読みもの
2020.05.05
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その2

フーガ:語源は逃げる。作曲家も気合いの入る形式

楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第2回はフーガ。どのような形式の作品のことをフーガというのでしょうか?

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

J.S.バッハ「フーガの技法」第1番 の自筆譜

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

フーガを初めて聴いたときに、どこか捉えどころのなさを覚えた方も方もいらっしゃるかもしれません。その秘密は、「フーガ」という言葉そのものに隠されています。

続きを読む

フーガとは、いくつかの独立したパートが同時に演奏され、そのなかで何度も決まったメロディ(主題)が出てくる形式。このメロディはどのパートにも登場するので、全部のパートが主役にもなりますし、伴奏にもなります。ざっくりですが、フーガとは概念に近く、大体これを満たしていればフーガといいます。

メロディがぐるぐると回っている様子を聴いていると、まるで迷路にいるような感覚になります。しかし言い換えれば、終わりが見えないほど壮大で、どこか神秘的な音楽なのです。

最初のメロディが何度も登場する様子が、追いかけられ、逃げているように聴こえることから「逃げる」を意味するラテン語の“fugere”から名付けられました。

同じメロディが何度も出てくる曲なんて、退屈しそうですよね……なので、フーガを書くには高度なテクニックとセンスが必要。バッハもフーガの作曲を究めるべく、約10年間「フーガの技法」という作品に取り組みました。作曲家もフーガを書くときには、気合いが入るのです。

さらに、メロディの繰り返しによって、切迫した様子も表現できます。ワーグナーの楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の大喧嘩の場面にもフーガが使われており、フーガ特有の緊張感と同時に、多声音楽ならではの情報量の多さ、もといカオスな様子がビリビリ伝わってきます!

フーガを聴いてみよう

1. J.S.バッハ:フーガの技法 第1番
2. J.S.バッハ:2台のチェンバロのための協奏曲〜第3楽章 Fuga
3. メンデルスゾーン:八重奏曲 〜第4楽章 Presto
4. ワーグナー:楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》〜第2幕 第7場 (喧嘩のフーガ)
5. グルダ:前奏曲とフーガ〜フーガ
6. バーンスタイン: 前奏曲、フーガとリフス〜フーガ (5本のサキソフォンによる)

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