インタビュー
2024.08.23
JAPAN JAZZ POP PIANO COMPETITIONが9月21・22日開催、9月23日には「かわさきジャズ」でガラコンサートも

ピアニストの自由を取り戻す!画期的なジャズ・ポップスのコンクール 創設者の情熱

日本では珍しい、ポップスとジャズに特化したコンクールである「JAPAN JAZZ POP PIANO COMPETITION」が第3回を迎える。昨年からは「かわさきジャズ」ともコラボレーションし、9月23日には上位入賞者によるガラコンサートが開催される。このコンクールの目的や、審査方法などについて、審査員長を務めるミハウ・ソブコヴィアクさんに熱い思いをうかがった。

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

受賞者にトロフィーを授与する、JAPAN JAZZ POP PIANO COMPETITION創設者のミハウ・ソブコヴィアクさん(右)

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ピアニストがかつての芸術的自由を取り戻すために

――コンペティションの設立の目的について詳しく教えてください。募集要項には「ピアニストがかつての芸術的自由を取り戻すこと」とありますが……。

ミハウ・ソブコヴィアク(以下、M) 15年くらい前から、さまざまなクラシックのコンクールで審査をしてきました。そこで気がついたのが、毎年たくさんの若きピアニストが、みんな同じようなレパートリーを弾いていることです。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタなど、もちろんさまざまな解釈をすることが可能ですが、基本的には楽譜に書いてある通りに演奏する必要がありますよね。それで自分のクリエイティヴィティをどこまで発揮することができるでしょうか。

昔の演奏家は作曲も即興演奏もしていました。私はこのコンペティションを通して、本来の演奏家のスタイルを復活させたいのです。

審査委員長のミハウ・ソブコヴィアクさんは、ポピュラーを弾くピアニストで国家メダルも受章した父の影響もあり、クラシックのピアニストとして出発しながら、現在はクロスオーバーを中心に活躍している

ミハウ・ソブコヴィアク

ポーランドの音楽家の家庭に生まれる。10歳でテレビ番組「Akademia muzyczna (アカデミア・ムジチナ)」に出演しピアニストとしてデビュー。その後、ポーランド国立フィルハーモニー・ホール等多くのコンサート・ホールで演奏し、海外の国際音楽祭にも多数参加する。作曲家、ジャズ・ピアニストとしても活躍。ワルシャワ・ショパン音楽院(現・ショパン音楽大学)ピアノ科卒業後、チューリッヒ音楽院研究科留学。アンジェイ・ヤシンスキ、イェジー・マルクウィンスキ、テレサ・マナステルスカ、ガブリエラ・ワイスの各氏に師事。1995年フランツ・リスト国際ピアノコンクール(ポーランド)入賞。1996年フレデリック・ショパン協会(ワルシャワ)より奨学金を得る。1997年ヨーロッパ・ピアノフォーラム(ベルリン)に出演。2002年第36回モントルー・ジャズ・フェスティバル(スイス)のプレスルームで演奏。2017年にリリースしたCD「Jazz Loves Chopin」は e-onkyo music の Top 100 Album ランキングで1位を獲得。2018年公開の映画『羊と鋼の森』にピアニスト役として出演。2021年にJapan Jazz Pop Piano Competition を設立。2022年5月に開催された「ウクライナ人道支援チャリティー・コンサート」にて神奈川フィルハーモニー管弦楽団と演奏。現在、福島学院大学教授、昭和音楽大学講師。ピティナ、ショパン国際ピアノコンクール in ASIAの審査員、ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japanの審査員長。
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審査で重要視されるのはグルーヴ、そしてオリジナリティ

――クラシックに比べて、ジャズやポップスのジャンルのコンクールはひじょうに少ないですよね。

 クラシックとは違う観点になるので、審査をするのが難しいということもあるかもしれません。リズム感や、グルーヴをいかに感じられているかという点がひじょうに重要です。

編曲においてはどれくらい元の楽譜から離れているか、いかに豊かなハーモニーを使っているか、といった点も重要になってきます。当コンペティションのYouTubeチャンネルをご覧いただくと、過去の入賞者の演奏をお聴きいただけますが、皆さんがとてもオリジナリティにあふれた作品をつくり、演奏をされていることがよくお分かりになると思います。

