「第九」で学ぶ!楽典・ソルフェージュ 第3回 音程1. 単音程と複音程
音大受験生や音大生はもとより、楽器や歌、音楽鑑賞を楽しむ人までを対象にした、楽典とソルフェージュの連載。国民的人気曲「第九」を題材に、楽しみながら耳を育て、スコア・リーディングにも挑戦! 楽典の学びを実践するエクササイズで、表現力やアンサンブル能力を磨きましょう。
師走は「第九」の季節!! 生演奏を聴きに行く予定はありますか? お手元にスコアがある方は、一度スコアを見ながら動画や録音を視聴して、それからコンサートに出かけると新たな発見があるのではないでしょうか。
さて、今回は音程の第1回「単音程と複音程」です。
【楽典】
1、 音程とは
音程は2つの音の隔たり、高低の差を表したものです。身の回りに満ちあふれる音楽は、音の重なりや音の連なりからなるので、音程を知ることは、音楽がどのように響いているかを直接的に知ることです。
同時に鳴る2音間の音程を和声的音程、続いて鳴る2音間の音程を旋律的音程といいます。
譜例1 は、第3楽章の冒頭のうち、いくつかの旋律的音程と和声的音程を示したものです。
譜例1
2、完全系と長短系
音程を数える時には、同じ高さの音を1度とし、そこから差が広がるに従い、2度、3度と数字を増やしていきます。1オクターヴは8度です。1オクターヴ以内の音程を「単音程」、1オクターヴより広い音程を「複音程」といいます。
1度、8度、5度、4度は完全系の音程、2度、3度、6度、7度は長短系の音程です。別の系統ですから、長5度や、完全3度などの音程はありません。
3、単音程の判別方法
音程の判別には、ピアノの鍵盤を使うことをお勧めします。
ピアノの鍵盤は、白鍵と白鍵の間に黒鍵が挟まるところと、白鍵が2つ続いているところがあります。白鍵が続くところを1か所含む音程を「白1」、2か所含む音程を「白2」、含まない音程は「白0」と略記して解説します。
【幹音と派生音】
ピアノの白鍵で変化記号♯や♭をつけない音を幹音、調号や臨時記号により変化した音を派生音といいます。たとえば、ピアノのド(ドイツ語音名:C)の音は幹音ですが、同じ音でもシ(H)に♯がついたHisは、派生音となります。
1度:同じ高さの音が完全(白0)
2度と3度:白0が長、白1が短
4度と5度:白1が完全
6度と7度:白1が長、白2が短
8度:オクターヴが完全(白2)
この音程を基本として
完全、長より半音広い音程は増、さらに半音広い音程は重増。
完全、短より半音狭い音程は減、さらに半音狭い音程は重減。
それでは、譜例1 で指示した旋律的音程と和声的音程を順番に判別していきましょう。
譜例1
【旋律的音程】
DとA:白1を含む4度 → 完全4度
AとB:調号を除いた幹音AとHは白0で長2度だが、上方の音に調号♭がつき半音狭い → 短2度
BとF:調号を除いた幹音HとFは白0の増4度だが、上方の音に調号♭がつき半音狭い → 完全4度
FとEs:調号を除いた幹音FとEは白1の短2度だが、下方の音に調号♭がつき半音広い → 長2度
【和声的音程】
DとD:オクターヴ → 完全8度
CとA:白1の6度 → 長6度
BとB:オクターヴ → 完全8度
CとF:白1の4度 → 完全4度
4. 複音程の判別
譜例1 の冒頭小節、チェロと第2ヴァイオリンの最初のFとA(4拍目)は1オクターヴより広い「複音程」です。
譜例1
複音程には2通りの呼び方があります。
- オクターヴの回数 + 単音程 → 1オクターヴと長3度
- 8度 + 単音程 − 1度 → 長10度
エクササイズ
第2楽章はニ短調です。主題が9小節から第2ヴァイオリン、13小節からヴィオラ、17小節からチェロ、21小節から第1ヴァイオリン、最後に25小節からコントラバスに現れます。このように一声部ずつ主題が導入されていくフーガ*のような部分を、フガートと呼びます。
*フーガは、主題が提示される「提示部」と次の提示部への移行部分である「嬉遊部」からなる楽曲の形式。フガートは、フーガ形式ではない楽曲の中に導入されるフーガのような一部分。フゲッタは「小さいフーガ」の意味。
第2楽章9小節~:一声部ずつ主題が導入されていく「フガート」の部分
1. 音程の判別
1〜8は旋律的音程、a〜fは和声的音程、ア〜オは複音程です。
それぞれ音程名を答えましょう。複音程は2通りの答え方を試してみましょう。
同じアルファベットや数字は、音は異なっていますが同じ音程です。
答え:a)短3度 b)短6度 c)完全5度 d)減7度 e)長6度 f)長3度
1)完全8度 2)完全4度 3)長2度 4)短2度 5)短3度 6)完全5度 7)増1度 8)完全1度
ア)1オクターヴと短3度・短10度 イ)1オクターヴと減5度・減12度 ウ)1オクターヴと増4度・増11度 エ)1オクターヴと長6度・長13度 オ)2オクターヴ・完全15度
2. 主題を歌おう
主題はニ短調とイ短調で交互に現れます。第2ヴァイオリン9〜12小節、チェロ17~20小節、コントラバス25~28小節はニ短調で、ヴィオラ13〜16小節、第1ヴァイオリン21~24小節はイ短調で主題が現れます。歌える音域で歌ってみましょう。
とくに長2度と短2度の違いを意識します。そして、2(完全4度)と6(完全5度)は主題旋律の同じ箇所ですが、音程が異なることに注意しましょう。
3. 聴いて確かめよう
最後に動画で該当部分を視聴して確かめましょう。
第3楽章冒頭
(35:40~)
第2楽章9小節~:一声部ずつ主題が導入されていく「フガート」の部分
(19:56~)
いかがでしたか?日常的に音程を判別し、歌ったり、耳で確かめたりしながら、音程に対する感性を高めましょう。
次回(第4回)は音程の第2回「転回音程とオーケストレーション」です。お楽しみに。
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