アダージョ:語源は心地いい。どれくらいゆっくり?
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第3回はアダージョ。どれくらいの速さを指すのでしょうか?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
アルバムの曲名欄にAdagioと書いてあるのを見て、「ゆっくりな曲かぁ……眠くなりそう」と思う方はきっといらっしゃると思います。私も眠くなっちゃうとき、あります。
たしかに、アダージョにはゆっくりな曲が多いですが、果たしてどのくらいゆっくりなのでしょうか。
このアダージョという言葉は、イタリア語の“ad agio”という言葉から来ており、本来「心地いい」という意味で使われています。
アダージョが音楽用語として登場した17世紀初頭より、「心地いいくらいゆっくり(プレトリウス、ドイツ、1615年)」「快適に、好きなように(フレスコバルディ、イタリア、1635年)」「急がないくらい(ブロサール、フランス、1703年)」と作曲家に捕捉され、時代と場所によって、さまざまな意味合いを持つようになりました。そして、ドイツ初の音楽事典では「くつろぐようにゆったりと、時に美しい音調を伴って(ヴァルター、1732年)」と定義されました。アダージョは、cantabile(歌うように)という指示を伴うことも多いです。
私がイタリアの音楽院に通っていた頃、「アダージョと書いてあるときは、より一層温かい音で弾くといいよ。日本人だったら温泉に浸ったときの感覚に近いのかな……僕にはちょっと熱かったけどね」と言われたことがありますが、イタリア語本来のAdagioは、まさにじわーっと深く沈むような心地よさを言うそうです。ぜひ皆さんなりの“アダージョ”な作品を見つけてみてください。
アダージョを聴いてみよう
1. モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番より 〜第2楽章 Adagio
2. ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」〜第2楽章 Adagio cantabile
3. シューベルト:弦楽五重奏曲〜第2楽章 Adagio
4. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲〜第2楽章 Adagio
5. ブラームス: クラリネット三重奏曲〜第3楽章 Adagio
6. ラフマニノフ:交響曲第2番〜第3楽章 Adagio
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly