読みもの
2023.12.21

ピアノYouTuberの今~「うまいピアノを披露」を超えたエンターテインメントへ

令和に入り、かてぃん、ハラミちゃん、けいちゃんなどのピアノYouTuberたちが一気に大ブレイクを遂げた。チャンネル登録数100万人超えも珍しくなく、彼らの活躍の場は動画プラットフォームやSNSといったインターネット上のみならず、TVなどのメディアやライブ活動、CDデビューと、全方位に広がってきている。

今ではブームというような時期を経て、アーティストとしてそれぞれの指定席を獲得しているピアノYouTuber。ニューフェイスも続々と登場する中、現在の傾向はどうなっているのだろうか?

NIEDA IKU
NIEDA IKU

編集、ライター、A&Rなど。神奈川県生まれ。音楽大学でピアノを専攻し、レコード会社に就職。その後出産を機にフリーランスに。好きな音楽は雑多でジャンルを問わず聴...

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ピアノYouTuberの王道、ストリートピアノ

王道の路線として衰えない人気を誇るのが、「ストリートピアノ」だ。

 

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歴史を遡るとイギリスでのストリートピアノプロジェクト「Play Me,Im’yours」が起源とされていて、日本では2011年以降よく目にするようになり、動画投稿数も増えていった。

中でも2020年、ピアノYouTuberのアンジーが投稿した都庁でのストリートピアノがきっかけとなり、ヴァネッサ・カールトンの《A Thousand Miles》(2002年)がリバイバルヒットとなったことは、このジャンルのポテンシャルの高さを物語っている事例だと思う。

ヴァネッサ・カールトン《A Thousand Miles》がリバイバルヒットするきっかけとなった、アンジーによるストリートピアノの投稿(2020年)

また、ストリートピアノといえば、ハラミちゃん、けいちゃんの存在も欠かせない。観客から突然リクエストされた曲やメロディの一節などを瞬時に汲み取り、アドリブを交えつつ確かなテクニックで披露してくれる彼らの”現場力”はいつ見ても痛快だ。

ストリートピアノを「お客さんとの一期一会のコミュニケーション」と捉え大切にしていることを色々なインタビューで語っているハラミちゃんは、2022年に「ハラミちゃんリクエスト収穫祭 ~みんなで決める!! 最強ピアノカバーBEST50~」を開催し、自身の原点である参加型のリサイタルを国際フォーラムAのステージで実現させている。

ハラミちゃんは2022年、自身の原点である参加型のリサイタルを国際フォーラムAのステージで実現した

少しYouTubeから逸れるが、NHKで2019年から放送されている『駅ピアノ』『空港ピアノ』『街角ピアノ』は、世界各国のストリートピアノの今を味わえる貴重な番組だ。

先の10月17日には、『街角ピアノ スペシャル 角野隼斗 ニューヨークを行く』という特番が放送された。内容は、今年、ニューヨークに移住したばかりの角野が初めて「街角ピアノ」を巡る旅に出るというもの。

公園のピアノでのストリートバトル、ジャズクラブでのセッション、そして、アメリカ同時多発テロ事件のビル跡地に置かれたピアノで、現地のミュージシャン夫婦との奇跡のセッション……。

このように、ストリートピアノは特別な機材や装置などは必要とせず、ピアノとピアニストとその場の空気とが混ざり合って展開される「一期一会」が最大の醍醐味であることを、YouTubeでも、TVでも、ストレートに感じることができる。

このジャンルでは実力と人気を兼ね備え、さらに場をオーガナイズできるようなピアノYouTuberが多く活躍している。

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