ベートーヴェンと自作編曲
年間を通して楽聖をお祝いする連載、週刊「ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、さまざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。
第14回は、ベートーヴェンと自作編曲。自ら異なる楽器編成のために編曲した曲を聴き比べてみよう。
東京音楽大学の作曲専攻を卒業後、同大学院の音楽学研究領域を修了(研究テーマは、マイルス・デイヴィス)。これまでに作曲を池辺晋一郎氏などに師事している。現在は、和洋女子...
作曲者自ら編曲! ヴァイオリン協奏曲がピアノ協奏曲へ?
ベートーヴェンは自らの作品を度々、異なる編成のために書き直した。それらのなかには改訂版でも代用品でもない作品も含まれるのだが、残念ながらオリジナルに比べると軽視されがちなのが現状だ。
その筆頭格といえるのが「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op. 61」をピアノ独奏に置き換えた「ピアノ協奏曲 ニ長調 Op. 61a」である。面白いのは、ベートーヴェンは原曲のヴァイオリン協奏曲には書き残していないカデンツァ(独奏楽器のみで演奏する見せ場)を、このピアノ版のためには作曲していること。しかもピアノとティンパニが共演するという“謎展開”(第1楽章の15:54~)をしていくのでご注目を!
近しい編成にアレンジした楽曲としては、他に「ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 Op. 16」から「ピアノと弦楽のための四重奏曲 変ホ長調 Op. 16」も聴き比べてみると面白い。
一方、大きく編成を変えるものとしては、「ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調 Op. 14 No. 1」を編曲した「弦楽四重奏曲 ヘ長調 Hess 34」等も興味深いのだが、極めつけは「交響曲第2番 ニ長調 Op. 36」のピアノ三重奏版(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ)であろう。交響曲を室内楽に編曲すること自体は珍しくはないのだが、作曲者自身がピアノ連弾以外の編曲を手掛けているというのは比較的レアケース。どの楽章も新鮮な面白みがあるが、第2楽章を特にお薦めしたい。ベートーヴェンの交響曲のなかで最も演奏頻度の低いこの曲の魅力に気づくきっかけになるかもしれない。
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