2019北九州国際音楽祭/特集「音楽祭が熱い!」

“MAROオケ”など響ホールの豊かな音響を生かしたオリジナル企画が魅力!~2019北九州国際音楽祭

イベント
2019.08.09

日本でトップクラスの音響をもつ北九州市立響ホールを中心に、秋の2ヶ月間に開催されるのが北九州国際音楽祭。毎年恒例のNHK交響楽団第1コンサートマスターの篠崎史紀が主宰するオーケストラをはじめ、第一線で活躍するスターアーティストが登場。意外に東京からの交通の便もいいので、10月・11月の週末は北九州へ!

ナビゲーター
山田治生 音楽評論家
山田治生
ナビゲーター
山田治生 音楽評論家
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...
北九州市立響ホール。2019北九州国際音楽祭はこのホールを中心に、10月6日(日)から11月24日(日)までの主に金・土・日に開催。北九州市に本社のあるスターフライヤーの航空便が夜中までかなりの頻度で飛んでいるので、日帰りするファンもいるとのこと。

北九州市出身のN響コンサートマスター主宰による“MAROオケ”

北九州国際音楽祭は、北九州市立響ホールを中心に、毎年、秋に開催されている。“国際”の名称の通り、これまでに、パリ管弦楽団、チェコ・フィル、サンクトペテルブルク・フィル、ユリアンナ・アヴデーエワ、エマニュエル・パユなど、世界的なオーケストラやアーティストが北九州市を訪れているが、この音楽祭の中核は、ここ独自のオリジナル企画に違いない。

なかでも、北九州市出身でNHK交響楽団コンサートマスターの篠崎史が中心となって編成される「マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ」(頭文字を並べると、篠崎の愛称である「MARO」となる)は、この音楽祭の名物的な存在となっている。

NHK交響楽団第1コンサートマスターで、北九州市文化大使の篠崎史紀。「MARO」という愛称で親しまれている。
「マイスター・アールト組」と「ライジングスター組」の総勢41名で今年は構成される「マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ」。その頭文字をとって通称“MAROオケ”。

篠崎がコンサートマスターを務め、指揮者なしで演奏するこのオーケストラは、プロ・オーケストラの首席奏者やソリストとして活躍するトップ・プレイヤーからなるマイスター・アールト組と、次代を担う若手奏者からなるライジングスター組とで構成される。

今年のマイスター・アールト組には、篠崎だけでなく、錚々たる面々が登場。東京都交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者・双紙正哉や2009年日本音楽コンクール・クラリネット部門第1位の田中香織らの北九州市出身者、そのほか、NHK交響楽団首席ヴィオラ奏者・佐々木亮、日本センチュリー交響楽団首席チェロ奏者・北口大輔、NHK交響楽団首席トランペット奏者・菊本和昭らが参加。

ライジングスター組では、ヴァイオリンにN響の倉富亮、チェロに葵トリオの伊東裕、アマービレ・クァルテットの笹沼樹、フルートに2013年日本音楽コンクールでともに第2位に入賞した多久和怜子と窪田恵美らも参加する。総勢41名の室内オーケストラは、響ホールのサイズにピッタリ。

今回は、ベートーヴェンの交響曲第2番、第4番、第5番「運命」を演奏する。北九州国際音楽祭でしか聴けないこのオーケストラは、響ホールまで足を運ぶ価値がある(10月27日)。

北九州でしか聴けないオリジナル企画

そのほか、オリジナル企画では、ヴァイオリンの米元響子、ピアノの菊池洋子、チェロの上村文乃のトリオにも注目。この3人は2016年に北九州国際音楽祭で初めてトリオを組んだ。

北九州国際音楽祭ミュージックアドヴァイザーの広瀬大介氏は、「そのときはブラームスのピアノ三重奏曲第1番を弾いていただきましたが、白熱した演奏でした。今年は、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番のほか、中恵菜さん、白井菜々子さんを迎えて、シューベルトのピアノ五重奏曲《ます》を演奏します。米元さんがリーダーシップを取りますが、お三方とも、激しくぶつかっていくタイプ。あれから3年経って、お三方のさらにパワーアップした演奏を、私自身、楽しみしています」という(11月2日)。

