インタビュー
2024.03.31
世界のオーケストラ楽屋通信 Vol.6 宮﨑千佳(台湾NSO国家交響楽団フルート副首席奏者)

台湾で豊富な演奏活動を展開するフレンドリーで温かいオーケストラ

世界各国のオーケストラで活躍する日本人奏者へのインタビュー連載。オーケストラの内側から、さまざまな国の文化をのぞいてみましょう!
第6回は、台湾NSO国家交響楽団フルート副首席奏者の宮﨑千佳さん。野外演奏に気温制限がある、敬語がない、お弁当は温かい……数々の台湾エピソードが飛び出しました!

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

オープンに音楽作りをする温かい雰囲気のオーケストラ

続きを読む

——所属されているオーケストラについて教えてください。

宮﨑 台湾NSO国家交響楽団は、台北の国家音楽庁を本拠地とし、台湾各地やアジア、アメリカ、ヨーロッパなど国際的に演奏活動をしているオーケストラです。 

団員の80%が台湾人ですが、外国人団員にも馴染みやすいフレンドリーな雰囲気で、現在は準メルクル氏が音楽監督を務めており、指揮者とメンバー同士がオープンに音楽作りをしようという彼の考えから、さらに積極的な雰囲気になりました。 

宮﨑千佳(みやざき・ちか)
東京音楽大学大学院修了、卒業後同大学フルート科助手を務めた。フルート コンベンションコンクール、びわ湖国際フルートコンクールなどで、入賞。 2006年より台湾NSO国家交響楽団に入団し、台湾に移住。台湾各地のみならず、アジア、ヨーロッパ、アメリカとオーケストラに伴い演奏活動をしている。 
国立台湾芸術大学音楽科、台湾実践大学音楽科講師。またピッコロ特別マスタークラス講師として複数の大学から招聘されている。2011年よりアジアフルート連盟に参加し、アジア各国での演奏と相互のフルート奏者、音楽の交流も進めている。
木管五重奏 "Ensemble Opus 5.0" メンバー。

——なぜこのオーケストラに入ろうと思ったのですか?

宮﨑 特別に台湾を選んだわけではなく、オーケストラ奏者の目標に向かって挑戦していたなか、PMF音楽祭で知り合ったフルート奏者からオーディション情報をいただき、縁あって台湾へ渡ることになりました。豊富な活動内容、指揮者やソリスト、団員の高い音楽水準、そして温かい団員たちの雰囲気のオーケストラに出会うことができとても幸運だと思います。

——楽団員とのコミュニケーションは何語でされていますか?

宮﨑 主に中国語、次に英語です。 日本好きな台湾人も多いので日本語の挨拶もよくします。

台湾の方たちはフレンドリーでお世話好きで公私共に助けてくれる

——お国柄を感じたエピソードや日本とは違うなぁと感じる点を教えてください。

宮﨑 南国の台湾、夏場は暑いのでオーケストラの野外演奏は気温32度までという規則があります。1年の半分くらいは日中の野外でのリハーサル、演奏会ができないことになりますが、楽器のためにもよい制度だと思います。

台湾のお弁当は必ず温かいものというのも日本とは違いますが、やはり温かいほうが美味しいので嬉しいです。不規則な時間に合わせてお弁当を用意してくれるスタッフに感謝の限りです。

——これまでに一番カルチャーショックだったことはなんですか?

宮﨑 年齢や立場に関係なくお互いにフレンドリーに名前を呼んだり、気軽な挨拶をすることです。礼儀や習慣は日本に似ているものの、言葉にはあまり敬語がなく、また敬語を使うことは距離を感じさせるため、団員がコンサートマスターの方へする挨拶も「バイバーイ」と気軽で、逆に自分より若い世代から友達のように話しかけられたりします。尊敬とは心でするもので、どういう言葉で接するかはまた違うのだと学びました。

——「この国に来てよかった!」と感じるのはどんなときですか?

宮﨑 台湾の方々はフレンドリーでお世話好きなので、仕事でも生活でも問題が起きても必ずと言ってもいいほど誰かが助けてくださり、安心して暮らすことができるのが1番ありがたいです。海外で暮らしている割には消極的なほうなので、どんどん話しかけてくれる台湾の方々のおかげでいろいろな交流ができていると思います。 

——今のオーケストラで一番思い出に残っている演奏会や曲目を教えてください。

宮﨑 ラフマニノフの「交響曲第2番」です。比較的よく演奏する曲目ですが、一度指揮者が団員の心をうまく掴んだときに感じた弦楽器の波のような音楽のうねりが素晴らしく、それに管打楽器が船のように揺られながら重なり、オーケストラ全体がひとつの風景のようになったのが忘れられません。

——おすすめのローカルフードを教えてください。

宮﨑 美味しいものが尽きない台湾ですが、あちこちにある小さいお店の乾麺や炸醬(ジャージャー)麺が好きです。有名店もありますが、たくさんのお客さんで賑わっているところはどこも美味しいので探してみてください。

炸醬麺
ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