大人の妖しいパーティを演出! ソプラノ歌手・中嶋彰子インタビュー
東京・春・音楽祭2018の中でも、4月6日(金)オールナイトで繰り広げられる異色のイベント『Cabalet(キャバレー)を巡る物語』について、演出するソプラノ歌手、中嶋彰子に電話インタビューした。
今年も東京春祭に新風を巻き起こす!
現在、満開の桜で賑わう上野で開催中の東京・春・音楽祭2018。14回目を迎える今年は、過去にない刺激的で冒険的な試みが行なわれる。
新たに加わった会場「東京キネマ倶楽部」(鶯谷)で、2部構成のオール・ナイト・イベント『Cabalet(キャバレー)を巡る物語』が催されるのだ。
企画・演出・出演をつとめるのは、能とシェーンベルクを融合させた『月に憑かれたピエロ』で東京春祭に新風を巻き起こした歌手の中嶋彰子。海外を拠点に活動する中嶋が、クラシックの音楽祭の常識にとらわれないユニークな感性で「1920年代のキャバレー文化」を蘇らせる。前代未聞の艶やかな大人のパーティが、上野の夜を妖しく彩ることになりそうだ。
中嶋 クラシックの伝統的ではない会場で、仲間の音楽家やアーティストと型にはまらないコンサートをやりたいと、ずっと考えていました。日本では、クラシックのコンサートというと観客と演奏家と距離がありますけれど、ヨーロッパでは色々な形態の音楽の楽しみ方があります。
ウィーンでも毎週、週末にはナイト・イベントという形で劇場に次々に仲間がやってきて、そこでいろいろなセッションが行なわれ、アーティスティックで壁のない場が生まれますし、私の家でもそうしたパーティをやることがあるんですよ。
仲間と歌っていると、詩人や作家や絵描きや映画監督が集まってきて、そこで語られる会話もとても深かったり、新しい発見があったりするんです。日本だと、最終電車で家に帰らなければとか、いろいろな制約があると思いますが……。
この催しの第2部は深夜の1時にスタートする。が、そこでひるんでは「祭り」を楽しむ者としての名がすたるというもの。非日常でクリエイティヴな祝祭が、一夜限りで経験できるのだ。
中嶋 9時30分開演の第1部の台本はもう書き上げてあるんです。幕があくと1922年にトリップし、オープニング・ナンバーで全員が登場したあとは、上海、21世紀のバビロンと言われたベルリン、そして憧れの街パリへと汽車の旅が続きます。
舞台にはキャバレーのホストやダンサー、ベルリンのキャバレー界のスター、クララ・ヴァルドーフや当時実際に存在した日本人の音楽家、貴志康一の姿も見えます。シャンソン歌手の聖児セミョーノフや、ガールズの純名里沙、辰巳真理恵、増井めぐみも活躍し、ジャズ・バンドやバーレスクなダンサーたちも登場します。
ガールズは私が立ち上げた日本オペレッタ研修所のメンバーで、“踊れる歌手”ばかりなんです。本当のオペレッタは踊れないとダメですからね……聖児セミョーノフのシャンソンは、クラシックとはだいぶ違いますよ。アドリブもたくさん入りますし、とてもウィットが効いています。
深夜から始まる秘密のエンターテイメント
深夜スタートの第2部は、さらにディープなエンターテイメントが繰り広げられる。
中嶋 第2部に関しては、まだ内容は秘密です(笑)。少しだけお伝えすると、私の仲間の歌手たちが飛び入りするかもしれないし、大道芸人やさまざまなエンターテイナーの方が乱入するかも知れません。ディーバの裏話も聞けるかも。
それだけでは内輪の遊びになってしまいそうだけど、来てくださった人たちの度肝を抜くような、お洒落な大人の世界を作りたいと思っています。
そのためには借金もしなければならないのですが、4月4日までクラウドファンディングも設けています。参加してくれる仲間は「タダでもいい」と言ってくれるし、私も自分のパーティに来てくださるなら赤字でもいいと思ったのですが、ご協力いただけるととても嬉しいです。
東京キネマ倶楽部は、中嶋にとっても理想のキャバレー空間を再現できる空間だったという。
中嶋 見た瞬間「こんな場所がまだあったのか!」と驚いてしまいました。鶯谷の駅の前ですから迷いませんし、お客様も不安は無用です(笑)。「東京」というより「上野」「下町」という雰囲気なんですね。
キャバレーというと、おじさんが楽しむ場所、というイメージがあるかも知れませんが、本来はそれとまったく違う成熟したカルチャーなんです。お洒落でグロテスクで、とても自由表現を尊重しているのが「キャバレー文化」だと思うんですよ。
能とシェーンベルクを融合させたり、現代にキャバレー文化を蘇生させたり、中嶋のアイデアは大胆でつねに型破りだ。
中嶋 北海道の釧路という、文化的な空気から遠い場所に生まれて、大自然の中で空想ばかりしていたんです。才能もないのに生まれた時代や場所のおかげで、最初からこの世界では大海に入っていました。有り難いことに、小さい役というのをほとんどやらないで来たんです。
音楽とともに生きてきて、今プロデュースや演出をすごくやりたいなと思っているので、こうして仲間が集まってくれて感激しています。絶対楽しめる時間をお届けしますよ!
日時: 4月6日(金) 21:30開演(20:30開場)
会場: 東京キネマ倶楽部
出演: ソプラノ 中嶋彰子
シャンソニエ 聖児セミョーノフ
ガールズ 純名里沙、辰巳真理恵、増井めぐみ
ピアノ 斉藤雅昭
サクソフォン 丹沢誠二
ベース 山本裕之
トランペット 村山貴幸
ドラム 大場 俊
振付 NaHeek
衣装 吉野勝恵(アトリエヨシノ)
Barのマスター 榎本晋輔
曲目: 《キャバレー》より Willkommen、Mein Herr (エブ/カンダー)
《キャバレーソング》より 夜のさまよい人、アルカディアの鏡 (シェーンベルク)
《三文オペラ》より メッキー・メッサーのモルタート、海賊の花嫁 (ブレヒト/ヴァイル)
愛の讃歌、ばら色の人生 、蘇州夜曲、ラストダンスは私に /他
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