読みもの
2020.05.12
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その3

アダージョ:語源は心地いい。どれくらいゆっくり?

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

モーツァルト「ピアノ協奏曲第23番 イ長調」KV488 第2楽章 の自筆譜

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アルバムの曲名欄にAdagioと書いてあるのを見て、「ゆっくりな曲かぁ……眠くなりそう」と思う方はきっといらっしゃると思います。私も眠くなっちゃうとき、あります。

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たしかに、アダージョにはゆっくりな曲が多いですが、果たしてどのくらいゆっくりなのでしょうか。

このアダージョという言葉は、イタリア語の“ad agioという言葉から来ており、本来「心地いい」という意味で使われています。

アダージョが音楽用語として登場した17世紀初頭より、「心地いいくらいゆっくりプレトリウス、ドイツ、1615年)」「快適に、好きなように(フレスコバルディ、イタリア1635年)」「急がないくらいブロサール、フランス、1703年)」と作曲家に捕捉され、時代と場所によって、さまざまな意味合いを持つようになりました。そして、ドイツ初の音楽事典では「くつろぐようにゆったりと、時に美しい音調を伴ってヴァルター、1732年)」と定義されました。アダージョは、cantabile(歌うように)という指示を伴うことも多いです。

アダージョの最初期の使用例(フレスコバルディ「音楽の花束」、1635年)。古いつづりで“Adasio”と表記されています。

私がイタリアの音楽院に通っていた頃、「アダージョと書いてあるときは、より一層温かい音で弾くといいよ。日本人だったら温泉に浸ったときの感覚に近いのかな……僕にはちょっと熱かったけどね」と言われたことがありますが、イタリア語本来のAdagioは、まさにじわーっと深く沈むような心地よさを言うそうです。ぜひ皆さんなりの“アダージョ”な作品を見つけてみてください。

アダージョを聴いてみよう

1. モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番より 〜第2楽章 Adagio
2. ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」〜第2楽章 Adagio cantabile
3. シューベルト:弦楽五重奏曲〜第2楽章 Adagio
4. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲〜第2楽章 Adagio
5. ブラームス: クラリネット三重奏曲〜第3楽章 Adagio
6. ラフマニノフ:交響曲第2番〜第3楽章 Adagio

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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