第2回 作曲とはメロディを作ること~鼻歌から「今日は天気がいい歌」を作ってみる
作詞作曲に憧れる! でも音楽の心得がないから......と諦めるその前に、「宇宙一やさしい作詞作曲ガイド」をお手にどうぞ。
星や宇宙をテーマに音楽を作るミマスさん(アクアマリン)による『歌を作ろう! 宇宙でいちばんやさしい作詞作曲ガイドブック』より、ONTOMO出張版をお届けします! 言葉には上手くできない想いを、歌に託してみませんか。きっと新しい世界が開けますよ。
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...
作曲とは、一言でいうと「メロディを作ること」です。曲を作ると言いますが、メロディを作ることだと考えると、自分にもできそうだと感じる方が多いのではないでしょうか。
第1回でも述べたように、メロディを作るということは、多くの人が、無意識のうちに、日常的にやっていることだからです。
たとえば、小学生がクラスメイトをからかったり冷やかしたりするとき。即興で、オリジナル曲にのせてやっていることがよくありますね。友だちを誘う「○○ちゃ~ん! いっしょにあそぼ~う~よ~!」という声が、歌のようになっているのを耳にすることもあります。
あなたも、気分よく自転車に乗ったり、カップラーメンが3分経つのを今か今かと待ちわびているときなどに、今まで聴いたこともないメロディを口ずさんでいたりすることがありませんか? 「ただの鼻歌だよ」などと軽んじてはいけません。それこそが貴重なメロディの種であり、作曲はその延長線上にあるのです。
ふと思いついた鼻歌や、言葉のイントネーション。それらをふくらませてゆくとメロディになり、それが集まると「曲」になります。短いメロディでも何度もくり返したり、いくつか組み合わせたりしているうちに、だんだん立派な曲のようになってゆきます。とりあえずは、短くて断片的なものでじゅうぶん。さあ、あなたもメロディを作ることに挑戦してみましょう。
もちろん、全く何もないところからメロディを作ろうとしても構いません。でも、さまざまな手助けを借りると意外とやりやすくなるものです。まず仮に何か適当な言葉(歌詞)を並べてみて、それに合うようなメロディを考えるのもよいでしょう。楽器で音を出しながら、一つ一つ音を拾うようにしてメロディをつむいでゆくのも良い方法です。
大切なのは、いろいろ試してみること。これは変だな、これは意外といいな……。試行錯誤をくり返すうちに少しずつ出てきますよ。恐れずドンドンやってみましょう。気に入らなければ捨ててしまえばいいし、何度でもやり直しはききます。
ではここで一例として、先ほど例にあげた「今日は天気がいい」という言葉につけたメロディ「ソミソドシラソラソ」の続きを作ってみることにしましょう。
まず、「今日は天気がいい」に続く言葉を適当に考えてみます。「どこか出かけたいな」なんていかがでしょうか。とりあえずこれでやってみることにします。「どこか」には「ファミレ」のような下降する音階が似合いますね。「出かけたいな」は「ミファソラファソ」なんて上昇ぎみにすると、イントネーションも自然で、空を見上げて気持ちが高ぶっている感じが表せそうです。
さあ、これでもう短い歌ができました(図A)。これを見てどう思いますか。
「なんだ、そんなことか――」。あなたがもしそう思ってくれたなら大成功です。そんなことなんですよ。作曲って。
もちろんこれは一例です。先に歌詞を決めなければいけないということではありません。先にメロディを作り、あとから歌詞をつけるという順序でも歌はできます。どちらがやりやすいかは個人差があるでしょう。好きなほうで試してみてください。
ミマス式記譜法~五線譜がなくても~
ところで、せっかくこうして浮かんだメロディを、明日にはもう忘れてしまうかもしれません。一つの作品にふくらませるためには、何らかの形で記録しておく必要があります。どうしたらよいでしょうか。
その手段の一つとして楽譜があります。五線譜に音符を書くことができる方は、もちろんそうするのが一番です。問題は、楽譜の読み書きが苦手な人はどうしたらいいのかということです。
録音しておくのも一つの方法でしょう。文字で「ソミソドシラソ……」と書いておくこともできます。極論をいえば、後で自分が見返したときにメロディを再現できればどんな方法でもよいのです。
ここで、一例として、僕がいつも行っている方法を紹介したいと思います。良いメロディが思い浮かぶと、僕はいつも図Bのように書いているのです。実際にごらんいただきましょう。
この方法の良いところは、五線譜という特殊な用紙がなくても、ふつうのノートやメモ帳にも書けることです。思い立ったときに、いつでもどこでもすぐに書くことができます。歌詞やコードを書き込むこともできます。
ただ、ごらんいただけば分かると思いますが、この記譜法も楽譜の書き方に基づいたものにすぎません。音の長さや休符、小節といった要素の表現は、楽譜の記号をそのまま使っています。
楽譜というものは、人類が何百年にもわたって、目に見えない音楽をなんとか記録しようと努力して完成した方法論。きわめて洗練されたものです。だからやはり、いちばん良いのは楽譜に書くことなのですね。それに、五線譜の書式は世界共通。もしあなたが自作の歌を楽譜に書いておけば、他の人もすぐにそれを見て歌うことができます。
だからといって、楽譜が書けないと作曲できないということではありません。音楽を作ることと、それを書き記すことは全く別のことだからです。実際に僕は「アクアマリン」の音楽活動のなかで、自分が作った歌をボーカリストのSachikoさんに歌ってもらう際に、楽譜を書くことはほとんどありません。自分で歌って録音した仮の音源を渡して、耳で聴いて覚えてもらいます。そのやり方で20年間も、いちおう職業として音楽をやってこられたのですよ。近年は合唱曲の作詞作曲をするお仕事が増えたので、がんばって楽譜を書くこともあります。それでも小学生用の歌集に載っているような、最低限のきわめて簡素なものです。
世の中には、楽譜が書けなくても素晴らしい音楽を生み出している人が大勢います。臆せずドンドンやってみましょう!
さあ、歌を完成させよう!
先ほど作った「♪今日は天気がいい どこか出かけたいな」という歌。これだけでも悪くありませんが、やはりちょっと短すぎますね。もう少しふくらませたいところです。
では、さらに続きの言葉を考えてみましょう。どんな言葉が良いかいろいろと考えられますが、出かけたい場所を具体的に並べてゆけばイメージがふくらむかもしれません。そこで、「♪山のぼり 川遊び 静かな森のなか」なんていかがでしょう。ここでも言葉の自然なイントネーションを大事にして、「山のぼり」は「ファソラソファ」、「川遊び」は少し下げて「ミファソファミ」としてみます。「静かな森のなか」は静かな感じを出すために低めの音階で「ファミレドシドレレド」とするとよいかもしれませんね(図C)。
どうです、できました! ではついでに、2番の歌詞も考えてみましょうか。僕が作ってもいいのですけれど、もしお時間があったら、ゲームだと思ってあなたが2番の歌詞を作ってみてください。何でもいいですよ。言葉のイントネーションが少しくらい違うところがあっても構いません。実際に歌ってみたらそれほど気にならない、という場合も多くあります。あまり気にしすぎる必要はありません。そしてもしできあがったら、実際に声に出して歌ってみましょう。
ここまで読んで、どんな感想をお持ちでしょうか。意外とカンタンそうだな……、自分にもできそうだという印象を持ってくださったら本当に嬉しいです。ゲームのような感覚で、楽しみながら作ってみていただけたらと思います。
動画解説版もありますので、ぜひご覧ください!
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