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2024.09.30
【Stereo×WebマガジンONTOMO連携企画】ピーター・バラカンの新・音楽日記 28

初めて一般客からキュレイターになった2014年の第1回から数えて10年 音楽フェスLive Magic最終回は2024年10月19、20日に開催決定

ラジオのように! 心に沁みる音楽、今聴くべき音楽を書き綴る。

Stereo×WebマガジンONTOMO連携企画として、ピーター・バラカンさんの「自分の好きな音楽をみんなにも聴かせたい!」という情熱溢れる連載をアーカイブ掲載します。

●アーティスト名、地名などは筆者の発音通りに表記しています。
●本記事は『Stereo』2024年9月号に掲載されたものです。

ピーター・バラカン
ピーター・バラカン ブロードキャスター

ロン ドン大学卒業後来日、日本の音楽系出版社やYMOのマネッジメントを経て音楽系のキャスターとなる。以後テレビやFMで活躍中。また多くの書籍の執筆や、音楽イヘ...

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円安による打撃で10年を一応の区切りとした

2014年に音楽フェスティヴァルに関わってみないかと誘われ、その結果誕生したのがLive Magicです。今年で10周年になります。それまではもっぱら一観客の立場でコンサート会場に足を運んでいましたが、いざ自分が関係者となると否応なしに内側の事情に悩まされることになります。

Live Magicではぼくの役割はキュレイター、つまり出演者を選ぶのです。自分が見たい人をまず思い浮かべますが、開催する会場の大きさから考えると大物を呼ぶことは無理です。そうすると必然的に知名度の高くないミュージシャンを中心に考えるのですが、今度はライン・アップを発表した時にお客さんの反応が伸びにくいわけです。

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運よく、ぼくはレギュラーのラジオ番組を持っているので出演者をそこで紹介することはできますし、その音楽を聴いて気に入った方はきてくれます。しかし、とくに海外から招聘する場合は渡航費、宿泊費などを計算に入れると小さなフェスティヴァルでも開催するのにかかる費用は相当なもので、なかなか利益を出すことは難しいです。Live Magicのお客さま満足度はかなり高いと自負していますが、音楽がものすごくよかった時も、結果的に赤字だったとなるとややしんどいものがあります。

そして2020年にコロナ禍がやってきました。2回はオンラインの開催となって、2022年は限定的な形でやりました。去年は久しぶりに通常の2日間の開催でしたが、コロナ禍の影響で出かける習慣が薄れた人が多く、土曜日の参加者に比べて日曜日は半分ほどにしかならないという前からの傾向がまた顕著になってきました。

そこでさらなる打撃を加えたのが円安。海外のミュージシャンの出演料、渡航費、宿泊費などがこんなに増えるとお手上げ状態になってきました。その円安が明らかに一過性のものだったら踏ん張りようがあると思いますが、今の日本の状況を考えるとそう簡単によくなるとも思えず、この10周年のタイミングでとりあえず一区切りにすると決めました。フェスティヴァル形式では無理があっても、将来的にもっと小規模のコンサートを無理のない形でやっていきたいと思っています。それはこれからのことですが、今年は今の形では最後のLive Magicを成功させたいです。

マシュー・ハルソールの素晴らしさを体験してほしい

このコラムで何度か触れているマシュー・ハルソールのアルバム「An Ever Changing View」は去年のぼくのベストでした。どうしても彼を今年のLive Magicに呼びたいと思って、バンドは7人編成なのでハードルはありましたが、我々の事情に理解があって柔軟に対応してくれたマネジャーのお陰で出演が可能になりました。日本ではまだまだ知られていないミュージシャンですが、最近のイギリスのジャズに興味のある方には響く人だと思います。彼の「スピリチュアル・ジャズ」はグルーヴもあり、決して難しい音楽ではないので、その素晴らしさをぜひ多くの音楽ファンに味わっていただきたいと思っています。

