イベント
2023.06.28
7月15日(土)14時 東京芸術劇場。オトナも嬉しいクリエイティヴなプログラムでクラシックの耳を育てる

湯山玲子が本気で挑む。子どもが本当に面白がるクラシックコンサートってどんなもの?

これまでクラシック音楽の新しい聴き方を提案する「爆クラ」や、クラシック音楽を野山に放つ「爆クラアースダイバー」など、クラシック音楽に親しむ企画を独自の視点で作ってきた著述家、プロデューサーの湯山玲子さんが、ついに子ども向けのクラシックコンサートを企画。「コドモ扱いが嫌いなこどものための」というキャッチの意味するものは? ヨーロッパを拠点に活躍する新進気鋭・阿部加奈子を指揮に迎え、不思議なクリーチャーがMCを務める、オトナも興味津々のプログラムの真意を、湯山さんに直接伺いました。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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「子ども向けコンサート」が嫌いな小学生だった

——湯山さんがいま、子どもたちにクラシック音楽を聴いてほしいと思われる理由は?

湯山 教養アイテムとして知識量を競ったり、アカデミズムの御墨付きに従ったり、権威の裏書きありきでクラシック音楽を「頭」で聴く傾向の強いオトナよりも子どもの柔軟な感性と耳で、クラシック音楽の扉を開けてほしいと思います。

日本におけるクラシック音楽は文明開化の昔より、一般大衆の文化啓蒙、教育のツールとして用いられてきた歴史があり、「子ども向け」クラシックコンテンツは実はインフレ状態。しかし、それらのほとんどは、簡単、分かりやすい、という切り口が前面に立って、本当に子どもの心にクラシックを叩き込めるようなクリエイティヴなプログラムは数少ないのが現状で、そこに一石を投じられれば、と。

ポルカから、現代音楽、日本人作曲家作品など、オトナの鑑賞に堪える内容にしています。

湯山玲子(ゆやま・れいこ)
学習院大学法学部卒。著述家、プロデューサー​、おしゃべりカルチャーモンスター。
著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(角川文庫)、上野千鶴子との対談集『快楽上等! 3.11以降の生き方』(幻冬舎)。『文化系女子という生き方』(大和書房)、『男をこじらせる前に』(角川文庫)等。TBS『新・情報7DAYS ニュースキャスター』等に出演。自らが寿司を握るパフォーマンス<美人寿司>、クラシック音楽の新しい聴き方を提案する<爆クラ>主宰。ショップチャンネルのファッションブランド<OJOU>のデザイナー・プロデューサーとしても活動中。日本大学藝術学部文芸学科非常勤講師。東京家政大学非常勤講師。名古屋芸術大学特別客員教授。(有)ホウ71取締役。父は作曲家の湯山昭。
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——湯山さんは子どものころ、子ども向けコンサートで子ども扱いされるのがイヤだったとか。子ども心にどんなところが嫌だったり面白くなかったりしたのでしょうか?

湯山 何せ、作曲家の娘なので、家では湯山昭の音楽はもとより、武満徹の《ノヴェンバー・ステップス》、三善晃、林光、バーンスタイン、ラヴェル、ドビュッシー、シェーンベルクがかかっており、湯山家のBGMとして空気のようにあったモーツァルトよりもそちらのほうが断然好きでした。

これらは、ある意味オトナっぽい「毒」がある作品ですが、一般的な「子ども向け」はそういう魅力的な要素をはじいていきます。薄っぺらな真・善・美の押しつけ、MCのキャラ、半ズボンとキャスケット姿のおにいさん、おねえさんの存在が本当に見え透いていて、嫌でした。これは小学校の時に思ったことです。

音楽の魅力を「紋切型でなく」ナビゲートする想定外の選曲とMC

——脳研究者の池谷裕二さんが「音楽は初期の経験がカギ。はじめに楽しい体験をすれば自ずと好きになる」と述べておられますが、子どもにとって楽しい音楽体験って、どのようなものでしょう?

