ミマス連載「歌を作ろう!」~宇宙でいちばんやさしい作詞作曲ガイド/ONTOMO出張版~

第6回(最終回) 自分の言葉で書こう~あなたの言葉を見つける~

読みもの
2018.08.08

作詞作曲に憧れる! でも音楽の心得がないから......と諦めるその前に、「宇宙一やさしい作詞作曲ガイド」をお手にどうぞ。
星や宇宙をテーマに音楽を作るミマスさん(アクアマリン)による『歌を作ろう!』(8月発売予定)より、ONTOMO出張版をお届けします! 言葉には上手くできない想いを、歌に託してみませんか。きっと新しい世界が始まりますよ。

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メインビジュアル:雨宮菜々子
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ミマス 作詞・作曲家/音楽ユニット「アクアマリン」メンバー
ミマス
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ミマス 作詞・作曲家/音楽ユニット「アクアマリン」メンバー
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...

自分の言葉で書こう

ここまでは、「とりあえず歌を1つ作ってみよう」ということを目標に話を進めてきました。ここからはさらに少し踏み込んで、「良い歌を作るためにはどうしたらいいか」ということを考えてみましょう。

まず1つ目は、歌詞を作るさいは自分の言葉で書くということです。作詞というと、ふだん使わないような難しい言葉を、どこかから持ってきて並べようとがんばってしまう人が多いように見えます。

確かに、文学的な難しい単語、エキゾチックな外国語を使うことで、楽曲全体の世界観を演出するという大きな効果が得られます。ただ、このワザをうまく決めるには、すこし経験が必要です。これから初めて歌を作ろうという人がやると、刺激の強い言葉をあやつりきれず、収拾がつかなくなることも多いのです。

あなたがふだん話している言葉を使ったほうが説得力が増します。それに、意外に思われるかもしれませんが、誰でも知っているやさしい言葉、ありふれた言葉こそ、じつは大きなパワーを持っているのですよ。

 

『まるい地球をひとまわり』の楽譜

そしてもう1つ、深みのある歌詞を作るためにオススメしたい方法があります。これは、歌を作るときに行うというよりは、日頃から気軽に行えるトレーニングのようなものです。

それは、「言葉の定義を自分でする」ということ。これはちょっと難しいので解説しましょう。

多くの人が、「愛」「幸せ」「夢」「自由」「豊かさ」といった、きわめて重要な言葉を、その意味を深く考えることなく軽く使っています。しかしこれらの言葉は、おそらくこれからあなたが作る歌の中でもっとも重要なキーワードとなるものでしょう。できるだけ丁重に扱うことで、歌の深みが増してくるはずです。

そのための良い方法があります。こうした抽象語1つ1つについて、その意味をあなたが自分で定義するのです。愛とは何でしょうか? 幸せとは何でしょうか? 作詞でその言葉を使うなら、その前に自分の言葉で定義してみましょう。

たとえばこんな感じです。僕は「夢」とは「その人をいろいろな世界へ連れて行ってくれる乗り物だ」と定義しています。心に芽生えた夢や憧れを大切にすれば、いつかその夢が自分をいろいろな所へ連れて行ってくれて、素晴らしい体験や出会いをもたらしてくれる。そういうことを人生で学んだからです。

また「自由とは何か」と聞かれたら、きっと多くの人が「何にも従わないこと」だと答えるでしょう。でも僕の定義はこうです。「自由とは何に従うかを選べることであり、究極の自由とは自分の信念と良心に従うことができることだ」。

これは人の数だけ正解があります。そして、この部分こそが作者や作品の「個性」というものになってきます。

 

作詞における個性とは、いかに他の人が使わないような言葉を使うか、ということではありません。誰もが普通に使っている言葉を、あなたはどう使うのかということです。その言葉に、どういう意味を与えるのかということです。だからくり返し言いますが、無理をして耳なれない言葉を使う必要はありませんし、1つの言葉を大切に扱うということが何よりも重要なのです(そうしてだんだん慣れてきたら、時にはあえて冒険的で奇抜な言葉を使ってみるのも楽しいですよ。そこからユニークな素晴らしい作品ができることもよくあります)。 

言葉を大切にしよう

僕は日頃から、歌作りは料理にとてもよく似ていると思っています。作品作りにおいて大切なことも、共通したものがあるような気がします。それは、「素材を大切に扱う」ということです。

料理においては、食材を大切に扱うということが、おいしい料理を作ることと無縁ではないような気がします。どんなに料理が上手な人でも、食材がなければ何も作れないでしょう。このお魚はどこの海から来たのか。このトマトはいったい誰がどんな苦労をして育てたものなのか。そんなことに思いを馳せ、敬意を払うことで、それだけでもほんの少し良いものが作れるような気がするのです。

