イベント
2024.04.25
ブルックナー、スメタナから團伊玖磨まで

2024年アニバーサリー作曲家をコンサートで聴こう! 音楽ライターが選ぶ10公演

2024年にアニバーサリーイヤーを迎えた作曲家たちの作品。録音で聴くのもいいけれど、せっかくならコンサートに出かけて生演奏で楽しんでみませんか? 音楽ライターの城間勉さんが、2024年5月以降開催の10公演をチョイスしてくれました。予習用のプレイリスト付き!

城間 勉
城間 勉

1958年東京生まれ。子どものころからピアノを習ってはいたが、本当にクラシック音楽に目覚めたのは中学生時代にモーツァルトの魅力に触れてから。バレンボイム&イギリス室内...

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

昨年はラフマニノフの記念イヤー(没後150年)に当たり、世界中でこの作曲家の名作が取り上げられ、クラシック・ファン以外の人たちにも大きなインパクトを与えたのは周知の通り。今年もアニバーサリー・イヤーの作曲家にスポットを当てたコンサートがいくつも開かれる。ここでは、今年の5月以降に国内で開催予定の注目公演をご紹介していきたい。

アントン・ブルックナー

続きを読む

まずはこの作曲家だろう。後期ロマン派のシンフォニストとして絶大な人気を誇るブルックナーだけに、生誕200年となればコンサートでの花形演目になるのも当然。この機会に“ブルックナー苦手”の人もトライしてみよう。

東京都交響楽団の7月定期(7月4日5日@サントリーホール)には、世界的名匠となったヤクブ・フルシャが7年振りに登壇し、交響曲第4番《ロマンティック》を振る。ブルックナーの場合、常に「版」に愛好家の興味(飲みの席が盛り上がるネタ)がいくわけだが、今回フルシャは「コーストヴェット1878/80年版」を採用。2019年に出版された最新版はナマでどのように響くのか?

マルクス・ポシュナー指揮リンツ・ブルックナー管弦楽団 ブルックナー:交響曲第4番《ロマンティック》「コーストヴェット1878/80年版」による録音

もう一つ、こちらも外せないのが11月26日・27日(サントリーホール)にサイモン・ラトル率いるバイエルン放送交響楽団の来日公演での「交響曲第9番」。第6代首席指揮者に就任したラトルが意欲を燃やすブルックナー。コールス版を使用とのこと。コアな“ブルオタ”なら必聴。

サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルによる交響曲第9番(サマーレ、フィリップス、コールス、マッズーカ版を使用)

べドルジハ・スメタナ

ここは“お国もの”ということで、ペトル・ポぺルカ指揮プラハ放送交響楽団で交響詩《わが祖国》を聴きたい。ポぺルカは1986年プラハ出身。欧州のさまざまな楽団や歌劇場に客演して実績を上げ、2024/25シーズンにはウィーン交響楽団の首席指揮者に就任する注目株。今回は7月13日(東京オペラシティ コンサートホール)に「ヴィシェフラド」「シャールカ」「ボヘミアの森と草原から」「ターボル」「ブラニーク」を、7月11日(サントリーホール)に「モルダウ」と、分けて演奏する。

ウラディミール・ヴァーレク指揮プラハ放送交響楽団によるスメタナ《わが祖国》

ガブリエル・フォーレ

フォーレは室内楽においても卓越した筆致をみせ、その緻密で艶やかなトーンは聴き手を瞬時に魅了する。ミュンヘン・コンクール優勝以来、ますますクオリティを高める「葵トリオ」が、5月26日(神奈川県立音楽堂)に「〜フランスの風~」と題して晩年の「ピアノ三重奏曲」に挑む。作曲者存命中にコルトー、ティボー、カザルスも演奏したこの名作を、新世代のピアノ・トリオがどのように響かせてくれるのか想像するだけでワクワクする。

ボザール・トリオによるフォーレの「ピアノ三重奏曲」

座っているフォーレを囲む左からカザルス、ティボー、コルトー

ジャコモ・プッチーニ

6月の英国ロイヤル・オペラ来日公演での《トゥーランドット》が楽しみ(6月23・26・29・7月2日@東京文化会館。ソンドラ・ラドヴァノフスキー(トゥーランドット)、ブライアン・ジェイド(王子カラフ)、マサバネ・セシリア・ラングワナシャ(リュー)という超強力なソリストたちの起用はもちろんのこと、烈しい色彩感覚と躍動感あふれるアンドレイ・セルバンの演出、なによりもアントニオ・パッパーノの音楽監督としての掉尾を飾る音楽づくりに注目。

