インタビュー
2025.09.22
月刊誌『音楽の友』連動企画 フレッシュ・アーティスト・ファイル 【Q&A】

【Q&A】日本音楽コンクール覇者・竹田舞音さん(ソプラノ歌手)、自然体で歌いたい

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、演奏家たちの素顔を紹介していきます。第14回は、ソプラノ歌手の竹田舞音さんにご登場いただきました。

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

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1991年生まれ。昨年の日本音楽コンクール声楽部門で第1位に輝いたソプラノ歌手・竹田舞音さん。東京藝術大学を経て、今年の春までカールスルーエ音楽大学に在籍。現在は日本とドイツを拠点に活躍されています。明るくポジティヴで、取材中にはチャーミングな一面も見せてくれました。

最近の趣味はボルダリング

Q1 幼いころの将来の夢は?

職人。幼少期から図画工作をするのが大好きで、手先を使って作業する仕事に憧れていました。

Q2 声楽家を目指すまでの道のりを教えて。

幼いころにリトミックとピアノを、小学生からはバレエを習っていました。音楽に合わせて身体を動かすことが心地よくて、よくディズニーのCDを流しながら歌って踊っていましたね。そのころから人前でパフォーマンスをすることに憧れていました。

中学生のころ、一般の高校と音楽高校のどちらに進むかを考えたときに、クラシックの声楽を学業として考えようと思いました。

Q3 声楽を選んだ理由は?

どうしてでしょうね(笑)。ミュージカルなども聴いていましたが、小さいころからずっとそばにあったクラシックの「声楽」を選びました。

Q4 出身地はどんなところ?

大阪の箕面市です比較的京都に近い、山のふもとに住んでいました。周りは畑で、通学路も山道のような場所。一人で登下校するときは、芝居をやってみたり、歌を歌ったりしていました。

Q5 趣味は?

ボルダリング。比較的新しい趣味です。手芸とか編み物とか裁縫も大好きなのですが、永遠に続けてしまいそうで…… その日その場で終われるボルダリングをしています。

旅行に出かけたときには、吹きガラスの体験や、ろくろ体験とかをするのも好きです。

Q6 自身をどんな性格だと思う?

楽観的な性格だと思います。周りからは「アクティヴ」とか「フットワークが軽い」とかいわれることが多いですね。

Q7 好きな食べ物はなに?

お寿司、ラーメン、焼肉…… 絞れないぐらいたくさん好きなものがあります!

Q8 本番前の勝負飯は?

決まりは設けていないのですが、本番の2時間前にはお米を食べていることが多いです。白飯とおかずのセットとかおにぎりとかです。

手芸や工芸など、”作る”ことがお好きな竹田さん。大人になってからはガラス職人の仕事に興味があるとか

リヒャルト・シュトラウスが大好き

Q9 好きな作曲家は?

リヒャルト・シュトラウスです。

彼のとくにオペラ作品には、ほかにはない臨場感や演劇的な要素が音楽にふくまれています。そのため旋律を美しく歌う、健康的な立派な声で歌う以上に、言葉を話しているかのように歌い、その歌詞の背景を描かなければいけません。そのいろいろな要素がたくさん詰まっていているところに魅力を感じます。

Q10 いつか演奏してみたい曲は?

いまの年齢だと、ベンジャミン・ブリテン《イルミナシオン》。もう少し声が熟してからはリヒャルト・シュトラウス《4つの最後の歌》を歌いたいです。

Q11 憧れの演奏家は?

フランスのソプラノ歌手サビーヌ・ドゥヴィエルさんです。

彼女は「コロラトゥーラ」という、とても軽やかで高い声を出せる技術を持っているのですが、その“技”を感じさせない、とても自然な歌いかたをされます。私は「自然体で歌うこと」をいちばんの目標にしているので、とても参考になります。

ドゥヴィエルさんの演奏では、フランスものをよく聴いていて、フランス人ならではの発声ポジションのテクニックも彼女から学びたいと思っています。

Q12 練習にルーティンはある?

難しい曲を練習するときは、どんなときでも安定した身体、声で歌えるフランスものを一度歌ってから取り組みます。

Q13 音楽や、歌の練習を「辛い」と感じたこと、時期はある?

辛いと感じたことはないのですが、もどかしいとかイライラするというのはありました。高校生のとき、声楽家として身体が成熟していなかったので、筋肉の構造や声を出すシステムをアタマでわかっていても、腑に落ちるところまでには至りませんでした。そのもどかしさというのは、いまでも覚えています。

あ、いまでも暗譜に苦労して辛い!というのはありますが(笑)。

Q14 人生観を変えた言葉は?

