読みもの
2020.03.02
週刊「ベートーヴェンと〇〇」vol.11

ベートーヴェンとremix

年間を通して楽聖をお祝いする連載、週刊「ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、さまざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。
第11回は、ベートーヴェンとリミックス(remix)。21世紀のベートーヴェンを聴いてみよう!

ベートーヴェンを祝う人
小室敬幸
ベートーヴェンを祝う人
小室敬幸 作曲/音楽学

東京音楽大学の作曲専攻を卒業後、同大学院の音楽学研究領域を修了(研究テーマは、マイルス・デイヴィス)。これまでに作曲を池辺晋一郎氏などに師事している。現在は、和洋女子...

メインビジュアル:Moriz Jung (1885~1915))による《ベートーヴェン愛好家》(1911年、メトロポリタン美術館)

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リミックスで楽しむベートーヴェン

週刊「ベートーヴェンと〇〇」のなかで、もっともベートーヴェンに不釣り合いなキーワードであろうか。「リミックス remix」というのは編曲の一種なのだが、多くの場合、既存楽曲の録音された素材を切り貼りしたものに、新しい音素材を加えていくような手法を指す。ただしクラシック音楽に対してリミックスという用いる際はその限りではないようで、複数の楽曲を組み合わせたり、クラブミュージック風の編曲を意味したりと、実態はさまざま。

今回は、ベートーヴェンの作品をリミックスした楽曲の中から、現代音楽の作曲家が手掛けたものをご紹介したい。まずは《ピーターと狼》等で知られるセルゲイ・プロコフィエフの孫、ガブリエル・プロコフィエフ(1975~)による《ベートーヴェン9リミックス》(2011)。2:48~抜粋を聴くことができる。

《第九》第4楽章を素材に、大胆なサウンドにリミックス。合唱は編成に含まれず、なんと電子マリンバによる(事前に準備した音声素材を流せる)サンプラーで歌わせる! 普段から自分の作品をリミックスしているガブリエルらしい作品だ。2020年3月にNaxosからCDが発売予定となっている。

他にもリミックスとは題名で謳われてはいないものの、吹奏楽の世界で交響曲第1番《指輪物語》が有名なヨハン・デ・メイ(1953~)の《エクストリーム・ベートーヴェン》(2011)や……、

日本人の作品では西村朗(1953~)が《第九》への前奏曲になる楽曲として書いた《ベートーヴェンの8つの交響曲による小交響曲》(2007)に……、

野平一郎(1953~)がベートーヴェンのピアノ・ソナタだけを素材にしてコラージュした《ベートーヴェンの記憶》(2003)あたりも、リミックスの一種として捉えられるだろう。現代音楽が苦手という方でも、面白がってお聴きいただける楽曲ばかりなのでお薦めしたい! 他者が編曲した自作に厳しかったベートーヴェン自身がこれらを聴いたら、怒髪天を衝いてしまいそうではあるのだが……。

ベートーヴェンを祝う人
小室敬幸
ベートーヴェンを祝う人
小室敬幸 作曲/音楽学

東京音楽大学の作曲専攻を卒業後、同大学院の音楽学研究領域を修了(研究テーマは、マイルス・デイヴィス)。これまでに作曲を池辺晋一郎氏などに師事している。現在は、和洋女子...

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