パッパーノ指揮サンタ=チェチーリア国立音楽院管弦楽団による《トゥーランドット》。トゥーランドット役は来日時にも歌うラドヴァノフスキー

アルノルト・シェーンベルク

シェーンベルクの作品もすでに20世紀音楽の古典だが、“シュプレッヒシュティンメ”&室内楽で演奏される「月に憑かれたピエロ」は、今日でも斬新な美を放つ。シアターミュージックの元祖ともとれる傑作を、ピアニスト小菅優とミヒャエラ・ゼリンガー(メゾソプラノ)ら精鋭アンサンブルが、その魅力を掘り下げる(6月5日 サントリーホール ブルーローズ)。サントリーホール チェンバー・ミュージック・ガーデン2024の一環。

ヴァイオリニストのコパチンスカヤがシュプレッヒシュティンメのパートを担当したシェーンベルク「月に憑かれたピエロ」

グスターヴ・ホルスト

1977年に発射され今もなお推進を続ける惑星探査機「ボイジャー」の功績を称え、清水研作が8番目の楽章として新たに作曲した「ボイジャー楽章付」の組曲《惑星》が7月7日の七夕の日に世界初演(すみだトリフォニーホール 大ホール)。シズオ・Z・クワハラの指揮、新日本フィル、ソプラノ秋本悠希らが繰広げるスペクタクル。当日は的川泰宣(JAXA名誉教授)らもトークに参加するなど宇宙マニア垂涎、生誕150年のホルストも驚きの? 大イベントとなること必至。

サー・アンドルー・デイヴィス指揮BBC交響楽団による《惑星》

團伊玖磨

團伊玖磨といえば、オペラ《夕鶴》や歌曲「花の街」などで親しまれているが、実はその創作の領域は交響曲や室内楽曲など多岐にわたる。そんな團伊玖磨の全貌に触れたい方は5月4日(直近だ!)に行なわれる「團伊玖磨生誕100年記念コンサート」(紀尾井ホール)へ。齊藤一郎指揮の読売日本交響楽団、小林沙羅(ソプラノ)らが昭和モダニズムを再現。

團伊玖磨「交響曲全集」。コンサートでは「第2番 変ロ調」が演奏される

フランシス・プーランク

日本でも愛好者が増えつつあるプーランクも生誕125年。その稀有な才能(軽いユーモアと深刻なトーンを鮮やかに併用)が、時代に合ってきているということか。原田慶太楼指揮の東京交響楽団、東響コーラス、熊木夕茉(ソプラノ)が「グローリア」を8月31日の定期公演(サントリーホール)で披露。古典的ハーモニーとストラヴィンスキーばりの鋭角的なサウンドの融合が聴きどころ。

小澤征爾指揮ボストン響による「グローリア」

ダリウス・ミヨー

プーランク同様にたくさんのピアノ作品を書いたミヨーだが、聴いておきたいのはやはり2台ピアノのための《スカラムーシュ》。中野翔太、金子三勇士、小井土文哉の3人が出演する「トリプル・ピアノ」(7月19日@横浜みなとみらいホール)のなかで演奏される。真に腕の立つ名手デュオの演奏ならばミヨーの色彩感とダイナミズムを存分に味わえる。演奏者は未定だが、この顔ぶれならどの組み合わせでも素晴らしいはず。

ラベック姉妹の演奏による《スカラムーシュ》

リヒャルト・シュトラウス&アントニン・ドヴォルザーク!?

アニバーサリーでなくても聴けるじゃないか、とお叱りを受けそうだが一度にそれぞれの名曲を聴けるだけでなく、入門者にもうってつけ(かなり独断ですが)なのが、日本フィルの6月定期(6月7日・6月8日@サントリーホール)。ホルンを愛好したシュトラウスが晩年に書きあげた「ホルン協奏曲第2番」とドヴォルザークの「交響曲第7番」を名匠・秋山和慶が指揮する日本フィル、そして信末碩才(同楽団首席ホルン奏者)という組み合わせで堪能する。今年で指揮者人生60周年というマエストロ秋山にとってのアニバーサリーでもある。

城間 勉
城間 勉

1958年東京生まれ。子どものころからピアノを習ってはいたが、本当にクラシック音楽に目覚めたのは中学生時代にモーツァルトの魅力に触れてから。バレンボイム&イギリス室内...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