イベント
2018.10.04
ブルガリア国立歌劇場・日本公演直前スペシャル

湯山玲子さんに教わる、オペラ《カルメン》の「ヤバすぎる」魅力

10月5日・6日に公演されるブルガリア歌劇場のビゼー作曲オペラ《カルメン》。それに先立ち、著述家でプロデューサーの湯山玲子さんがブルガリアで取材した公演を踏まえて、トークイベントで熱く語りました!

取材・文
東端哲也
取材・文
東端哲也 ライター

1969年徳島市生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。音楽&映画まわりを中心としたよろずライター。インタビュー仕事が得意で守備範囲も広いが本人は海外エンタメ好き。@ba...

撮影:編集部

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知らなくても感動する! ビゼーの《カルメン》

オペラはよくわからない……そんなあなたに朗報。

まもなく(っていうか今週末!)来日公演が行なわれるブルガリア国立歌劇場の《カルメン》が凄いらしい。

何しろ、合唱が盛んで数多の名歌手を輩出している「声の王国」ブルガリアで、2017年秋の初演から異例のロングランを続けたという話題の舞台。

しかも、そもそもが今回の日本ツアーを想定して、伝統芸能である「能」と「古代ギリシャ劇」とを融合させたコンセプトの演出による新プロダクションなのだとか……って言われても、今ひとつピンとこないかも?

ここでカルメンのおさらい!

劇音楽を得意としていたジョルジュ・ビゼーが、メリメの小説を原作にパリのオペラ=コミック座のために書き下ろし、1875年に初演されたオペラ《カルメン》。

 

フランス・オペラの……というより全オペラ作品の中で随一の知名度を誇る人気演目で、今も世界中の劇場で毎年のように上演されているドル箱作品だ。生まれて初めてオペラを観るなら、先ずこの《カルメン》から!

 

自由奔放なジプシー娘のカルメンに心を奪われた純情な青年ドン・ホセが、そのために身を持ち崩して転落人生まっしぐら、最後には愛憎のもつれから、その手でカルメンを刺し殺す……という衝撃のストーリーが、情熱的なスペインのリズムに彩られた親しみやすいメロディにのって展開。

 

難しいことは何もなし、ただ黙って客席に座っているだけで誰もが楽しめるはず。

ここでは、今回の公演に先立ち、9月に恵比寿のアート・カフェ・フレンズで行なわれ大いに盛り上がった、人気の湯山玲子さん(著述家・プロデューサー)によるイベント「《カルメン》ヤバいです! カルチャー文脈から見たオペラトーク」から、彼女の発言をここでまとめてご紹介。

これを読んで、今週末いきなり《カルメン》に行っちゃえ!

湯山玲子
湯山玲子。日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。作曲家・湯山昭の長女。
恵比寿のアート・カフェ・フレンズ
湯山玲子さんのオペラトークイベントは、9月6日に恵比寿アート・カフェ・フレンズで行なわれた。
湯山さんは2017年秋にブルガリア歌劇場で《カルメン》を取材している。

知っていたらもっと感動する!《カルメン》の魅力

湯山玲子さんのお言葉その1

初心者も楽しめる人気オペラだからって、ナメちゃいけない。ビゼーは天才メロディ・メーカー、現代で例えるならポール・マッカートニーに相当

先ず、短いながらも作品の内容を見事に表現している前奏曲がすごい。有名な〈闘牛士の歌〉の軽快な旋律はもちろんのこと、クライマックスの惨劇を予見した不気味な〈運命のテーマ〉まで盛り込んである。そしてカルメンが登場して最初に歌う名刺代わりのアリア〈ハバネラ〉もすごい。半音ずつ下降していく旋律はまさに「不良女」の音楽そのもの。とにかくすべてがキャッチーでカッコいい。

ビゼーがもし、現代に生まれたとしたら世界的なヒットメーカーになったはず……あのポール・マッカートニーのような。

湯山玲子さんのお言葉その2

150年近い昔に書かれた作品とは思えない、この現代性って一体、何なの? 今を生きる50代女性の私の心にも刺さりまくり

モーツァルトの《魔笛》は確かに素晴らしい作品だとは思うけれど、意味不明でオタク的な要素も多く、ファンタジック過ぎて正直、ディズニーランドみたいでリアルじゃない。それに比べて《カルメン》には現実味がある。

