贅をつくした空間とプログラム——ウィーンやベルリンとの親密さも際立つサントリーホール
首都圏初のコンサート専用ホール「サントリーホール」は、1986年の開館以来、クラシック音楽の殿堂として、国内外の音楽シーンをリードするアーティストたちを日本のオーディエンスに紹介している。名指揮者・カラヤンが本拠地としたベルリンのフィルハーモニー・ホールと同じく、ヴィンヤード形式(ブドウ畑)を採用。音響の評価も高い格式あるホールで、クラシックの真髄を味わおう。
1958年東京都生まれ。81年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業、(株)日本経済新聞社へ記者として入社。企業や株式相場の取材を担当、88~91年のフランクフルト支...
1986年にできた首都圏初のコンサート専用ホール
1986年にサントリーホールができたとき、「首都圏初のコンサート専用ホール」の輝きはまぶしかった。けれど、「どの駅にも近くない」とも言われた。
1997年に溜池山王、2000年に六本木一丁目の東京メトロ2駅が開業して、足の便は格段に改善した。地上に出ればすぐ、高層オフィスビルとANAインターコンチネンタルホテル東京を組み合わせた赤坂アークヒルズが見えてくる。
2階に上がると、ホールを建てる前にいろいろとアドバイスを授けた20世紀の大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの名にちなんだ「アーク・カラヤン広場」に出る。
写真右:シンボル的な存在、時計台。プレートはカラヤン財団より寄贈された。
正面がサントリーホール。向かって左にはデザイナーで彫刻家の五十嵐威暢によるオブジェや噴水、右にはホテルオークラや東京メトロ六本木一丁目駅に通じる階段がある。
ホールが開場すると、入り口頭上に仕掛けられた小さなパイプオルゴールが歓迎のメロディを奏で、お客様を音楽の世界に誘う。ホワイエを直進すれば大ホール、左折すればブルーローズ(小ホール)。
ホワイエには両ホール共用のクローク、バーカウンター(2ヶ所)、ホールオリジナルグッズを扱うショップがあり、ゆったりとくつろぎながら、演奏への期待を高めることができる。
こだわり抜かれた音響やデザイン
ホールの座席に貼られたファブリック(布地)は、20世紀初頭、ジャポニスム(日本趣味)も取り入れた工芸運動「ウィーン工房」のリーダー、ヨーゼフ・ホフマンがデザインした和風の紋様が織り込まれている。
大ホールはカラヤンが本拠としたベルリンのフィルハーモニー・ホールと同じく、ヴィンヤード(ブドウ畑)形式を採用、舞台を客席が前後左右から取り囲む。銀色に輝くパイプオルガンの下の「P席」では、指揮者と真正面に向き合える。
ブルーローズ(小ホール)の舞台と椅子は、自由に配置を変えられるし、全部取り払えばレセプション会場としても利用できる仕掛けだ。
写真上:ブルーローズ(小ホール)。客席が可動式であることを生かした企画も多く行なわれる。
「もちろんハード面も定期的に改修、アップデートの努力は怠りませんが、サントリーホールの大きな魅力は自主事業のソフト(演目)にもあります」と、副支配人で企画・広報統括部長の白川英伸さんは強調する。
鉄板から、意欲的なプログラムまで
現在の館長、堤剛さんは芸術院会員で日本を代表するチェロ奏者ということで「室内楽をもっと多くの人に、気軽に楽しんでいただきたい」との方針を打ち出し、室内楽の祭典「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」を2011年、開館25周年の記念に立ち上げた。
2000年代のベルリンに現れたクス・クァルテットがベートーヴェンの「弦楽四重奏曲」全曲を弾くほか、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者のトマシュ・リッテルがホール所蔵の1867年製エラールでソロ曲、室内楽版による「ピアノ協奏曲第2番」を組み合わせたショパン・プログラムに挑む。
さらにお昼1時から60分の「プレシャス 1 pm」シリーズ4公演は、お昼の時間にしか外出できないシニア向け。忙しいビジネスピープルのためには、午後7時半開演の「ディスカバリー・ナイト」2公演などを臨機応変に設ける。
「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」出演者のメッセージ動画
夏には、現代音楽の祭典としての「サントリーホール サマーフェスティバル2019」、秋には恒例の「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2019」がクリスティアン・ティーレマン、アンドレス・オロスコ=エストラーダの指揮で控えている。
今年は日本とオーストリアの友好150周年に当たり、ティーレマンがウィーンでのニューイヤー・コンサートの一部曲目を再現する記念公演もある。
年末年始には鈴木雅明指揮「バッハ・コレギウム・ジャパン『メサイア』」(ヘンデル)、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団の「サントリーホール ジルヴェスター・コンサート2019-2020」、「サントリーホール ニューイヤー・コンサート2020」と鉄板の定番。
年明け2020年2月には、ヴァイオリンの女王アンネ=ゾフィー・ムターがベートーヴェン生誕250周年にちなむスペシャルステージ3公演を予定する豪華さだ。
音楽だけでも「まんぷく」となりそうだが、終演後は余韻とともに食事やお酒を楽しみたい。
白川さんのお勧めは、「近隣ホテル内のバー」とのこと。アークヒルズやANAインターコンチネンタル東京の飲食店では、サントリーホールのチケットを提示するとおトクな優待サービスが受けられる。
さっそく今夜から、試してみてはいかが?