同じように歌作りにおいても、その素材である「言葉」に敬意を払い、大切に扱うことが鍵になってくるはずです。

では、言葉を大切にするとはどういうことでしょう。それは、興味を持つこと、知ろうとすることではないでしょうか。

「自分は生まれてからずっと日本語を話してきた。だから日本語なんてもう知っている」――。そう言う方もいるかもしれません。でも、言葉という宇宙は果てしなく深遠なものです。大人になっても初めて耳にする言葉があるし、書けない漢字もたくさんあります。きっとあなたもそうでしょう。ここでもういちど謙虚になり、改めて自分の言葉づかいを豊かにするよう心がけることは無駄にはなりません。

 

僕は20代前半の頃、良い歌を作るためには日本語を深く知ることが大切だと思い、古典をたくさん読みました。そこで出会った豊かな言葉や表現の数々は、今でも大きな財産になっています。

とくに万葉集には大きな影響を受けました。雄大な風景を、わずかな言葉で描ききってしまう圧倒的な表現力! たとえば中大兄皇子の「わたつみの豊旗雲に入日さし今宵の月夜すみあかくこそ」という歌。夕陽に染まった雲と海原の感動的な景色が目に浮かぶようです。空気の感触や匂いまで伝わってきます。ああ、こんなふうに、「言葉で写真を撮る」なんてことが本当にできるんだと教えられました。

また万葉集では、身分の高い人から名もなき庶民まで、あらゆる人の作品が平等に扱われています。収められている歌の数も膨大です。「歌はみんなのものであり、誰が作ってもよいのだ」。そんな世界観が表れています。

「きみが歌を作ったっていいんだよ。どんどん作りなよ!」。千数百年の時を超えて、そんなメッセージで励まされているような気がしました。僕がずっと歌を作って生きてきたのも、今このような本を書かせていただいているのも、そのおかげかもしれませんね。

 

本を読むこと以外にも、語源に興味を持ったり、あえて他言語を学んだりすることも、日本語の素晴らしさや美しさを再発見するきっかけになることでしょう。

僕はスペイン語を少し勉強したことがありますが、いろいろな単語を覚えてゆく中で「おもしろい言い方をするな」と思うことが多々ありました。スペイン語ではクワガタムシのことを「シエルボ・ボランテ(飛ぶ鹿)」と言います。クワガタムシの角は確かに鹿のそれと似ていますよね。また、山脈のことを「シエラ」と呼ぶのですが、この単語は同時に「のこぎり」も意味します。遠く連なる山脈の稜線と、ギザギザしたノコギリの刃は形がそっくりです。日本人からすると、この両者を結びつけるなんてスゴイ発想だなと思います。そういった「言語の宇宙」に身を浸すと、どの言語にもその民族の視点や感性が色濃く反映されていることが分かります。

ミマスさんのスペイン語学習ノート

ふり返って日本語を改めてよく見てみると、やはり日本人ならではのモノの見方や感じ方が色濃くにじみ出ています。僕は星好きですから、星の名前を例にあげてみましょう。日本人はむかし、北極星のことを「ねのほし」と呼んでいました。漢字で書くと「子の星」。なぜか分かりますか? 日本には昔から方角を十二支の動物の名で呼ぶ文化があり、北はネズミ(子=ね)にあたるからです。

初夏の天頂に見える、円く並んだ星たちがあります。西洋ではそれをお姫様の冠に見立てて「かんむり座」を作りました。同じ星たちを日本では「太鼓星」「土俵星」「かまど星」「唐傘星」などと呼んだ地方があるそうです。円い星の列を盆踊りの人の輪に見立てた「踊り子星」なんていうのは秀逸だと思いますね。また、二つ仲良く並んだ「ふたご座」の星たちをお正月の門松に見立てた「もんぼし」「もんばしら」などという名前も残っています。どれも日本の歴史や文化、民俗が色濃く表れているでしょう。星の名前だけではありません。身のまわりに溢れる言葉、あなたが普段なにげなく使っている単語の一つ一つに日本人の血が流れています。そうしたことに敏感になれば、たくさんの美しい言葉を「あなたの言葉」にすることができます。

Fresco of costellations in Palazzo Farnese (Caprarola)

歌作りでは、字脚の関係で文字数に制約がかかってきます。「ほんとうは4文字の言葉を入れたいのだけれど、メロディとの関係で3文字にしなければならない」ということが頻繁におこります。「この表現でも悪くないがより良くしたい」と思う場合もあります。

そうなると、「これと同じ意味で他の言葉はないかな?」、「違う言い回しで同じことを言えないかな?」ということを考えなければなりません。そんなときには、普段からどれだけ言葉に対して感性を磨いているかがモノを言ってくるでしょう。言葉を大切にしていれば、言葉のほうから「ハイっ! 僕がいます!」と立候補して目の前に現れてくれるようになります(これは本当なんですよ)。

 

※今回で最終回です。連載の全文は、『歌を作ろう!』でお読みいただけます。

歌を作ろう! 宇宙でいちばんやさしい作詞作曲ガイドブック

歌を作ろう!

ミマス 著

【定価】 1,620 円 ( 本体1,500 円)
【判型・頁数】 4-6・128頁
【発行年月】 2018年8月
【ISBNコード】 9784276200210
【商品コード】 200210

ミマスさんによる連載「歌と旅と星空と」もお楽しみ下さい!

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