第1回 好きな曲を好きなテンポで
子どもの頃習っていたピアノ。ずっと弾いていないけれど、もう一度弾けるかなぁ……。
そんな思いを抱えた多くの読者に贈る、「大人のピアノ、本気で再開」ストーリー。
音楽ライターの山本美芽さんがコラムに綴ります。
ピアノ教育とジャズ・フュージョンを軸に執筆。ピアノ教本研究家として全国で講演を行なう。著作に「ひとりですいすいひける!はじめてのピアチャレ」1〜3、「練習しない子のた...
きっかけは仕事で触れた楽譜から。弾きたい気持ちが沸き上がる
もともとは、取材準備のために送っていただいた楽譜をなにげなく自分も弾いてみたのがきっかけだった。ピアノから聴いたことのないような低音の鳴りが止まらない。なに、この音……? もっと聴きたい。練習がやめられない。
仕事柄、ちびちびとピアノは弾いてここ数年はレッスンにも通っていたのだが、ソロ曲を1曲徹底的に仕上げて本気で弾くことをしていなかった。そこまで入り込めなかった。
復活するなら今かな。そう思って久しぶりにソロの曲を練習しはじめた。
とにかく曲を弾きたい、という気持ちを大事に。まずは3か月、好きな曲だけ
私の本業は音楽ライターなのだが、ときどきピアノの先生もやっている。
生徒たちには、
「毎日スケールも弾いたほうがいいんだよ」とか
「ゆっくりからだんだんテンポをあげてみてね」と、いちおう言っている。
自分も昔はそうして真面目に地道に練習していた。
でも「ソロ演奏の練習再開」にあたっては、地道な練習は、なんとなくやる気がしなかった。とにかく曲を弾きたい。音の世界に浸りたい。そんな自分の気持ちを大事にして好き勝手に一度やってもいいんじゃないか。だから、わざとものすごく遅く弾いたり最初にスケールを弾いたりは、全然やらなかった。
毎日ひたすら弾きたい曲だけ、音に溺れるように、繰り返し弾いていた。
▼練習を始めて1年半の演奏(「CHASE」斎藤守也)
▼練習をはじめて3週間ぐらいの演奏はこちら
3カ月ほどたつうちに「今日、ピアノが弾けるだろうか」と朝、目が覚めたら考えるようになっていた。我が家は、夕方6時まで弾ける。名古屋までセミナー講師の仕事で出かけても5時過ぎには帰宅できるようにして30分は弾く。泊りがけ出張のときは弾けそうな場所をいつも探している。ただ、主婦なので正月やお盆には弾いている暇がない。こうなると禁断症状でイライラしてしまう。ピアノを弾く時間がなによりのストレス解消であり大事な時間になってきたのだ。
いまではゆっくりのテンポで片手ずつメトロノームをかけたストイックな練習なども楽しいと思えるのでやっているが、練習再開当初は楽しいと思えず、やっていなかった。今思うとそれがよかった。弾きたい、楽しい感覚とピアノを自分に反射的に条件づけていたのだと思う。
弾けない時間は演奏動画を見て自分にダメ出し
こうなると、弾けない日が辛い。考えた方法が、動画に自分の練習をほぼ全部撮っておいて聴き返す方法だ。弾けない日、音出しできない夜に見直してダメ出しする。
弾いていたときには漠然とイマイチと感じていたものが一体何だったのか、ひたすら何度も聴き返して考える。ちょっと聴いただけでは「いいかも?」と思うこともあるけれど、何度も何度も聴き返して、さらにはプロのピアニストの演奏も聴いてからもう一度聴き直したりすると、タッチが雑、力が入っていて音が伸びていない、譜読みの間違い、テンポが揺れている、歌っていない……いろいろと原因が見えてくる。頭の中でずっと音を追っているので、暗譜もできてくる。
この「弾けない時間に動画でダメ出し」をすると、次にピアノに向かったときに「この前、テンポが揺れちゃっていたから揺れないようにしよう」など焦点が絞れて、密度の濃い練習ができる。電車に乗ってSNSをさっと見たら、あとはスマホのカメラロールを開いてひたすら再生して聴く。原稿を仕上げて家でお昼ご飯を食べながら、前日の練習動画の音をスマホからBluetoothスピーカーに飛ばして大音量で聴く。音楽ライターなのに自分の演奏ばかり聴いていて大丈夫なのか? 大丈夫じゃないかもしれないけれど、止められない。
今日はピアノが弾けるだろうか、街を歩いていてもどこか練習できそうなところはないか、いつも考えている。かなり変な人かもしれないけれど、どう思われたって構わない。弾きたいのだ。
・弾きたい、楽しい感覚とピアノを自分に反射的に条件づけしよう
・「毎日、30分でも1時間でも、弾きたい曲をひたすら繰り返す」をまずは3か月つづけてみよう
・練習時間を取れない日は、自分の演奏を動画で記録して、隙間時間にひたすら見て自分にダメ出しをしよう
内容
楽器店の棚にはたくさんのピアノ教本があり、どれを選んだらよいか迷ってしまうことはありませんか? この講座では、現在日本で使われている主要な教本をご紹介します。教本はそれぞれ指導法の宝庫。生徒がつまずいたときに様々な教本を見比べると、対策が見つかることがよくあります。今回は比較のポイントとして“ポジション移動”を取り上げ、教本によって異なる「進むペース」や「初出事項の順番」などについて考えます。
日時 2019年10月3日(木)10:30~12:30
会場 島村楽器赤羽アピレ店 店内Aスタジオ
東京都北区赤羽西1-5-1アピレ赤羽 3F
日時 2019年10月8日(火)10:00~12:00
会場 大村楽器リベルテ店 3Fホール
神奈川県小田原市栄町2-13-22
日時 2019年10月11日(金)10:30~12:30
会場 ピアノガーデンマツイシ
愛知県半田市北二ツ坂町1-12-6(半田図書館前)
URL https://www.ongakunotomo.co.jp/open_class/class.php?id=167
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