芸術監督キリル・ペトレンコがベルリン・フィルの可能性を極限まで開放する!
今年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が4年ぶりの来日、11月14日(火)〜26日(日)まで全国6都市全10公演を行ないます。2019年に首席指揮者・芸術監督に就任したキリル・ペトレンコとは待望の初来日。ミュンヘン時代のペトレンコの音楽を浴びるように聴いたという広瀬大介さんが、本公演への期待とプログラムの注目ポイントを紹介してくれました。
青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...
筆者がキリル・ペトレンコの名前をはじめて意識したのは、2007年、2009年と、ドイツのオペラ雑誌『オペルンヴェルト』で「今年の指揮者」に続けて選出されたときのことと記憶しています。うわさには聞いていた、その鮮烈な音楽作りを初めて体験できたのは、2013年のバイロイト音楽祭でのことでした。ワーグナー《ニーベルングの指環》で、歌手のペースに合わせつつも自身の音楽のペースを堅持し、緊張感がまったく失われないことに、本当に驚きました。
その後、2018年から1年、ミュンヘンに滞在していたので、浴びるようにペトレンコの音楽作りを知る機会に恵まれたのは、筆者にとってもっとも幸せなひとときでした。
ワーグナー、シュトラウス、チャイコフスキーの作品を積極的に取り上げ、そのすべてにおいて、細部まで磨き抜かれた演奏を繰り広げたペトレンコ。そのきめ細やかさは、綿密なリハーサルによって生まれたものでしょう。本番で、爆発的な説得力で音楽を解き放ったオーケストラと歌手に対し、指揮台で浮かべるペトレンコの満足そうな笑顔に、およそ虚飾と無縁なその性格が垣間見えたものでした。
2019年、ペトレンコはベルリン・フィルの新しい首席指揮者に就任。コロナ禍を挟んで活動が停滞した時期もありましたが、いま、その関係性はさらに深みを増しています。得意のオペラも年に1度はかならず採り上げ、2013年にはシュトラウスの《影のない女》で圧倒的な名演を聴かせました。複雑なスコアをときほぐし、再構成した上で、オーケストラの可能性を極限まで開放するペトレンコの流儀は、ここにきてさらにその精度、そして凄みを増しているようにも思われます。
今回、2023年の来日公演は、観客が聴きたい曲よりも、いま自分が採り上げたい曲が優先して選ばれている、という印象を受けます。
Aプログラムに含まれているアルバン・ベルクの《オーケストラのための3つの小品 作品6》は、現在、ペトレンコが各地のオーケストラに客演するときに積極的に採り上げています。その表現の強さは、後のオペラ《ヴォツェック》や《ルル》につながる、ドラマティックな音楽と表裏一体。
超名曲のブラームスの交響曲第4番も、その音楽的工夫がベルクの音楽の未来へとつながっていることが実感できるでしょう。
ペトレンコ/ベルリン・フィルによるブラームス:交響曲第4番
Bプログラムではレーガーの《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》作品132。バッハ以来の対位法的作曲法に通暁した作曲家の自信作を、オーケストラと指揮者が確信を持って演奏するはずです。
そして、ペトレンコがもっとも得意とするリヒャルト・シュトラウスの交響詩《英雄の生涯》。現代の超一流オーケストラの機能美、最先端を走り続ける指揮者の実力を、十二分に味わうことができるはずです。
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:キリル・ペトレンコ
日程・会場
2023年
11月14日(火)19:00開演 レクザムホール(香川県県民ホール)(高松)※プログラムA
11月16日(木)18:45開演 愛知県芸術劇場コンサートホール(名古屋)※プログラムB
11月18日(土)14:00開演 アクリエひめじ(姫路)※プログラムA
11月19日(日)14:00開演 フェスティバルホール(大阪)※プログラムB
11月20日(月)19:00開演 サントリーホール(東京)※プログラムB
11月21日(火)19:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎)※プログラムA
11月23日(木・祝)14:00開演 サントリーホール(東京)※プログラムB
11月24日(金)19:00開演 サントリーホール(東京)※プログラムA
11月25日(土)14:00開演 サントリーホール(東京)※プログラムB
11月26日(日)14:00開演 サントリーホール(東京)※プログラムA
演奏曲目:
<プログラムA>11月14日(高松)、18日(姫路)、21日(川崎)、24日・26日(東京)
モーツァルト:交響曲 第29番 イ長調 K.201
ベルク:オーケストラのための3つの小品Op.6
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98
<プログラムB>11月16日(名古屋)、19日(大阪)、20日・23日・25日(東京)
レーガー:モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ Op.132
R.シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》Op.40
問合せ:
高松公演:県民ホールサービスセンター TEL:087-823-5023(10:00~18:00)
名古屋公演:東海テレビ放送事業部 TEL:052-954-1107(平日10:00~18:00)
姫路公演:パルナソスホール TEL:079-297-1141
大阪公演:キョードーインフォメーション TEL:0570-200-888(11:00~18:00日祝休み)
東京公演:クラシック事務局 TEL:0570-012-666(平日12:00~17:00)
川崎公演:ミューザ川崎シンフォニーホール TEL:044-520-0200(10:00~18:00)
©Stephan Rabold
関連する記事
-
沖澤のどかに50の質問!〈前編〉舞台に上がるときの気持ちは? いちばんおもしろか...
-
阪 哲朗がリードする、山形交響楽団の熱く湧き上がる挑戦力と成長の源泉を探る
-
東京フィルハーモニー交響楽団の2024シーズン・プログラムが発表!
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly