東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて「NIPPONフェスティバル」4月に開幕――市川海老蔵が挑む、歌舞伎とオペラの融合
東京2020オリンピック・パラリンピックがいよいよ近づいてきました。スポーツ界が盛り上がるのはもちろんですが、7月の開幕に向かって、さまざまなイベントが用意された文化の祭典「東京2020 NIPPONフェスティバル」も着々と準備が進んでいます。そのキックオフイベントとして開催されるのが、歌舞伎とオペラが融合した壮大な舞台『KABUKI×OPERA「光の王」Presented by ENEOS』。去る1月29日に行なわれた記者発表会の模様をレポートします。
編集プロダクションで機関誌・広報誌等の企画・編集・ライティングを経てフリーに。 四十の手習いでギターを始め、5 年が経過。七十でのデビュー(?)を目指し猛特訓中。年に...
1回限りのスペシャルな公演は、芸術の新たな価値をつくるレガシーへ
16世紀末から17世紀にかけて、ほぼ同時期に生まれたとされる日本の歌舞伎と、ヨーロッパのオペラ。
このふたつの舞台文化が融合し、しかも1回限りというプレミアムな公演が、4月18日に東京体育館で行なわれる『KABUKI×OPERA「光の王」Presented by ENEOS』(以下、『光の王』)だ。記者発表会は、公益財団法人東京 オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 副事務総長の古宮正章氏による挨拶から始まった。
「オリンピック・パラリンピックは、スポーツだけでなく文化の祭典でもあります。これはオリンピック憲章でも謳われていて、オリンピズムの基本原則には『オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである』とあり、さらに5章39条には、期間中に『複数の文化イベントのプログラムを計画しなければならない』とあります」
そのようなオリンピックの精神にのっとり、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて行なわれる文化の祭典が「東京2020 NIPPONフェスティバル」で、『光の王』はそのキックオフイベントとして行なわれる。
「オペラと歌舞伎の融合。両者は違う領域で育ってきたものですが、どちらも世界的に知られる舞台芸術として昇華されてきました。そのふたつが今回は融合して新たなステージにいくんだろうなと思います。そして芸術の新たな価値をつくり、レガシーとして残っていくことを期待しています」
続いて、本公演のパートナーであるJXTGエネルギー株式会社から、取締役 常務執行役員の中原俊也氏が登壇し、『光の王』への期待を語るとともに、チケットプレゼント・キャンペーン(50組100名)を実施することを発表した。また、歌舞伎という日本の文化を継承していってほしいとの願いから、歌舞伎教室への招待も行なうという。どちらも2月14日に詳細を発表するとのこと。
歌舞伎の演出のもと、オペラの名作アリアが楽しめる!?
この原稿を書いている時点では、『光の王』の脚本は現在制作中で、演出等に関する情報はまだ明らかにされていない。わかっているのは「善と悪の対決を描いた物語」だということ、「伝統的な歌舞伎の数々の名作をベースとしながら、東京2020大会の公式イベントにふさわしい祝祭感」を盛り込んで新たに創作された物語だということ、そして「ストーリーの中に、日本人にとても馴染み深いオペラ楽曲を随所に織り込んでいく」ということだ。
記者発表では、オペラ側から出演が決まっているソプラノのアンナ・ピロッツィ、バス・バリトンのアーウィン・シュロットから映像によるメッセージが届けられた。
Tokyo 2020 提供
イタリア・ナポリ出身で、ヴェルディ作品を中心に実績を重ねるアンナ・ピロッツィは今回が初来日となる。
「歌舞伎界の高名な演出家のもと、名作オペラのアリアを歌うことにとても興奮しています。歌舞伎の演出と教えを重んじ、最高のパフォーマンスを皆さまにお楽しみいただきたいと思います」
Tokyo 2020 提供
