サントリーホール~四季ごとに一流のクラシック音楽が気軽に楽しめる多彩な企画
世界各地から一流のオーケストラ、演奏家が集まるサントリーホール。その中でもとくに深いつながりを持つのがウィーン・フィルで、毎年11月に<ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン>を開催しています。6月は室内楽の<チェンバーミュージック・ガーデン>、夏は現代音楽の<サマーフェスティバル>、そしてクリスマス、年末年始と四季を通して楽しめる公演が盛りだくさんで、初心者や親子に開かれた企画も多彩。こんなふうにコンサート体験への入り口をたくさん準備してくれているサントリーホールの2024〜25年シーズン主催公演について、企画制作部長の中鉢智博さんにお話を伺いました。
1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...
ここ数年、よく「イマーシブ」という言葉を聞くようになった。VRを使った没入体験などを示す言葉で、それをより簡単に味わえる美術展も開催されている。その紹介ニュースなどを見たりするたびに音楽好きの自分が思うのは、まさにクラシック音楽をコンサートホールで聴くことこそ「イマーシブ」な体験なのではないかということだ。参加することによって味わえるアート。それを身近でかなえてくれる存在がコンサートホールだと思う。
そのコンサート体験への入り口をたくさん準備してくれているのがサントリーホールである。2024〜25年のシーズンに開催されるサントリーホールの主催公演について、中鉢智博さん(企画制作部長)に聞いた。
今年のウィーン・フィルは指揮がネルソンス、ソリストがブロンフマンと五嶋みどり
「4月6日、土曜日に開催される『オープンハウス〜サントリーホールで遊ぼう!』は、サントリーホールそのものの楽しみ方を、クラシック音楽が初めてという方にも知っていただくために企画しているものです。ホール内の見学の他にも、サントリーホールが誇るオルガンのコンサートがあり、ステージに上がる体験もできます。大ホールはオーケストラを中心に、ブルーローズ(小ホール)はクラシック音楽のミニ・ステージを定期的に行なうなど、異なるタイプのコンサートが開催されます」と中鉢さんは紹介する。
1986年に東京で初めてのクラシック音楽専用コンサートホールとして開館したサントリーホールは、当然のことながら、世界各地から一流のオーケストラ、演奏家が集まる。サントリーホールがとくに深いつながりを持つのがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。毎年11月に<ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン>(11/12~17)を開催して、オーケストラのコンサートの他にも、若い音楽家のためのマスタークラスなどを開催している。
中鉢「今年は2010年以来となるアンドリス・ネルソンスが指揮をします。ピアノのイェフィム・ブロンフマンとヴァイオリンの五嶋みどりのふたりがウィーン・フィルと共演するという豪華版で、お客様の期待にお応えする公演です」
ホールが若い演奏家を育てる役割を担う~<オペラ・アカデミー>と<室内楽アカデミー>
サントリーホールの大きな特徴として、コンサートだけでなく若い演奏家を育てる<アカデミー>を2つ主宰していることがあげられる。そのひとつ<オペラ・アカデミー>の「オペラ・ガラ・コンサート」がもうすぐ開催される(3/21、22)。
中鉢「オペラ・アカデミーは30周年を迎えます。現在はジュゼッペ・サッバティーニさんを中心にアカデミーが開催されていますが、その中からはすでに海外の歌劇場などで活躍する歌手たちも登場しています。30周年ということで今回は2夜にわたって開かれますが、第2夜にはサッバティーニさん自身もファルスタッフ役で登場され、ヴェルディ最後の傑作《ファルスタッフ》の第3幕第2場を上演しますので、特別なチャンスになります」
もうひとつの<室内楽アカデミー>は、毎年6月に開催される<チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)>(6/1~16)の中で、その活動の成果が披露される。
中鉢「<チェンバーミュージック・ガーデン>は室内楽だけの音楽祭ですが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を取り上げる<ベートーヴェン・サイクル>(6/8~9、11~13、15)や、平日午後のトーク付きコンサート、気鋭の演奏家が自身でプロデュースするコンサート、そして豪華なフィナーレなど、室内楽はこんなに多彩な形と色彩を持っているということがわかる<庭>として、楽しんでほしいですね」
今年は<カルテット with…>(6/7、10、14)という新企画も登場し、現在欧米で活躍する海外の3つの弦楽四重奏団が登場し、それぞれが日本のアーティストと共演するユニークなプログラミングとなっているのにも注目したい。
<サマーフェスティバル>に現代音楽の先駆者アーヴィン・アルディッティが登場
季節ごとにコンサートも色を変える。夏には開館以来行なわれている<サマーフェスティバル>(8/22~29)が開催され、現代の音楽界を築いた存在とも言えるアーヴィン・アルディッティ(vn)が登場する。テーマ作曲家として選ばれたフランスのフィリップ・マヌリは日本とも関わりの深い作曲家で、その新作も気になるところ。
中鉢「2023年のこのフェスティバル『ザ・プロデューサー・シリーズ 三輪眞弘がひらく ありえるかもしれない、ガムラン』のなかでトライした『プロジェクト型コンサート』の<En-gawa>という企画は、ブルーローズ(小ホール)を丸ごとアジア的な世界に作り替えて、ガムラン音楽と共に体験できるようにした特別なものでしたが、あらためて音楽とホールの関係性を考えさせてくれました。新しいなにかを見つけることは、私たち企画者にとっても、また聴きに来てくださるお客様にとっても大切な体験となります」
どんな世代も楽しめる、間口が広く多彩な企画
秋には<ARK Hills Music Week>(9/27~10/6)、クリスマスにはバッハ・コレギウム・ジャパンのヘンデル「オラトリオ《メサイア》」(12/24)、<サントリーホールのクリスマス>(12/25)、そして年末年始にはウィーン・フォルクスオーパー交響楽団(12/31~2025年1/3)がやって来て、ジルヴェスター・コンサートとニューイヤー・コンサートを開催する。
また、例年は年一度の「サントリー音楽賞受賞記念コンサート」が、今年は濱田芳通(第53回)(8/17)と井上道義(第54回)(12/30)のふたりの受賞者のコンサートが開催される。
子どもと一緒に参加したいという方には、7月の<サントリーアートキッズクラブ いろいろドレドレ>(7/26~27)や、東京交響楽団とサントリーホールが協力して開催する<こども定期演奏会>(4/7、7/14、9/8、12/1)がある。
「どんな世代の方にも楽しんでいただけるように、間口は広く、そして多彩な企画を考えるのが私たちの仕事です。ぜひ、クラシック音楽を気軽に楽しんでいただきたいです」と中鉢さんは結んでくれた。
[運営](公財)サントリー芸術財団
[座席数]大ホール:2006席、ブルーローズ(小ホール):384席(A型)・432席(B型)・380席(C型)
[オープン]1986年
[住所]東京都港区赤坂1-13-1
[問い合わせ]Tel.0570-55-0017(チケットセンター)
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