プレシャス 1 pm Vol.1 クラリネット五重奏の深遠
日時: 2019年6月5日(水)13:00開演
出演: 渡辺玲子、池田菊衛(ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、毛利伯郎(チェロ)、コハーン・イシュトヴァーン(クラリネット)
曲目: ドヴォルジャーク/テルツェット ハ長調 作品74 より 第1・3楽章
モーツァルト/クラリネット五重奏曲 イ長調 K. 581 より 第2楽章
ラヴェル/ヴァイオリンとチェロのためのソナタ より 第1・2楽章
フランセ/クラリネット五重奏曲 変ロ長調 より 第3楽章
ドホナーニ/弦楽三重奏のためのセレナード ハ長調 作品10 より 第1・2・3楽章
ブラームス/クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115 より 第2楽章
詳細はこちら
プレシャス 1 pm Vol.2 服部百音の室内楽
日時: 2019年6月7日(金)13:00開演
出演: 服部百音(ヴァイオリン)、青柳晋(ピアノ)、[三重奏]奥泉貴圭(チェロ)、坂口由侑(ピアノ)
曲目: ショスタコーヴィチ/ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 作品67
プロコフィエフ/ヴァイオリン・ソナタ第1番 ヘ短調 作品80
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プレシャス 1 pm Vol.3 親密な至極のデュオ
日時: 2019年6月12日(水)13:00開演
出演: 小山実稚恵(ピアノ)、堤剛(チェロ)
曲目: メンデルスゾーン/チェロ・ソナタ第1番 変ロ長調 作品45、チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 作品58
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プレシャス 1 pm Vol.4 第一人者の華麗な交歓
日時: 2019年6月14日(金)13:00開演
出演: 吉野直子(ハープ)、池松宏(コントラバス)
曲目: クープラン/《コンセールのための5つの小品》
フランセ/《バロック風二重奏曲》
ドビュッシー/《夢想》
サン゠サーンス/ファゴット・ソナタ ト長調 作品168(コントラバス版)
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ディスカバリーナイト I
日時: 2019年6月6日(木)19:30開演
出演: ジョン・健・ヌッツォ (テノール)、岡原慎也(ピアノ)、[ピアノ三重奏]トリオ デルアルテ *室内楽アカデミー第5期フェロー 内野佑佳子(ヴァイオリン)、河野明敏(チェロ)、久保山菜摘(ピアノ)
曲目: シューベルト/歌曲集《美しき水車屋の娘》D. 795
ハイドン/ピアノ三重奏曲第31番 変ホ短調 Hob. XV:31
ハイドン/『スコットランドとウェールズの民謡歌曲集』より
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ディスカバリーナイト II
日時: 2019年6月12日(水)19:30開演
出演: 菊本和昭(トランペット)、竹島悟史(パーカッション)、新居由佳梨(ピアノ)
曲目: イウェイゼン/トランペット・ソナタ
クレストン/マリンバ小協奏曲 作品21
ジョリヴェ/トランペットと打楽器のための《エプタード》 ほか
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日時: 2019年8月23日(金)〜31日 (土)
プログラム:
・「ザ・プロデューサー・シリーズ 大野和士がひらく」ベンジャミン:オペラ『リトゥン・オン・スキン』(日本初演/英語上演・日本語字幕付)
・「サントリーホール 国際作曲委嘱シリーズ No. 42」監修:細川俊夫、テーマ作曲家:ミカエル・ジャレル、管弦楽
・「第29回芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会」
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日時: 2019年11月5日 (火)~15日 (金)
出演: クリスティアン・ティーレマン(指揮)、アンドレス・オロスコ゠エストラーダ(指揮)、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラム:
・<オープニング公演>日本オーストリア友好150周年記念スペシャル・プログラム~サントリー芸術財団50周年記念~
・オーケストラ・プログラム
・ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 無料公開リハーサル
・ウィーン・フィル首席奏者によるマスタークラス
・サントリーホール&ウィーン・フィルの青少年プログラム
詳細はこちら
日時: 2019年12月31日(火)22:00開演
出演: オーラ・ルードナー(指揮・ヴァイオリン)、シピーウェ・マッケンジー(ソプラノ)、ミロスラフ・ドヴォルスキー(テノール)、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団(管弦楽)、バレエ・アンサンブルSVOウィーン ほか
詳細はこちら
問い合わせ: サントリーホールチケットセンター Tel.0570-55-0017
会場: サントリーホール
[運営](公財)サントリー芸術財団
[座席数] 大ホール2006席(車いす専用スペー
ス6席)ブルーローズ(小ホール) 380~432
席(可動式)
[オープン] 1986年
〒107-8403
東京都港区赤坂1-13-1
[問い合わせ]0570-55-0017
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