昨年(2023)のグランプリ「サンフォニックス 賞」を受賞した天野 薫さんの演奏。天野さんはこの夏、イタリア・ブレシアのフェスティバルに出演し、コンクールへの参加が実際のステージへと繋がる可能性を秘めている

クラシックの勉強をしている人でも挑戦しやすい「演奏家」部門

――このコンペティションにはジャズ、ポップスそれぞれのジャンルについて「演奏家」「クリエーター」「特級」の3部門がありますね。

 「演奏家部門」は従来のコンクールのように、楽譜通りに演奏していただきます。既成曲でも編曲作品でも構いません。ぜひクラシックの勉強をされている方にも出場していただきたく、設置しています。

最初はこちらに出ていただき、徐々にご自身の編曲や自作曲で出場していただく「クリエーター部門」用意されたリード・シートを基にその場でアレンジを行なう「特級」に挑戦していただけたら嬉しく思います。

参加者の皆さんには、ぜひ他の部門の出場者の演奏を積極的に聴いていただきたいです。

――リード・シートをもとにその場で編曲、ということについてもう少し具体的に教えていただけますか?

 その場でコードやメロディの書いてある紙をお渡しし、30秒ほどの予見時間後すぐに演奏をしていただきます。ここでもやはりシンプルな楽譜から豊かなハーモニーやコード進行といったものをいかに作り出していくか、を見させていただきます。

コンペティションでは、演奏後に審査員から丁寧なフィードバックが行なわれる
昨年(2023)のグランプリ「東放学園賞」を受賞した大塚恵美さん(右)

歩き方や表情など、舞台上のプレゼンテーションも大切

――他に審査において重要視されていることはありますか?

 プレゼンテーションについても見ています。歩き方、演奏中の表情や衣装など、楽曲や演奏にあったものを届けられているかという点です。演奏はショーですから、視覚から入る情報も大切です。ただ、もちろんいちばん大切なのは演奏や楽曲の内容です!

――審査には4名の先生方が入られますが、どのように選ばれているのでしょうか。

 実際に演奏や作品を聴き、さまざまなジャンルの素晴らしい音楽家の皆様にお願いをしています。そのため、バランスの良い観点から審査を行なうことができています。

入賞者のガラコンサートが「かわさきジャズ」とコラボ

 審査はもちろんですが、入賞者が出演するガラコンサート(「かわさきジャズ」の一環として開催)では、ほんとうに素晴らしい演奏に出会うことができるはずです。ポピュラー音楽は若い人にもアピールしやすいので、生演奏やアナログの楽器の良さを、ぜひ多くの方にお伝えしていきたいですね。

現在はピアノ・ソロのみの審査だが、いずれはベースやドラムを加えてのピアノ・トリオなどの部門も作りたいと話してくれた。今年も才能あふれる若きアーティストとの出会いに期待が膨らむ。

第3回 JAPAN JAZZ POP PIANO COMPETITION
コンペティション

日時 :2024年9月21日(土)、22日(日)

 

会場:渋谷美竹サロン

 

詳細は

JAPAN JAZZ POP PIANO COMPETITION ホームページ

ガラコンサート

ジャズを通じてさまざまな出会いと交流の機会を創出する「川崎らしさ」にこだわったジャズ・フェスティバル「かわさきジャズ」とのコラボレーション。

どのようなアレンジが飛び出すか、未知の音楽体験の連続で、3時間もあっという間に過ぎ去りそうだ。

 

日時 :2024年9月23日(月・祝)

 

時間:

13:30  開場
14:00  表彰式(入賞者にメダルと賞状の贈呈)
15:00  GALA CONCERT(金・銀・銅賞受賞者が出演)

      グランプリと副賞の受賞者を発表
18:00  終演予定

 

会場: 昭和音楽大学ユリホール  

 

チケット: 全席自由 2,000円、U25 1,000円
※未就学児入場不可

 

詳細は

JAPAN JAZZ POP PIANO COMPETITION WINNERS GALA CONCERT

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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