指揮者・広上淳一の総決算 日本フィルとの「オペラの旅」が《仮面舞踏会》でスタート!
日本フィルハーモニー交響楽団が2025年4月、指揮者・広上淳一との新企画「オペラの旅」をスタートします。サントリーホールの舞台空間を活かした演出や衣装等を取り入れたセミ・ステージ形式で、ソリスト陣には中村恵理をはじめ新世代の日本の歌手たちが出演。初回は広上さんがシドニーでオペラ・デビューを飾った思い出の作品、ヴェルディの《仮面舞踏会》を取り上げます。「オペラの醍醐味を気さくに、でも真摯に聴く」(広上)この注目の企画について、記者会見の模様をレポートします。
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...
日本フィルハーモニー交響楽団が「広上淳一&日本フィル オペラの旅」というオペラ・シリーズを始めるにあたり、10月24日、記者懇談会をひらいた。
第1弾は来年2025年4月26日、27日にサントリーホールで上演されるヴェルディの《仮面舞踏会》。懇談会には、このシリーズで指揮を執る広上淳一、演出を手掛ける高島勲、《仮面舞踏会》でアメーリアを歌う中村恵理とリッカルドを歌う宮里直樹、そして平井俊邦・日本フィル理事長が出席した。
日本フィルは指揮者・広上淳一を育ててくれた
広上にとって、日本フィルは、かつて正指揮者を務め、現在はフレンド・オブ・JPO(芸術顧問)のポストにある特別なオーケストラである。
広上 「私は66歳になりました。1984年、26歳でコンドラシン・コンクールに優勝したときに、審査委員長のハイティンク先生が『僕はコンセルトヘボウ管弦楽団に育てられた。君もオーケストラに育てられたことを感謝する日が来るだろう』とおっしゃっていました。
1989年の日本デビュー公演で指揮したのが日本フィルでした。以来36年間、毎年呼んでいただいています。日本フィルは指揮者・広上淳一を育ててくれたオーケストラ。心の底から感謝しています」
Junichi Hirokami, Conductor
東京生まれ。尾高惇忠にピアノと作曲を師事、音楽、音楽をすることを学ぶ。東京音楽大学指揮科卒業。26 歳で第1回キリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクールに優勝。以来、フランス国立管、ベルリン放響、コンセルトヘボウ管、モントリオール響、イスラエル・フィル、ロンドン響、ウィーン響などメジャー・オーケストラへの客演を展開。これまでノールショピング響、リンブルク響、ロイヤル・リヴァプール・フィル、コロンバス響のポストを歴任。近年では、ヴァンクーヴァー響、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ミラノ・ヴェルディ響、サンクトペテルブルク・フィル、バルセロナ響、モンテカルロ・フィル等へ客演。国内では全国各地のオーケストラはもとより、サイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管にもたびたび招かれ絶賛を博している。オペラの分野でもシドニー歌劇場へのデビュー以来、数々のプロダクションを指揮。2008 年京都市交響楽団常任指揮者を経て14 年4 月より常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー、常任指揮者として13 シーズン目の20 年4 月より22 年3 月まで京都市交響楽団第13 代常任指揮者兼芸術顧問を務めた。15 年には同団とともにサントリー音楽賞を受賞。現在はオーケストラ・アンサンブル金沢アーティスティック・リーダー、日本フィルハーモニー交響楽団 フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)、札幌交響楽団友情指揮者、京都市交響楽団 広上淳一。2025年からマレーシア・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督に就任。また、東京音楽大学指揮科教授として教育活動にも情熱を注いでいる。
響きのよいホールでオーケストラと歌手の祭典を堪能してほしい
広上 「そこで、指揮者としての最後の時間で、この楽団に恩返しをしたいと思い、このシリーズを始めることにしました。また、若い人たちや日本を代表する歌手たちとコラボレーションして、響きのよいホールでオペラができないかと、高島勲先生と10年くらい温めてきました。
