インタビュー
2024.02.09
3月2日に横浜みなとみらいホール「Just Composed in Yokohama —現代作曲家シリーズ—」に登場!

山澤慧が挑むチェロ×エレクトロニクスによる未知の音響体験や楽譜が5段に分かれた最難曲

©Ayane Shindo

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横浜みなとみらいホールによる「Just Composed in Yokohama —現代作曲家シリーズ—」は、気鋭の作曲家への新作委嘱と委嘱作品の再演を軸として、同時代音楽を未来へ継承するシリーズ企画。1977年に横浜市が開始した「日本の作曲家シリーズ」を受け継ぎ、1999年に現在のシリーズ企画にリニューアルして以来、継続して開催されている。

「Just Composed 2024」に登場するのは、現代音楽の演奏や作曲家への委嘱に積極的に取り組んできたチェリストの山澤慧さん。日本のエレクトロニクスを代表する有馬純寿さんとともに、チェロとエレクトロニクスによる技巧と音響を探究する。

委嘱作品では器楽や声楽、電子音楽、インスタレーションなど多岐にわたる作品を手がける北爪裕道さんが、自らエレクトロニクスで共演。さらにファーニホウによる難曲にも挑戦する盛りだくさんなプログラムは、山澤さんの強い想いで選曲されたそう。山澤さんに、今回のコンサートの聴きどころや現代音楽についてうかがいました。

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わからないままでもOK! ホールで「何だか面白い」を見つけよう

——現代音楽ときくとかまえてしまう人もいると思いますが、山澤さん流の楽しみ方やコツを教えてください。

山澤 ホールに来ていただいて、音以外の部分でも何か発見してみてほしいです。奏者が何か難しそうなことしているなー、変わったことをしているなー、という感じで観察してみるのも面白いかもしれません。

よくわからなくても、「何か意味があるに違いない……」と考えすぎず、よくわからないものはよくわからないもののままで良いと思います。現代美術を見るとき、「何だかよくわからないけど面白い」という鑑賞の仕方もあると思います(もちろん作者は何か難しいことを考えていると思うのですが……)。

「何だか面白い」ものを発見しに、来ていただきたいと思います。

©Ayane Shindo
山澤慧(やまざわ・けい)
東京都町田市出身。東京藝術大学附属高校、同大学を経て、同大学院修了。 大学卒業時に同声会賞受賞、大学院修了時に大学院アカンサス賞受賞。
2012年、第10回ビバホールチェロコンクール第3位、第17回コンセールマロニエ21弦楽器部門第2位。2013年、第2回秋吉台音楽コンクールチェロ部門第1位。 2014年、第11回現代音楽演奏コンクール“競楽XI”第1位、第24回朝日現代音楽賞受賞。
古典作品の勉強を地道に重ねながら、現代音楽の演奏や作曲家への委嘱を積極的に行ない、チェロの可能性を探求し続けている。2015年より、20世紀以降に書かれた無伴奏チェロ曲のみを集めたリサイタルシリーズ「マインドツリー」を毎年開催。また2021年「邦人作曲家による作品集」シリーズ、2023年にはピアニスト、鳥羽亜矢子とのデュオで古典に取り組む新シリーズを、それぞれ始動した。ダンサーとの共演など、異分野との協働にも意欲的に取り組んでいる。
音川健二、藤沢俊樹、河野文昭、西谷牧人、鈴木秀美、山崎伸子の各氏に師事。
文化庁新進芸術家海外研修員として、フランクフルトにてアンサンブル・モデルンのチェロ奏者、ミヒャエル・カスパー氏のもと研鑽を積む。
藝大フィルハーモニア管弦楽団首席チェロ奏者、千葉交響楽団契約首席チェロ奏者。

——山澤さんが現代音楽や委嘱作品に取り組み続ける理由を教えてください。

山澤 20世紀以降の作品を次世代に繋げる使命感を持っているというのはもちろん嘘ではないのですが、結局のところ自分自身が楽しいから続けられているのだと思います。

僕はドイツでMichael Kasperさん(現代音楽を得意とするEnsemble Modernのチェリスト)について1年間勉強していました。そこで学んだことは、「一音一音の意味を考える」ということです。それは古典的な作品であっても、新しい作品であっても同じです。とても時間がかかるし大変なことではありますが、楽しんで取り組んでいます。

作曲家と一緒に初演に向けて作品を作り上げるというのも大切にしています。楽譜を受け取るときはとてもワクワクします。

今までに20作品ほど委嘱初演をしてきましたが、それらの作品が出版されたり、ネット上で話題になったりしています。いろいろな形で、多くの人に聴いたり弾いたりしてもらえれば、このうえない喜びです。

ファーニホウの難曲で人間の限界に挑む

——エレクトロニクスとの共演ではどのような響きになるのでしょうか。

山澤 実はチェロとエレクトロニクスでのコンサートは今回が初めてで、どんなことになるのか、僕自身も楽しみにしています。

エレクトロニクスとの絡み方はそれぞれ異なっていて、渡辺愛さんの作品ではあらかじめ作曲者によって作られた音源(足音や、みなとみらい駅のアナウンスなどが用いられている)と共演するような感じです

バレット作品では、有馬さんが即興的な要素を交えチェロの音をさまざまに加工した電子音響を演奏していきます。

北爪裕道君の新作では、「舞台上と客席とのアクロバティックなやりとり」という空間を使った音響になると聞いています。

ファーニホウの作品では、僕が演奏した音を有馬さんがその場で録音し、その音は1つのスピーカーからは9秒後に、もう1つのスピーカーからは14秒後に流れてきます。やっていることは非常にシンプルなのですが、複雑な(少し音に酔いそうな)音響になると思います。

——ファーニホウの《Time and Motion
StudyⅡ》は難曲として知られています。例えばどのような難しさ、大変さがあるのでしょうか。

山澤 間違いなくチェロ史上最大の難曲だと思います。言うなれば、世界最難関の山に挑戦するような気持ちです。

例えば、楽譜が5段譜になっている箇所があります。それぞれの段は右手、左手、右足、左足、声への指示が書かれていて、具体的には、右手は弦を擦りながら、左手は指板を叩き、右足と左足は音量ペダルを操作し、かつ複雑な発声を行なう……というような人間離れしたことをします。

人間の限界を超えたとき、僕自身、それから聴いている方たちにとってどんな体験になるのか、まだ想像もできませんが、楽しみにしています

公演情報
Just Composed 2024 in Yokohama ― 現代作曲家シリーズ ―

日時: 2024年3月2日(土) 18:00開演(17:30開場)

会場: 横浜みなとみらいホール 小ホール

出演: 山澤 慧(チェロ)、有馬純寿(エレクトロニクス)、北爪裕道(エレクトロニクス)

曲目: 渡辺 愛/unimaginary landscape(Just Composed2012委嘱作品)、リチャード・バレット/Blattwerk、北爪裕道/新作(Just Composed 2024 委嘱作品:初演)、ブライアン・ファーニホウ/ Time and Motion StudyⅡ

料金: 全席自由、一般3,000円、65歳以上・障がい者手帳をお持ちの方2,800円、学生1,500円

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