湯山 動物であったり、人形であったり、身近な事物を描いたものだったり、何と言っても、身体が反応するリズミカルな曲は、子どものツボでしょうねぇ。今回はフランチェスコ・フィリデイの風船を4人の奏者が演奏する《狂気のエクササイズ》の本邦初演があります。風船が楽器になるという音楽のありかたはご存知、現代音楽と直結していますし、なによりも子どもは大喜びのはず。

MCは、フラミンゴの妖精フラ美とタコの女王、タコ江というドラァグクイーンたちであり、ナレーション原稿はワタクシ、湯山自身が書いており、音楽の魅力を「紋切り型でなく」ナビゲートしていきます。

フラミンゴの妖精、フラ美
タコの女王、タコ江

——今回の「こどもクラ」の、子ども扱いしない選曲のポイントは?

湯山 ポルカから、ロマン派、近代、現代音楽から、キャッチーな作品を選びました。「子ども向け」には外されるような、「死」というものを感じさせる、シベリウスの《トゥオネラの白鳥》、同じカミナリをテーマにしても、妙にウキウキして、私たちアジアのそれとはちょっと違うヨハン・シュトラウスのポルカ、ひじょうにオトナっぽい、洗練やエキゾチズムの感覚が魅力の、ラヴェルの〈パゴダの女王レドロネット〉などを選んでいます。

——最後に、「子どもにクラシック音楽を」と思っている保護者の方々へ向けて、メッセージをお願いします。

湯山 クラシック音楽は、日本人が音楽を楽しむときのよすがになる歌詞がない、抽象的な音を聴く芸術なので、クラシック聴覚とも言うべき聴く耳を育てなくてはいけません。そのために生のオーケストラの音響には早く触れておいた方がいい。その絶好の機会です。

MCの華やかさも含め、彼らがおもしろおかしく語っている内容は大人が楽しめる、「クラシックのガイダンス」になっています。そして、会場は極端な泣き声は遠慮していただきますが、少々の音はよし、としています。観客は自分たちの判断で「迷惑」の常識を考えてみる。あまりに不寛容になってしまった現在のコンサートマナーを緩め、19世紀中盤までは猥雑感がリアルだったコンサート会場、というのも目指したいと思っています。

公演情報
こどもクラ コドモ扱いが嫌いなこどものためのクラシックコンサート!

日時:2023年7月15日(土)14:00開演

会場:東京芸術劇場 コンサートホール

曲目

ヨハン・シュトラウスII世:ポルカ《雷鳴と電光》
グリーグ:《ペール・ギュント》組曲第1番より 第4曲〈山の魔王の宮殿にて〉
ラヴェル:《マ・メール・ロワ》より第3曲〈パゴタの女王レドロネット〉
シベリウス:組曲《レンミンカイネン》より 第2曲〈トゥオネラの白鳥〉
フランチェスコ・フィリデイ:《狂気のエクササイズ》
ヒナステラ:バレエ音楽《エスタンシア》組曲 より第4曲〈マランボ〉
川島素晴:《室内管弦楽のためのエチュード》~第3曲〈Spring〉
エルガー:《弦楽セレナード》ホ短調 作品20より 第2楽章
サン=サーンス:《死の舞踏》 作品40
アンダーソン:《ワルツィング・キャット》
湯山昭:《子どものための交響組曲》より 第2楽章〈海の子ども〉

出演:阿部加奈子(指揮)パシフィックフィルハーモニア東京(管弦楽)フラ美とタコ江(司会)

チケット料金

※全席指定 ※2歳未満のお子様は保護者1名につき膝上鑑賞に限り1名まで無料、ただし座席が必要な場合は有料
一般:5,000円 小学生以下:2,500円

チケット申し込み

パシフィック・ネットチケット

PPTチケットデスク 03-6206-7356(平日10:00-18:00)

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