ウルグアイで生まれ、《ドン・ジョヴァンニ》や《フィガロの結婚》等で主演するほか、タンゴのアルバムも出しているアーウィン・シュロットからは、全編日本語というサービス精神たっぷりの映像が届いた。
「メトロポリタンのオペラと国立歌劇場の日本公演以来の来日になりますが、今回は偉大な歌舞伎役者でおられる十一代目市川海老蔵さんとともに、オペラと歌舞伎ファンの皆さまのために公演できることを光栄に思います」
海老蔵として最後の舞台かもしれないので、「思いを切る」気持ちで臨みたい
歌舞伎界からは、十一代目市川海老蔵が登場。『光の王』への意気込みを語った。
「今回のオリンピックのテーマは、多様性と調和。オペラと歌舞伎、そして多様な芸能が調和されていく。恐らく作品の中核にはそういうものが込められることになると思いますし、非常に大事な仕事だと思っています。後々になって、いろんなところで行なわれるような、レガシーになるような作品にできたら、と思います」
作品のテーマとして、「挑戦とはなんだ。」というメッセージが掲げられている。
「昨今、どなたも感じているかもしれませんが、挑戦しづらい世の中、挑戦すると風当りが強くなる風潮があるのかな、と思います。今回、己はもちろんのこと、歌舞伎の方、オペラの方、またスタッフさんも含めて、新しいことに挑戦することになるわけですよね。本作を通じて、何を言われても動じないような、挑戦の姿勢を見せていきたいですね。また、(今年5月に十三代目市川團十郎白猿を襲名する予定の)私としては、海老蔵として最後の公演になるかもしれませんので、思い切って、まさに『思いを切る』という決意で臨みます」
歌舞伎とオペラの融合という側面では、彼の父である十二代目市川團十郎は新国立劇場で2003/2004シーズンにオペラ公演『鳴神/俊寛』の演出を手掛けている。海老蔵本人も過去に『源氏物語』でカウンター・テナーのアンソニー・ロス・コスタンツォと共演した経験があり、それが『光の王』で生かせるのでは、と自信をのぞかせた。
「以前、父が『鳴神/俊寛』をオペラとして演出したとき、私も傍らで立ち会わせていただいたのですが、やはりオペラと歌舞伎は近いものがあるな、という印象を受けました。発展の歴史もそうですし、物語が重要で、歌もある。共通するところがたくさんあるんですよね。
また、私自身もオペラ歌手と共演させていただいた経験から、彼らの声量、その迫力は身に染みています。そうしたことを計算に入れたうえで舞台を構成できるのは楽しいですね。多くの人に観ていただきたいのはもちろん、このイベントがオリンピック・パラリンピックに向けて大きなエネルギーを生みだすようなものになってくれたら、これほどうれしいことはありません」
彼ら3人に加え、藤間勘十郎が演出、そしてジョルディ・ベルナセルの指揮で東京フィルハーモニー交響楽団が出演することが決まっている。更なるキャストの情報は近日公開予定だそうだ。
会場は歌舞伎の会場でもオペラハウスでもなく、東京体育館という広大な空間が用意された(全6500席を予定)。歌舞伎やオペラの要素を取り入れつつ、どちらとも違うオリジナルな舞台になりそうな『光の王』。続報が待ち遠しい。
日程 2020年4月18日(土)17:00 開演(予定)※1回限り
場所 東京体育館
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷1丁目17-1
「千駄ヶ谷駅」から徒歩1分
「国立競技場駅(A4出口)」から徒歩1分
発売時期(予定)
[抽選販売] 2月14日(金)10:00 ~ 2月24日(月)23:59
[一般販売] 3月7日(土)10:00 ~ 3月17日(火)23:59
※発売期間は予告なく変更する場合がございますので、予めご了承ください。
チケット料金 SS席 25,000円 / S席 18,000円/A席 12,000円 / B席 10,000円/Z席 2,020円(税込)
※Z席はステージの一部が見えない席です。一般販売から開始します。
関連する記事
-
スポーツがテーマの近代フランス音楽〜サティ、ドビュッシーら大作曲家が音で描くテニ...
-
パリ・オリンピック2024 競技会場でフランス音楽史めぐり
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly