小学生が編集者に! その視点は大人がハッとなるヒントに満ちている
今年の夏、月刊誌『音楽の友』で雑誌や編集者の仕事、クラシック音楽の魅力を次代に伝えることを目的とした職業体験イヴェント「オントモ・キッズ編集者」を開催しました。イヴェントを終えて、『音楽の友』編集長が子どもたちとの取り組みを振り返ります。
クラシックを楽しむことは、年齢と関係ない
クラシック音楽は、誰のものか。
こうした漠然とした問いはこれまでにも何度となく繰り返されている。とくにクラシックのコンサートに足を運ぶ観客の高齢ぶりが半世紀以上変化していない、ということを考慮すると、やはりクラシックは「オトナ」のものなのかもしれない。
しかし、日本が世界中で類を見ない「クラシック大国」といわれるのは、なにもそうしたオトナたちばかりのアピールによるものではない。たとえば、東京都内には500以上のアマチュア・オーケストラがあるといわれる。それらを構成するメンバーのなかに、10~30歳代の若いプレイヤーたちの姿を見ることは珍しくないはず。クラシックを聴き、弾き、楽しむことは、実は年齢と関係がない。いまさらながら、器の大きいコンテンツなのだと気づかされる。
その点でさらに確信を得たのが、今年の夏に『音楽の友』編集部が初めて取り組んだ「オントモ・キッズ編集者」。小学生を対象にした、クラシックにたずさわる職業体験イヴェントだ。
クラシックと向き合う「キッズ編集者」たち
小学校4~6年生の子どもたちが、いち編集者としてクラシックに向き合う。演奏会の内容を下調べし、アーティストにインタヴューをし、実際のコンサートを聴いてレポートを書く。さらに、そのレポートをまとめた記事を、自分たちで編集し、校正する。出勤は全3日間。編集部からの課題やアドヴァイスも含め、かなり本格的な「仕事」だ。「よくわかんない」と匙を投げる子どもたちが出てくるかもしれないと考えていたが、まったくの杞憂だった。
アーティストや楽曲への素朴な興味。与えられた知識をさらに展開していく着眼。実際の音楽体験を自分たちの言葉に置き換えていく工夫。「キッズ編集者」たちはそれらを大いに楽しんでいる様子で、その視点は実に明快かつ簡潔だ。ときには自分が普段疑問に思わずに済ませてしまう諸々の核心を、ハッと気づかせてくれるヒントに満ちてさえいる。
そんな彼らの記事が、『音楽の友』2023年10月号に掲載された。ぜひご一読いただきたい。
いっぽうで、こんなことも子どもたちに伝えてみた。
「演奏を聴いて、もしつまらないと思ったら、拍手をしなくてもOK。そのかわり、自分がおもしろいと思うものと比べて、なぜつまらなかったのかを考えること」
「取材したり、演奏を聴いたり、記事を書いたり。いろいろ取り組むけれど、そのなかで一つでも特別に好きなことが見つかったら、それを絶対に大事にすること」
取り繕った態度も、決まったルールも必要ない。クラシックと真っ向からぶつかった子どもたちの興味は、音楽を通して多岐にわたっていく。「仕事」は、あくまでもその架け橋だろう。
クラシックの底なしの器を、いまいちど確信した。
オントモ・キッズ編集者2023 94~99ページ
・イヴェント全3日間のレポート記事
・オントモ・キッズ編集者による編集記事「出口大地さんインタヴュー記事」
・オントモ・キッズ編集者によるレポート記事「8月7日東京フィルハーモニー交響楽団 平日午後のコンサート」
電子版も好評発売中(Amazon、富士山マガジンサービス他)
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