読みもの
2020.08.18
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その17

レガート:結ばれたの意。モーツァルト曰く「油がヌメヌメしているような感じ」

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

ベートーヴェンのピアノソナタ第30番第1楽章、自筆譜。
1820年に作曲されたこの曲では、レガートの指示が多く見られます。こちらでは「sempre legato(常にレガートで)」と指示されています。

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レガートとは、イタリア語のlegare(結ぶ)の過去分詞で「結ばれた」を意味する言葉です。楽譜で音と音をしっかりつなげて演奏してほしい部分にlegatoと書いて指示されます。

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レガートという言葉が登場した具体的な時期はまだわかっていませんが、だいたい18世紀末ごろだと言われています。それ以前からレガートで演奏されることはありましたが、楽譜に書かれることはありませんでした。

代わりにスラーという、線を使って音と音をつなげて指し示すことによって、音同士をつなげて演奏していました。レガートで演奏すると、音を切り離すよりもぶっきらぼうな響きにならないため、ゆったりとした曲では音と音を大事につなげて演奏することが慣習だったようです。

1787年にベートーヴェンがモーツァルトの演奏を聴いた際に「音が跳ねていて、指が踊っているような演奏だった。手が空を切っているような……」と証言しています。モーツァルトはあまりレガートで演奏しなかったことがわかります。

それを裏付けるように、モーツァルト自身はレガートのことを「油がヌメヌメしているような感じ」と言っていたそう。

一方、同時代の作曲家のクレメンティは、自身の著作『ピアノ奏法の手引き 作品42』(1801年)で、「美しいレガートで引き立たせることは大切」と書いており、レガートに対してのテイストが大きく分かれた時代でした。

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第21番第2楽章冒頭、自筆譜。
モーツァルト自身がレガートの指示を用いたことはありませんが、その代わりスラーと呼ばれる線で音同士を繋ぎました。

そんななか、レガートを多く用いたのはベートーヴェンでした。特にピアノの音が持続するように改良されてから、レガートの指示を積極的に使いました。

これを機に、19世紀から多くの作曲家が、歌心あふれるレガートの指示をこぞって用いるようになりました。

ショパンのピアノソナタ第2番第4楽章、自筆譜。
ピアノソナタ第2番第4楽章では、最初から最後までレガートで演奏するよう指示されています。
ブラームスのパガニーニ変奏曲第2巻より第11変奏の冒頭。
ブラームスもレガートを多く用いた作曲家の一人ですが、その反対に「non legato(レガートにしないで)」の指示も多く使いました。レガートと書いていなくてもレガートで弾く習慣があったことが垣間見えます。

レガートを聴いてみよう

1.  モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 KV467〜第2楽章 Andante
2. ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番 作品109〜第1楽章 Vivace
3. ショパン:練習曲集 作品10〜第2番 Allegro, sempre legato
4. ショパン:ピアノソナタ第2番 〜第4楽章 Presto
5. ブラームス:パガニーニ変奏曲第2巻〜第11変奏 Vivace
6. アンダーソン:ジャズ・レガート

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

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