カールスルーエ音楽大学の歌曲科の白井光子先生がおっしゃった「それぞれの言葉や単語には温度や距離がある」ということばです。

先生から「歌曲の歌詩に『読む』という単語がでてきたとき、その登場人物がどういう状況なのか、『読んだ』ことでどう心が動いたのか―― 歌うときに単語の奥に潜む意味を表現できたらいいよね」とアドヴァイスをいただき、すごく腑に落ちました。

色でも、「黒」はその言葉自体が深いし、「黄」はパッと明るい。言葉そのものが持つ色とか力とかを表現することが、歌曲には求められています。この緻密な作業をやっていかなければならないと知って、一気に課題量が増えました(笑)。でも一個ずつ丁寧に続けていったら、すごいものが出来上がるにちがいない!とも思ったのです。歌曲に対する思いや深みを強く感じた言葉でした。

Q15 歌を歌う上でいちばん大事にしていることは?

究極は自然体でいること、と思っています。技術的に難しい箇所でも、感情が内から出てきたからそこに音楽があった、というふうに歌いたいのです。

なので、私が歌う曲は絶対に私のお気に入りのもの。曲に共感できて、心から歌いたいというものを選んでいます。

撮影中、竹田さんが姫りんごの樹を発見!
小さくて可愛らしい実でした

歌う曲は、お気に入りのものを

Q16 1日お休みがあったら、なにをしたい?

川のせせらぎが聴こえる山のなかでゆっくりしたいです。

Q17 お気に入りの本・楽譜は?

小学生のときに出合った湯山昭さんの楽譜『お菓子の世界』(全音楽譜出版社)です。ピアノを趣味で習っていたとき、『ハノン』とか教本をイヤイヤ弾いていて…… よくある話だと思うのですが(苦笑)。でも、この『お菓子の世界』を見たときに、ケーキとか金平糖とかショートケーキとかいろいろなお菓子が“音”で表現されていて、それを理解できたのが衝撃でした。音へのインスピレーションみたいなものを、知らず知らずのうちに考えさせてもらえるきっかけをくれた本でしたね。ピアノの世界の魅力を教えてくれました。

いまでも気分転換に弾いています。

Q18 最近感動した舞台は?

カールスルーエの劇場で観たオペラ2本――リヒャルト・シュトラウスのオペラ《ばらの騎士》、ヴェルディの《椿姫》です。

《椿姫》はひさしぶりに全幕を観ました。物語がサクサクと続いていって、無駄がない! 聴きどころしかないオペラだなと。改めてヴェルディのすごさ、《椿姫》が繰り返し上演される理由に気がつきました。

Q19 会ってみたい作曲家は?

3部門で考えてみました。

まず歌曲部門だったら、ヴォルフ。遺されている手紙や自伝を読んで、自信家でこだわりの強い人だなと感じました。きっと気難しい性格だったと思うのですが、だからこそちょっと会ってみたいです。

オペラ部門だったら大好きなリヒャルト・シュトラウス。話をきいてみたいというより、感謝の気持ちを伝えて、褒めてあげたい(笑)。

その他の部門だったらブリテン。彼自身がたくさんの苦悩を経験するなかで描いた音楽のなかでの光―― 作品のインスピレーションはどこから来ているのか聞いてみたいです。彼の歌曲作品は難しい詩を選んでいることも多いので、どのように理解、解釈しているのかも聞いてみたいです。

Q20 これまで音楽を続けてこられた理由は?

まあ、楽観的ではあると思うんですよね。終わりがない世界で、この年齢になってもまだドイツで勉強している。いろいろな可能性があるからこそ、この歌の世界に足を踏み入れてしまったというところがある。ある意味での「諦めの悪さ」だと思います。でも年齢とともに熟していく声、表現に対する好奇心もあると思います。

「20年後どうなっていたい?」という質問に、「今年で34歳になるので、20年後は54歳。声と向き合っていくのはもちろんのこと、その年齢だからこそ演奏できる作品、役柄の表現をしたいと思います」と答えてくれた
竹田舞音さんInformation
フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ 67 竹田舞音ソプラノ・リサイタル ピアノ:左近允 茉莉子

日時・会場:9月23日15時・ヨコスカ・ベイサイド・ポケット

出演:竹田舞音(S)、左近允茉莉子(p)

曲目:シューマン《海の妖精》、マーラー《ラインの伝説》《夏に小鳥はかわり》《春の朝》《思い出》、グリーグ《世の中なんてそんなもの》《秘密を守るナイチンゲール》、ガー二―《緑の森の木の下で》《眠り》《春》、シューマン《私に語れなどと命じないで》《悲しい響きで歌わないで》、山田耕筰《曼珠沙華》、中田喜直《サルビア》、シェーンベルク 《四つの歌》から、ラヴェル《5つのギリシャ民謡》

問合せ:横須賀芸術劇場046-823-9999

詳細はこちら

月刊誌『音楽の友』Information

『音楽の友』9月号(8月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、堀内優里さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!

「音楽の友」2025年9月号記事詳細はこちら

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