ピツィカート:語源はつまむ。はじめは酷評された弦楽器の奏法
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第5回はピツィカート。弦楽器のこの奏法、いつ誕生したのでしょうか?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
特殊奏法の古株的存在である、ピツィカート。
弦をつまんではじいて演奏したことから、「つまむ」という意味を持つイタリア語の“pizzicare (英語 pinch)”から派生した楽語が付けられました。
もともとは、イタリアの作曲家モンテヴェルディ(1567〜1643年)が使ったのが始まりとされていますが、このとき、すでに弦楽器を弓で擦って弾く奏法が確立されていたため、保守的な団員だけでなく聴衆からも「安っぽい音で品がない」と酷評されたそうです。
しかし、時間が経てば慣れるもの。時代ほどなくして、H.ビーバー(1644〜1704年)という作曲家が、《戦闘》という曲の中で銃声音を表すために、弦を強く引っ張って指板に叩きつけて破裂音を作るピツィカートを導入しました (のちにバルトーク・ピツィカートと呼ばれる奏法)。
その後、ピツィカートは受け入れられ、多くの作曲家がこぞって曲に使用し、ヨゼフ・シュトラウスの「ピツィカート・ポルカ」のように、ほとんどがピツィカートのみで演奏される作品も書かれました。
さらに、独特の表現方法を持つピツィカートは、なんと実際にピツィカートのできないピアノ曲においても模倣され、ブラームスはピアノ作品に“quasi pizzicato (ピツィカートのように)”の指示を3度も用いました!
こうしてピツィカートは、最初は非難されながらも音楽表現に広い幅を与えることになったのです。
ピアノのための作品ですが、ヴァイオリンのために書かれた原曲を彷彿とさせるかのように“quasi pizz. (ピツィカートのように)”の指示が見られます。
ピツィカートを聴いてみよう
1. モンテヴェルディ:《タンクレディとクロリンダの戦い》
2. ビーバー:《戦闘》 〜アレグロ
3. ヨゼフ・シュトラウス:《ピツィカート・ポルカ》
4. ブラームス:《パガニーニの主題による変奏曲 第2巻》作品35-2〜第8変奏
5. バルトーク:弦楽四重奏曲第4番 〜第4楽章
6. アンダーソン:Plink, Plank, Plunk!
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