北九州国際音楽祭ミュージックアドヴァイザーの広瀬大介さん。「地元の人々の応援があり、一緒に楽しもうという温かい雰囲気があるのが音楽祭の原点であり、理想です」と話す。
ヴァイオリンの米元響子、ピアノの菊池洋子、チェロの上村文乃のトリオが初めてトリオを組んだ2016年の同音楽祭でのステージ。

ソプラノの森麻季と鈴木優人の共演も楽しみ。指揮者としても活躍する才人、鈴木優人は、今回、チェンバロとピアノを演奏。2人は、バッハ・コレギウム・ジャパンでも共演するなど気心が知れている。バロックから現代まで幅広いレパートリーを披露する(10月12日)。

ソプラノの森麻季とチェンバロ&ピアノの鈴木優人が共演。
©千葉広子

実績のある海外からの一流アーティスト

海外からは、ピアノのダン・タイ・ソンと、マレク・ヤノフスキ指揮ケルン放送交響楽団およびピアノのチョ・ソンジンが招かれる。

今年の音楽祭のオープニングを飾るのは、ダン・タイ・ソン。1980年のショパン国際ピアノ・コンクールの覇者である彼が、ショパンとドビュッシーを弾く(10月6日)。

広瀬氏は、「パデレフスキの小品も含めて、ミニアチュアといいますか、小ぢんまりとした、ピアノそのものの美しさやメロディの美しさを聴かせようというプログラムですね。それを響きの良い響ホールで聴けるのは貴重な機会です」と薦める。

ベトナム生まれ、モスクワ音楽院に学んだピアニスト、ダン・タイ・ソン。「ベトナム出身なので、歴史的にフランス音楽に対する親和性が高く、自分のこととして理解する下地があるように思います」(広瀬氏)
©王子ホール 藤本史昭

音楽祭は、マレク・ヤノフスキ&ケルン放送交響楽団のベートーヴェン・プログラムで締め括られる。広瀬氏は「速めのテンポの、切れ味の良い、ヤノフスキならではの演奏が聴けると思います。チョ・ソンジンは、昨年、ミュンヘンでチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴きましたが、すごく速いテンポで弾いても、全然崩れません。テクニックは、脂がのっているという感じがします。何より自信にあふれています。あのスケールの大きさなら、《皇帝》にぴったりです」という(11月24日)。

 

ケルン放送交響楽団を振るマレク・ヤノフスキ。「ドイツの放送交響楽団は、経営が安定していることもあり、その地域のトップの実力を持つことが多いですね」(広瀬氏)。
©Joern Neumann
1994年ソウル生まれのチョ・ソンジン。数々の国際コンクールで優勝もしくは入賞を果たし、「韓国からも応援団が来るかもしれませんね」と広瀬氏が言うほど、今もっとも注目すべき若手ピアニスト。
©Harald Hoffmann/DG

トップクラスの音響をもつ響ホール

北九州国際音楽祭の一番の魅力は、響ホールにあると思う。

ケルン放送響の演奏会が2008席のアルモニーサンク北九州ソレイユホール(旧・九州厚生年金会館)であるほかは、上記の公演はすべて響ホールで開催される。

シューボックス形式の720席のホールでは、リサイタルから室内オーケストラまで、素晴らしい響きを満喫することができる。広瀬氏も「響ホールの音響の良さは、日本の中でもトップ・クラスです」と太鼓判を押す。

響ホールでは、小学生や中学生、今年は幼稚園児も招いて、本プログラムのアーティストの本格的な演奏を聴いてもらう教育・特別プログラムも行なう。

そのほか、明治期に建てられた洋館「西日本工業倶楽部」(旧・松本邸)でサロン・コンサートがある。例年はクラシック中心だが、今年はジャズ(谷口英治ジャズトリオ10月18日)と邦楽(箏のLEO11月8日)のコンサートが開かれる。「ここはサロンですね。短めのプログラムのあと、ケーキとお茶を楽しみます」と広瀬氏はいう。

北九州国際音楽祭では、演奏者や曲目だけでなく、演奏会場も含めて、ここでしか聴けないユニークな企画が楽しめる。

サロン・コンサートの会場となる、明治期に建てられた洋館「西日本工業倶楽部」。終演後には庭園でティーパーティが開かれる。
音楽祭information
2019北九州国際音楽祭

会期: 10月6日(日)~11月24日(日)

会場: 北九州市立響ホール、アルモニーサンク 北九州ソレイユホール、西日本工業倶楽部、三木屋カフェ、西日本工業大学小倉キャンパス

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