バラード:語源は「踊る」であの舞踊と親戚!? ショパンによって器楽曲に仲間入り
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
歌謡曲に付けられることも多い曲名、バラード。センチメンタルな雰囲気の漂う曲が多いですが、それはなぜなのでしょう……?
12世紀ごろのヨーロッパでは、古代のラプソディのように、吟遊詩人がある出来事や物語を詩にして、それを各地で詠いながら旅をしていました。このときに詠われていたバラードの詩は、ある出来事を淡々と述べるというよりも、その出来事に対する想いも含めた内容のものが多く、感情的、感傷的な傾向があります。
それと同時に、その詩の内容に沿うように音楽がつけられ、踊られるようにもなりました。これが、プロヴァンス語(フランス南部で話されているオック語の方言)で踊るという意味の動詞balarが名詞形に変化したballadaと呼ばれるようになりました。このときに用いられていた韻の踏み方や詩の形式も、同時にバラードと呼ばれます。
作者不詳(12世紀): A L’entrada Del Temps Clar(陽気な季節が来る頃に)
プロヴァンス語で歌われる最初期のバラードです。
もしかすると、この語源を見るて気付く方もいらっしゃるかもしれません。このbalarという言葉をさらに遡ると、ラテン語のballareにたどり着きます。このラテン語は、イタリア語経由で派生し、のちにバレエ(ballet)という言葉になりました。バラードという言葉は、実はバレエと遠い親戚だったのです!
14、15世紀になると、ギョーム=ド=マショーやデュファイが、積極的にバラードを作曲しました。この頃のバラードの詩は、恋愛に関するものが多くなります。宗教的な音楽が台頭した時代において、世俗的なバラードは人気を集めました。
それからバラードはしばらく影を潜めますが、19世紀にショパンが、器楽曲としてのバラードを初めて作曲します。
器楽曲のため、詩や歌詞はついておらず、自由な形式で書かれています。しかし、かつての吟遊詩人を思わせるような朗々としたメロディはそのまま残されています。
このスタイルは、ロマン派(19世紀)以降の作曲家たちによって、多く書かれるようになりました。
物語的な内容や、感傷的な雰囲気をベースにしたバラードは共感を得やすかったのか、歌詞の有無にかかわらず、バラードはポップスやジャズ、ロックなど垣根を超えて愛される音楽となりました。
バラードを聴いてみよう
1. ギョーム=ド=マショー:バラード「恋が私を焦がれさせ」
2. ショパン:バラード第1番 作品23 ト短調
3. フォーレ:バラード 作品19
4. デュカス:交響的スケルツォ《魔法使いの弟子》(ゲーテの同名のバラードに基づく)
5. ヴァイル:《三文オペラ》〜「マック・ザ・ナイフ(殺人鬼)のバラード」
6. ハロルド・アーレン:「虹の彼方に」(ミュージカル映画『オズの魔法使い』より)
7. イギリスのバラード「スカボロー・フェア」
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly