イベント
2025.11.18
2026年1/30浜離宮朝日ホール、2/1神戸朝日ホールで童謡から名オペラのアリア・重唱まで

黒田博&祐貴 華麗なるバリトン親子がデュオ公演「音楽で生きるほど幸せなことはない」

黒田博と祐貴は、親子二代のバリトン歌手である。まさに「父子鷹」と呼ぶにふさわしい活躍をオペラやコンサートで続ける二人が、2024年に浜離宮朝日ホールで行なった初めてのデュオ・リサイタルは、見事な歌に愉快なやりとりも交え、大好評となった。そこで2026年の1月と2月には、同じホールでの再演に続けて、神戸朝日ホールでの初公演が実現する。

取材・文
山崎浩太郎
取材・文
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

(左から)黒田祐貴、黒田博 
撮影:ヒダキトモコ

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互いをプレーヤーとしてリスペクトする関係

――祐貴さんは、子どものころからお父さんの歌を聴かれていたんですか。

祐貴 それが、ぜんぜんそうではなくて(笑)。子どものころからクラシック音楽は大好きでしたが、歌とかオペラにはもう、全然興味がなかったんです。リビングにあるステレオのコンポの横のCDのケースには、父の趣味で交響曲やピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタなどのCDがたくさんあった。だからマーラーのシンフォニーとか、そういうものばかり聴いてました。

そこで、兄の影響もあって中学から吹奏楽部でトロンボーンをやりました。藝大も最初はトロンボーンで受験したんですが、落ちてしまったんです。

 トロンボーンの先生とも相談して、もう一度受けることも考えたようですが、どうしてもプレーヤーとして、音楽を演奏する人間になりたいから、一つの選択肢として、初めて声を聴いてくれと言われました。聴いてみたら悪くはない。どちらかといえばいい声をしている。

ただ、自分がここまで歌ってこられたのは、ラッキーの積み重ねでした。そのラッキーとは、素晴らしい人たちに出会えたことです。祐貴が僕と同じように人と出会えるのか、どこまでいけるのか、不安はありました。でも、音楽で生きていくのはひじょうに難しいことではあるけれども、こんな幸せなことはないとは自分自身が感じていましたから、自分で一生懸命歩いていくというのなら、止める気は一切ありませんでしたね。

祐貴 音楽で何かを表現する人になりたいと思うなかで、結果的に自分にいちばん合っていたのかもしれないのが、偶然声楽だったという感じです。ただ、そうして歌を始めて大学から大学院へと進むうちに、黒田博という声楽家が日本の音楽界、日本のオペラ界の中で、どれぐらいの人なんだっていうのがだんだん見えてきました。

父がこの世界で、真摯に芸術家として生きてきたことにはたいへん感謝しています。目標というよりも、偶然身近にいる人間として、一音楽家として、いちばん尊敬できる人間ではある。ですから一緒にコンサートに出る機会をいただけるのは、ほんとうに嬉しいです。

右)黒田 博 Hiroshi Kuroda(バリトン)
京都市立芸術大学卒業。東京藝術大学大学院修了後、イタリアにて研鑽を積む。時代を問わぬ幅広いレパートリーを持ち、新国立劇場、日生劇場、びわ湖ホール、二期会などの主催公演でモーツァルト4大オペラの他、ワーグナー『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『ローエングリン』『タンホイザー』『パルジファル』、ヴェルディ『椿姫』『アイーダ』『オテロ』『ファルスタッフ』、プッチーニ『ラ・ボエーム』『蝶々夫人』『トスカ』などさまざまなオペラに出演。新国立劇場では『軍人たち』『ラインの黄金』『フィデリオ』『ウェルテル』などの他邦人作品にも多数出演し、市川團十郎(十二代目)演出による『俊寛』ほか『天守物語』『黒船』『修善寺物語』『鹿鳴館』等に主演。最近では二期会『コジ・ファン・トゥッテ』ドン・アルフォンソ、神戸文化ホール開館50周年記念『ファルスタッフ』題名役で喝采を浴びるなど、的確な音楽作りと高い演技力で日本オペラ界を牽引する存在として活躍。また、たびたび出演を重ねている「NHKニューイヤーオペラコンサート」では歌唱のみならず司会者としても出演する他、NHK「プレミアムシアター」にて〈ご案内〉役を務めるなど、多彩な才能を発揮している。平成30年度京都府文化賞功労賞受賞。国立音楽大学教授。二期会会員

父子を抜きにしたバリトン・デュオとして、また舞台とは違う顔も楽しんでほしい

――今回は、お二人がいま得意とされているオペラ・アリアのほか、昭和の子どもの歌のコーナーもあるそうですね。

 子どもが友達とみんなで歌う歌、親子で一緒に歌う歌、あるいは親が歌って聴かせてくれる歌というものが、最近は少ないと思うんです。昔は山田耕筰、團伊玖磨、中田喜直、越部信義のような方たちが心をこめて、素晴らしい子どもの歌を作ってこられた。それらの歌を歌い継いでいきたいし、新しいものが生まれてくることも願って、取りあげようと思っています。

――同じ声域だからこその楽しいやりとりも楽しめそうですね。では、おしまいに祐貴さんに、みなさまへのメッセージをお願いします。

祐貴 黒田博と黒田祐貴という二人のバリトン歌手のデュオを、まずは父子というのを抜きにして楽しんでいただきたいのと、それとは別に、みなさんがふだんオペラの舞台で見ているイメージとはちょっと違う、そのへんにいる普通の親子みたいなところも、楽しんでいただけるようにしたいと思います。ぜひお聴きにいらしてください。

左)黒田祐貴 Yuki Kuroda(バリトン)
東京藝術大学首席卒業。在籍中に安宅賞、卒業時に大賀典雄賞・松田トシ賞・アカンサス音楽賞・同声会賞受賞。同大学院首席修了。修了時に大学院アカンサス音楽賞受賞。イタリアへ留学、キジアーナ音楽院にてディプロマを取得。2021年兵庫県立芸術文化センター『メリー・ウィドウ』ダニロでデビュー。以降、日生劇場『セビリアの理髪師』フィガロ、びわ湖ホール『死の都』フランク、アントロネッロ主催『ジュリオ・チェーザレ』アキッラ、神奈川フィル『ラインの黄金』ドンナーなどを演じ、好評を博す。また、ベートーヴェン「第九」、バッハ「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「ロ短調ミサ」、ウォルトン「ベルシャザールの饗宴」などのソリストとして、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団などと共演。ドイツリート研究にも積極的に取り組んでおり、ドイツ・カールスルーエにて研鑽を積む。日本コロムビア〈Opus One〉レーベルより「Meine Lieder」リリース。第87回日本音楽コンクール声楽部門第2位、岩谷賞(聴衆賞)受賞。第20回東京音楽コンクール声楽部門第3位入賞。二期会会員
公演情報
黒田博&黒田祐貴 バリトン・デュオ リサイタル2026

■東京公演

日時:2026年1月30日(金) 19:00開演

会場:浜離宮朝日ホール

出演:黒田博(バリトン)、黒田祐貴(バリトン)、大貫瑞季(ピアノ)

曲目
團伊玖磨:花の街
山田耕筰:からたちの花、鐘が鳴ります
中田喜直:めだかのがっこう、大きなたいこ
團伊玖磨:ぞうさん
越部信義:おもちゃのチャチャチャ
モーツァルト:オペラ《フィガロの結婚》より「男どもよ、ちょっと目を見開け」
ワーグナー:オペラ《タンホイザー》より「夕星の歌」
コルンゴルト:オペラ《死の都》より「わが憧れ、わが幻想」 
ほか

※都合により内容は変更となる場合がございます。

チケット:一般 5,000円、U30(30歳以下) 2,000円

問合せ:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990(日・祝除く10:00~18:00)

詳細はこちら

■神戸公演

日時:2026年2月1日(日) 15:00開演

会場:神戸朝日ホール

出演・曲目:同上

チケット: 4,000円

問合せ:フェスティバルホール チケットセンター

06-6231-2221(10:00~18:00)

詳細はこちら

取材・文
山崎浩太郎
取材・文
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

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