サントリーホールは、オペラハウスではありませんが、小道具や衣裳、演技が入りますので、想像力を働かせて、オペラを気軽に楽しんでいただきたい、優れたオーケストラと素晴らしい歌手の声との祭典を堪能していただきたいと思います。
《仮面舞踏会》は、1989年、シドニー・オペラハウスで私がオペラ・デビューした思い出の作品です。最後にもう一度、日本フィルときっちりとやりたいと思い、第1弾として取り上げることにしました。すべての歌手のアリアが充実している傑作です」
《仮面舞踏会》のテーマは“赦しの世界”
演出の高島勲は今回の《仮面舞踏会》について次のように語った。「《仮面舞踏会》でヴェルディが追求したかったのは、最後にリッカルドが犯人たちを赦す“赦しの世界”であり、それが作品のテーマかなと思います。
また、主役二人の恋愛の部分も感じ取っていただけるようにしたい。桜井久美さんと衣裳の可能性も探り、振付には広崎うらんさんに参加してもらいます」
中村恵理は、「日本フィルとは『第九』で共演していますが、オペラでは初共演で、このシリーズの第1弾のヒロインに呼んでいただけたのは光栄です」と述べ、宮里直樹は「昨年の宮崎国際音楽祭でリッカルドを広上先生の指揮で歌いましたが、大変な役だと思いました。日本フィルとの共演は身の引き締まる思いです。第2弾につなげられるように、一生懸命がんばります」と語った。
*
1958年のドビュッシー《ペレアスとメリザンド》日本初演をはじめとする日本フィルのオペラ演奏の歴史に新たに加わるオペラ・シリーズ「広上淳一&日本フィル オペラの旅」。期待せずにはいられない。
舞台は17世紀、英国植民地時代のボストン。
ボストン総督リッカルドと、リッカルドの腹心の部下・レナートの妻アメーリアは、互いに秘めた想いを抱いている。
ある日、リッカルドは身分を隠して占い師ウルリカのもとを訪れると、そこへアメーリアが現れ、自分への恋心に苦しんでいることを知る。
ウルリカはリッカルドを占い「これから最初に握手する者によって殺される」と告げる。
そこへ何も知らずにレナートがリッカルドと握手をし…
ついに愛を打ち明け合ったリッカルドとアメーリアの逢引を知ったレナートは怒りに震え、リッカルドに対する反逆者の計画に加担してしまう。
運命の時は、華やかな仮面舞踏会の舞台が選ばれた。
レナートの復讐は果たされるのか、そしてその時リッカルドは…
セミ・ステージ形式/全3幕/字幕つき
日時:2025年4月26日(土)27日(日)17:00開演
会場:サントリーホール
出演
指揮:広上淳一 [フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)]
演出:高島勲
アメーリア:中村恵理
リッカルド:宮里直樹
レナート:池内響
ウルリカ:福原寿美枝
オスカル:盛田麻央
シルヴァーノ:高橋宏典
サムエル:田中大揮
トム:杉尾真吾
合唱:東京音楽大学
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
振付:広崎うらん
衣裳:桜井久美(アトリエヒノデ)
照明:岩品武顕
舞台監督:幸泉浩司
副指揮:喜古恵理香、荒木流音生
料金
SS ¥12,000 S¥9,500 A¥8,000 B¥6,500 C¥5,000 D¥3,000 ※一部見切れあり/電話のみ
Ys(25歳以下)¥4,000*
Gs(70歳以上)¥5,000*
*SS,S,D除く
問合せ:日本フィル・サービスセンター 03-5378-5911(平日10:00~17:00)
■ヴェルディ『仮面舞踏会』レクチャー「ドラマの史実とその音楽」
日時:2月25日(火)17時
会場:東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス C301教室
講師:
広上淳一(指揮者/東京音楽大学教授)
高島勲(演出家/東京音楽大学特別招聘講師)
本間晴樹(東京音楽大学名誉教授)
問合せ:東京音楽大学指揮研究室 conducting@tokyo-ondai.ac.jp
※参加費無料。申し込み方法は、後日ホームページで告知
日時:3月26日(水)19時
会場:朝日カルチャーセンター新宿教室(教室・オンライン自由講座)
講師:広上淳一/加藤浩子
特集Ⅱ オーケストラの歩きかた
国内オーケストラの2025-26年の聴きどころを一挙紹介。マエストロへのインタヴューや記者会見のレポートなどを通して、各楽団の個性、こだわりのプログラミングをひもときます。
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