現代音楽は時間が経ったら 将来呼び方が変わるの?
読者の皆さんから募集した、クラシック音楽にまつわる素朴な疑問に答えていただく特集。「現代音楽」という呼び名が未来永劫使われるとしたら……確かに違和感がありますよね。答えてくれたのは、20-21世紀音楽が専門で『〈無調〉の誕生』の著書もある、音楽学者の柿沼敏江さんです。
カリフォルニア大学サンディエゴ校博士課程修了、PhD。専門はアメリカ実験音楽、20-21世紀音楽。著書に『アメリカ実験音楽は民族音楽だった』(フィルムアート、2005...
「現代音楽」はいつまで続くのか、と私自身も数十年前の学生時代に疑問に思ったことがあります。いま聴いている音楽が現代音楽だとすると、21世紀になった時には何と呼ばれるのだろうか、と。
21世紀になったら、その時が現代になるので、20世紀の音楽はもう古くなって別の名前になっているのだろうか、それとも21世紀までずっと現代音楽が続くのだろうかと疑問を抱くとともに、いったいそれはいつまで続くのだろうかと不安にも思ったのでした。
ですから、この質問はある意味で当然出てくるものではないかと思います。そしてすでに21世紀も四半世紀が経とうかという時期になっていますが、いまだにやはり20世紀の音楽は「現代音楽」と呼ばれ、「現代音楽」とされる音楽が生み出され続けているのです。
狭義の「現代音楽」とは「無調音楽」のこと
では「現代音楽」とは具体的にはどのような音楽を指しているのでしょうか。一般的には「現代音楽」という名称は、20世紀から21世紀にかけて生み出されたクラシック(シリアス)系の音楽をざっくり指して使われています。もう少し時代を限定して、第一次世界大戦以降から現在までのクラシック系の音楽とする場合もあります。
ただやはり「現代」とはいつのことなのかは曖昧ですので、かわりに「20世紀音楽」を使うこともよくありますし、現在では「20–21世紀音楽」に変わってきています。美術の領域でも「現代美術」や「現代アート」という用語が使われますが、時代的には第二次世界大戦後を意味することが多いようです。
ところで「現代音楽」という名称は実はあまり評判がよくありません。現代にはクラシック系以外にもポピュラー音楽やジャズ、ロック、映画やアニメの音楽などさまざまな音楽があるのに、クラシック系の音楽だけを「現代音楽」と呼ぶのはおこがましいではないかというのです。
また「現代音楽」はしばしば耳障りで、調性がよくわからない「無調」を特徴とする音楽、たとえばシェーンベルクやヴェーベルン、あるいはシュトックハウゼンやブーレーズなどの音楽を指して使われます。狭義の「現代音楽」とはいわゆる「無調音楽」を指します。クラシック系の現代音楽には調性のあるものも多いのですが、とりわけ「無調音楽」が「現代音楽」としてまかり通っているのも奇妙な話です。そのため、いわゆる「無調音楽」をカギ括弧つきで「現代音楽」と呼ぶ人もいますし、批判的な意味を込めて「ゲンダイオンガク」とカタカナで書く人も見かけます。
シェーンベルク:3つのピアノ曲 Op.11より第1曲
ヴェーベルン:交響曲 op. 21より第1楽章
シュトックハウゼン:ピアノ曲 Ⅰ~Ⅺ
ブーレーズ:ストリュクテュール第1集、第2集
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