インタビュー
2025.10.22
ショパンコンクールファイナリストインタビュー

ピオトル・アレクセヴィチ〜大切なのはピアノ、作曲家、聴衆とのコミュニケーション

第19回ショパン国際コンクール、ついに全日程が終わり結果が発表されました! 翌日の取材会にて、第5位に入賞したポーランドのピオトル・アレクセヴィチさんにお話をうかがいました。

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

©Krzysztof Szlezak

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最後まで導いてくれるのは音楽の力

——第1ステージからファイナルステージまでを振り返って、どのようにモチベーションと集中力を保ってきましたか?

アレクセヴィチ そうですね、まず第一に、私たちは皆、音楽のために生きていて、芸術のために生きていると思います。それこそが、私たちがここに来た理由です。ショパンの国ポーランドとして文化を守り、他の人たちと分かち合うために、ここに集まっているのだと思います。

そして私たちには、音楽の美しさを、そしてその感情を人々と共有するという、信じられないほど素晴らしい機会が与えられています。

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ですから、この質問に答えるのは少し難しいですね。というのも、実際のところ、あの長いコンクールの期間をどうやって乗り越えられたのか、自分でもよくわからないからです。

とても過酷なんです。本当に大変です。練習を重ね、各ラウンドの異なるレパートリーに取り組まなければなりません。でも最終的には、私たちを最後まで導いてくれるのは、やはり音楽の力だと思います。

ピオトル・アレクセヴィチ
2000年4月9日生まれ。ヴロツワフでパヴェウ・ザヴァツキ教授、チューリヒでコンスタンチン・シェルバコフに師事し、ニコライ・デミデンコにも学ぶ。2025年ヒルトン・ヘッド国際ピアノコンクール第2位。ワルシャワで行なわれたポーランド国内ショパン・コンクールでは2度の優勝を果たし、第18回ショパン国際ピアノコンクールではズビグニェフ・ジェヴェツキ教授賞を受賞。
2024年にはテキサス・ピアノ協奏曲コンクールおよびスイスのシェンク・コンクールで優勝し、すべての特別賞を獲得した。ベルリン・フィルハーモニー、パリのサル・コルトー、サンパウロのサラ・サンパウロ、ヴロツワフのナショナル・フォーラム・オブ・ミュージック、ワルシャワ・フィルハーモニー、大阪シンフォニーホールなど著名なホールに出演。

——ステージで演奏するときにもっとも大切なことは何ですか?

アレクセヴィチ やはり「コミュニケーションの要素」だと思います。自分が奏でている音を聴き、それに耳を傾け、そこから何かを感じ取り、考えをめぐらせる。それは、単にピアニスティックなレベルを超えたところにあることです。

観客と対話するように、そして自分のパートナーであるピアノとも対話するようにして音楽を作り上げていく。さらに、できるかぎり作曲家、今回はショパンとも心を通わせ、彼の音楽への理解に少しでも近づこうとすること。

そして、その音楽を他の人たちに、できるだけ直接的で、伝わり合う形で届けること。これこそが、私にとってもっとも重要な要素だと思います。

それに加えて、もうひとつ大切なのは「確信(conviction)」です。自分がしていることは正しい、自分が下した解釈上の決断は正しい——そう確信をもって、「これこそが自分の奏でたい音楽であり、このようにして聴衆と分かち合いたい」という明確な意思を持つこと。それがとても大切だと思います。

ショパンに会えたら1曲弾いてくださいと頼みたい

——ショパンにメッセージを送るとしたら、何を伝えたいですか?

アレクセヴィチ うーん……「自分が彼に何かを伝える」という発想があまりなかったですね。ショパンには何も言わないでおこうと思います。むしろ、彼に何かを語りかけてほしいですね。

もし一つだけお願いできるなら、「どうか何か一曲、弾いてください」と言うと思います。それによって、私たちが今、当時の伝統や彼自身の音楽理解、そして芸術に対する姿勢からどれほど離れてしまっているのかを感じ取れるでしょうから。

——どの作品を弾いてほしいですか?

アレクセヴィチ どんな作品でも構いません。ノクターンでも、マズルカでも、ワルツでも、即興曲でも……本当に、どんな曲でも聴いてみたいです。

ショパンがピアノや音楽にどう向き合い、彼の頭の中で何を思っていたのか。もちろん、彼はその思考の多くを楽譜に書き残していますが、それでもなお、演奏という行為には譜面では伝わらない要素があると思います。

彼自身が自分の音楽をどう扱い、どのように理解していたのか。そして、私たちが彼の音楽に込められた原理や本質をどれほど理解できているのか、そのことを確かめてみたいのです。とても興味深いことだと思います。

©Wojciech Grzedzinski
三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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