去年から狙っていたミュージシャンでいうと、十代の女性バンジョー奏者ノーラ・ブラウンがいます。ニューヨークのブルックリン育ちなのにアパラチア山脈の古いスタイルのバンジョーがすごく巧くて、去年の横浜ジャグ・バンド・フェスティヴァルで来日した時に演奏を聴いてすぐLive Magicに誘ったところ、ちょうどイェイル大学に入学することが決まって、1年生として9月から授業が始まり、10月に来日することは無理だと断られました。でも、翌年は可能かもしれないということだったのでまた声をかけて、幸いOKが出ました。ノーラは地方のライヴ・ハウスを何か所か回ってから、相棒のフィドル奏者ステファニー・コールマンと2人で最後にLive Magicに登場します。

何が出るかわからないシシド・カフカのプロジェクト

毎年ぼくにとって新たな出会いがありますが、今年はインドネシアのソウル・グループです。ジャヴァ島東部スラバヤのThee Marloesです。コアのメンバーは3人、ヴォーカルとキーボードのナターシャ、ギターのラカ、ドラムズのトミー、そしてライヴではベイスとパーカションの2人が加わって、5人編成で70年代後半のころを思わせる洗練されたネオ・ソウルを演奏します。日本人に受けそうな気がします。

ソウル系のバンドでは30年以上ごりごりのファンク一辺倒のオーサカ=モノレールが会場を盛り上げてくれますが、今年は全体的にアクースティックな演奏が多いです。ギター、フィドル、アコーディオンでダイナミックな演奏を聞かせるスコットランドのラウーはとても楽しみな久しぶりの来日。

「民謡交換プロジェクト」は民謡クルセイダーズのフレディ塚本率いる民謡グループ、こでらんに~とエチオピアの伝統音楽を演奏するモセブ・バンドのメンバーによる新たな試みがいよいよ実現します。

また奄美大島のシマ歌を三味線の伴奏で歌う里アンナとドラマーの佐々木俊之の意外性に富んだ素晴らしいデュオも楽しみです。

いい意味で予想できないのはシシド・カフカが主宰する、100種類以上のハンド・サインを出しながら即興でリズムを奏でるリズム・プロジェクト「エル・テンポ」です。

最後にブルージーなギタリストが2人います。最近出会った長野県のジローヤマオカ、そしてLive Magicの初回から唯一すべてに出演している濱口祐自

このライン・アップで有終の美を飾るべく、10月19日(土)、恵比寿ガーデンプレイスでお待ちしています。詳細はぜひ公式サイトでご確認ください。

~10th Anniversary~ Peter Barakan's LIVE MAGIC! 2024 Finale
公演情報
~10th Anniversary~ Peter Barakan's LIVE MAGIC! 2024 Finale
LIVE MAGIC! 2024 Finale
2024年10月19日(土)13時開演

会場:恵比寿 ザ・ガーデンホール / ザ・ガーデンルーム出演:Matthew Halsall / el tempo / オーサカ=モノレール / LAU / 里アンナ×佐々木俊之 / 民謡交換プロジェクト(Moseb Band+こでらんに~) / Thee Marloes / Nora Brown / 濱口祐自 / ジロー・ヤマオカチケット: 指定席 19,000円(税込)、スタンディング 16,000円(税込)、学割(スタンディングのみ)5,000円(税込)

 
 
 
ピーター・バラカン来日50周年記念トークショウ
2024年10月20日(日) 15時30分開演
会場:恵比寿 ザ・ガーデンルーム
出演:ピーター・バラカン …and more!!
チケット:全席指定 4,500円(税込)
ピーター・バラカン
ピーター・バラカン ブロードキャスター

ロン ドン大学卒業後来日、日本の音楽系出版社やYMOのマネッジメントを経て音楽系のキャスターとなる。以後テレビやFMで活躍中。また多くの書籍の執筆や、音楽イヘ...

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