や音大生から「助かった~」の声続々!
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