例えば第1幕、鐘の合図と共に仕事終わりの煙草工場の女性たちがゾロゾロと外に出てくると、男たちがそれを目当てに集まってくる。そこで恋のさや当てが繰り広げられる様子は、アフターファイブの「銀座コリドー街」などでよく見られる風景と、ほとんど同じかも。

湯山玲子さんのお言葉その3

カルメンは自由奔放な女性だけど、決してフラフラと恋に生きる「不思議ちゃん」キャラではない。むしろ自立した、ガチで生活力のある女

特に日本人男性は恋に奔放な女性を、(自分たちにとって都合がいい)ちょっとユルくて生活能力のない女の子みたいに思っている(思いたい)節があるけれど、カルメンは違う。煙草工場で働き、自分でお金を稼いでいる自立した女であり、しかも密輸団にも関わっていたりして、むしろめちゃめちゃ仕事のデキる女。

そして、これは結婚願望の強い適齢期の日本人女性には耳の痛い話かもしれないけれど、自分を安売りしない、誰のものにもならない生き方を選べる強い女。

湯山玲子さんのお言葉その4

ホセの許嫁ミカエラは、清純な田舎娘のように見えて、実は男を手玉にとるコツを熟知したしたたかな女

ホセを連れ戻しに密輸団まで追いかけてくるミカエラは、清純で一途な田舎娘のように見えるが、ホセを説得する際に彼の母親が危篤だからという、男にとっては最強カードを効果的にチラつかせるあたり、案外したたかな女なのかもしれない。

要するに、ミカエラは《ベルサイユのばら》に出てくるロザリーみたいなタイプかも。男にはウケがいいが、同じ女性からはこの手の女は嫌われる。

湯山玲子さんのお言葉その5

第2幕の最後で「カルメン愛してる!」と激情的に言葉を結ぶ愛の歌を投げかけるホセを、ばっさり切り捨てるカルメン最高

カルメンのために牢屋に入っていたホセはそこから出てすぐに彼女のもとに駆けつけ、初めて出会った日にカルメンから投げつけられた今では萎れた花をポケットから取り出して、牢の中ではいつもこれを眺め君を想っていたと、テノール歌手にとって屈指の名アリアである〈花の歌〉を情熱的に歌い上げるが、それに対してカルメンが「いいや、アンタは私を本当には愛してない」と魔性の女ぶりを発揮する場面が圧巻。

特に今回、カルメンを演じるナディア・クラスティヴァの演技と低音の歌唱に凄みを感じる。彼女はまるでカルメンを演じるために生まれてきたような歌手、いわば「ナチュラル・ボーン・暴れんぼう」な魅力がある。

なお、同イベントの後半コーナーに登場して、湯山さんと絶妙なオペラ・トークを繰り広げたのは、今回の日本公演で指揮を務める原田慶太楼さん。

湯山さんに負けず劣らず弾丸トークの原田慶太楼さん。

フランス語のセリフ台本を自ら手掛け、現地ソフィアでの2017年秋の初演を大成功に導いた、若手のカリスマ。現在の活動拠点であるアメリカで10年間オペラ指揮者、またオーケストラ指揮者としても活躍を続けている期待のマエストロだ。

さあ、スター街道まっしぐらの彼に会うためにも今週末、東京文化会館に行ってみよう!

指揮者・原田慶太楼が語る!

湯山さん主宰の「爆クラ」は、ほぼ毎月1回ゲストを招いて開かれるクラシック音楽のトーク&リスニングイベント。
《カルメン》のスコアを持参して、ベートーヴェンやドヴォルザークのスコアとの厚さの違いを比べ語る原田さん。
公演情報
ブルガリア国立歌劇場 ビゼー《カルメン》 全4幕(プラーメン・カルターロフ版)

原語上映/日本語字幕付き
予定上演時間:2時間45分(休憩含む)

日時:
2018年10月5日(金) 18:30開演
2018年10月6日(土) 15:00開演

会場: 東京文化会館

出演: ブルガリア国立歌劇場管弦楽団&合唱団
カルメン:ナディア・クラスティヴァ(10/5)、ゲルガーナ・ルセコーヴァ(10/6)

劇場総裁・演出: プラーメン・カルターロフ

指揮: 原田慶太楼

問い合わせ: ジャパン・アーツぴあ Tel.03-5774-3040
公演の詳細はこちら

取材・文
東端哲也
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東端哲也 ライター

1969年徳島市生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。音楽&映画まわりを中心としたよろずライター。インタビュー仕事が得意で守備範囲も広いが本人は海外エンタメ好き。@ba...

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